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俺が強すぎて人生ハードモード  作者: 雨宮悠理
Phase3 動乱の学園
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交錯する影

「ミホ、大丈夫?」


 サクラがしゃがみ込み、ミホの腕をそっと支える。


「……うん。ありがとう、サクラちゃん……」


 ミホは力なく微笑んだが、その目には恐怖の残滓が揺れている。隣で石田リョウタも安堵の息を吐いた。


「助かった……ほんとに……」


 先ほどまで彼らを拘束していた敵――リディアとラヴィニアは、どちらも戦闘不能。荒れ果てた教室に沈黙が戻っていた。サクラは、リディアが倒れている姿を一瞥する。


 彼女は、ただの敵だった。


 それ以上でも以下でもないはずなのに――。


(……あんな表情カオ、するんだ)


 サクラの脳裏には、リディアが“岐路”に囚われた際の、一瞬見せた少女のような悲痛な顔が焼き付いていた。


 だが、今は感傷に浸っている時間はない。


「みんな、無事でよかった」


 ルナが控えめに微笑む。その顔にも疲労がにじんでいる。


「じゃあ、ここからどうする?」


 キョウゴが拳を握り直しながら問いかける。カイが辺りを見回し、ふと顔を上げた。


「……ところでさ、マヒロはどうするよ?」


 全員の視線が揃う。


「とにかく、一度戻ろう」


 サクラの提案に、全員が頷いた。


 彼らは慎重に進みながら、途中で戦闘で荒れた廊下を横目に通り過ぎ、マヒロが横たわっていたはずの場所に向かった。


 だが――。


「……いない」


そこに、淡海マヒロの姿はなかった。冷や汗が、誰しもの背筋を伝う。


「おい、本当にここにいたのかよ……」


 キョウゴが苛立たしげに周囲を見渡す。


 カイも呼びかける。


「マヒロ!どこだ!」


 返事はない。


 代わりに、ひどく嫌な静寂が場を支配していた。


「……淡海さん……」


 ルナが心配そうに名を呟く。


 その瞬間――。


 バキィン!!


 遠くでガラスの割れる音が響いた。


◇◆◇◆◇


 その頃――。

 

 床に叩きつけられた衝撃で、肺の奥から鈍い息が漏れた。脇腹に鈍い痛みを抱えながら、マヒロはゆっくりと顔を上げる。


(ここは……?)


 視界がぼやけている。四方は暗く、現実感が薄い。


――意識の底に沈められたような空間。


 周囲を見渡しても、自分以外の人間は見当たらない。


 いや――一人。


 すぐ正面、ただ一人。


「目が覚めたか」


 低く、冷徹な声。


 視線を合わせた瞬間、マヒロは本能的に悟った。


(……やべえ。こいつ、強い)


 男は端正な顔立ちをしていた。


 無駄なく整えられた髪、きっちりと着込んだシャツにジャケット。どこかのエリート社員と言われても違和感はない。だが、その整った外見以上に、異質なのは――その空気。


 隙が一切ない。


 武器を持たずとも、彼自身が“武器”であると告げているようだった。


「誰だ……?」


 マヒロは警戒しながら問う。


 男は微かに目を細めた。


「アレクだ」


 シンプルな名乗り。


 それ以上でも、それ以下でもない。


「……お前もタイタニアか」


「そういうことだ」


「お前も、あのイザヤの仲間か?」


「さて」


 はぐらかすような言い方。マヒロは無意識に拳を握りしめていた。こんなにも静かなのに、殺気が全身に刺さってくる。


「何が目的だ」


 マヒロが絞り出すように問うと、アレクは微かに笑った。


「我々の目的か」


「……ああ」


「――いいだろう。多少の問答には応えてやる。お前たちの仲間だ。芹沢サクラ、と言ったか」


「サクラ……?」


 突然出てきた名前に、マヒロは思わず聞き返した。


「彼女には、特別な価値がある」


「……どういうことだ?」


「お前は知らないか」


 アレクは少し意外そうに眉を上げた。


「まぁいい。我々はあの力を手に入れる。お前たちはただの障害だ」


「ふざけんなよ」


 マヒロはアレクを睨みつける。


「サクラをどうするつもりだ」


「そこまで答える義務はない」


 アレクは冷たく突き放す。


「だが――一つ忠告しておく」


 静かに、だが突き刺さるような声。


「“力”を持つ者は、いずれ選ばされる。守るべきものと、切り捨てるもの。お前も、いずれその時が来る」


「……っ!」


「その時、お前はどうする」


 アレクの言葉が、胸に突き刺さる。


 ――マヒロは、かつて矢口を骨折させた時のことを思い出していた。


 力があるからこそ、守れるものがある。


 けれど、力があるからこそ――壊してしまうものもある。


「……そんなもん、まだ分かんねぇよ」


「そうか」


 アレクは一歩、マヒロに近づいた。


「なら、いずれ知る時が来る。これはお前への“試金石”だ」


「試金石?」


「お前が“それ”に足る器か――確かめさせてもらう」


 言い終えた瞬間。


 ズズズッ……


 マヒロの足元に黒い靄が広がった。


「っ!」


 マヒロは空間掌握ドミナス・スぺイシウムを発動しようとしたが――。


「無駄だ」


 アレクが一言告げる。


 その瞬間、靄がマヒロを包み込む。


 体が沈む感覚――。


「――次に会う時が、本番だ」


 最後に聞こえたアレクの声は、氷のように冷たかった。

みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!


こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!

この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!


ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。


そして最後に……

いいねやコメント、本当に励みになります!

いただけると「次の更新もがんばるぞー!」ってやる気がグンとアップします。どんな感想でもいいので、気軽にひとことでも残してもらえると嬉しいです!


それでは、今日も物語の世界へどうぞ!

お楽しみいただけますように!

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