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俺が強すぎて人生ハードモード  作者: 雨宮悠理
Phase3 動乱の学園
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理知なる冷酷

 これはキョウゴとカイがラヴィニアと対峙する少し前の時点に遡る。


  コツ、コツ、コツ……


 静寂の中、ヒールの音が規則正しく鳴り響く。


  黒縁の眼鏡をかけた長身の女性が、ゆったりと歩みを進めていた。その背筋はピンと伸び、表情には一切の迷いがない。


 その立ち居振る舞いは、まるで“全てを掌握している”かのような余裕すら感じさせた。


「……さて」


 女性は艶めくショートの黒髪をさらりと耳にかける。


「あなたたちには、少し “お休み” して頂きます」


 冷たい声が空気を裂く。


「……言い方が優雅すぎない? 私たちを抑える気満々じゃん」


 サクラが薄く笑いながら前に出る。一見、軽い態度に見えるが、いつでも動けるように身構えているのがわかる。


「ええ、当然です」


 女性はさらりと肯定した。


「あなた方は “観測対象” ですから。私が敗けるわけがありません」


 その言葉に、ルナの表情が僅かに曇る。


「……観測対象?」


「つまり私たちは実験材料扱いってこと?」


 サクラが問いかけると、女性は 無表情のまま 頷く。


「それがあなた方にとって最善の理解なら、それで結構」


 淡々とした声音だった。


「それにしても……」


 サクラは腕を組み、女性をじっと見つめる。


「なんでこんな大掛かりなことしてるわけ?」


 女性は一瞬だけ沈黙したが、やがて静かに口を開いた。


「少し問答に付き合うのもいいでしょう。私達の目的は “修正” です」


「修正?」


 サクラが訝しげに眉を寄せると、女性は僅かに眼鏡を押し上げた。


「あなた方は気づいていないようですが……この世界は“誤った形”で成り立っているのです」


「誤った形?」


 今度はルナが静かに問い返す。


 女性はゆっくりと視線を二人に向けた。


「……あなた方タイタニアが “タイタニアたりえるキッカケ”。それを “在るべき形” に修正しなければなりません」


 静かに告げられた言葉。


 サクラの口角が少しだけ持ち上がる。


「随分と大層なこと言うじゃん。で、それのために善良な市民たりえる“私たち”をどうするつもり?」


「言ったはずです」


 女性は冷たく言い放つ。


「あなた方には暫しの間、“お休み” して頂きます」


「……ふぅん」


 サクラは肩を竦めながら、僅かに戦闘態勢に入る。


「まあ、とにかくさ。ここでのんびり話してても埒が明かないよね」


「……サクラさん、気をつけて」


 ルナが静かに言う。


 サクラがちらりと横目でルナを見ると、彼女は真剣な表情で知的な女性を見つめていた。


「この人……只者じゃない」


 その言葉に、サクラも一瞬だけ表情を引き締める。


「まあね、こんなヤバそうな相手、久々に見たかも」


 サクラは肩を竦めたが、内心では警戒していた。目の前の女性は、 まるで “この戦いの結末が決まっている” かのように、余裕を崩さない。


「名乗る気は?」


 サクラが問いかけると、女性はふっと片手を持ち上げた。


「……名乗る必要がありますか?」


「まあ、どうせ倒すしね。」


 サクラがニヤリと笑う。


「では、始めましょうか。」


  次の瞬間── “世界が歪んだ”。


「っ……!? なにこれ……!?」


 サクラが咄嗟に身構え、ルナもすぐさま戦闘態勢に入る。目の前の空間が、まるでガラスを通して見た風景のように “揺らいで” いた。いや、揺らいでいるだけではない。


「……視界が、ブレる?」


 ルナが戸惑いながら呟く。


 まるで光の屈折がおかしくなったように、床も天井も左右の壁も グニャリ と歪み、位置感覚が狂っている。


「……どういうこと?」


 サクラは目を細めながら、女性を睨んだ。


「『光を操る能力』……?」


 彼女は静かに否定する。


「違います」


「っ!」


 その声が響いた瞬間──


──サクラの背後から “自分” が現れた。


「え?」


 サクラが驚いて振り向くと、そこには “もう一人の自分” が立っていた。まるで鏡のように、サクラと同じ姿、同じ表情、同じ動きをしている。


「……なにこれ、気持ち悪っ」


 サクラは思わず顔をしかめたが、すぐに何かに気付く。この “もう一人の自分”── 若干、動きがズレている。


「……時差がある?」


「正解です。」


 女性は淡々と頷くと、まるで授業を進める教師のように語る。


「これは “認識のズレ” です。」


「認識の……ズレ?」


 ルナが怪訝そうに聞き返した。


「私の能力タイタンはフラクタル・ワールド──。あなたたちの “認識” は次第に歪んでいくでしょう」


 彼女の足元から、淡い光が広がる。


「例えば──」


 彼女が指を鳴らすと、サクラとルナの間に “壁” が現れた。


「っ!? ちょ、ちょっと待って!?」


 サクラが慌てて壁に触れようとするが──


──何もない。


「……え?」


 サクラの手は、何もない空間をすり抜けた。


「サクラさん、一体何を……?」


 だが、ルナには何も見えていない。


「これは……?」


「片方の視界では “そこにはない” 。」


 女性は平然と告げる。


「しかし、貴方の視界では “そこにある” 。」


 サクラとルナは顔を見合わせた。


「つまり──」


 女性は静かに眼鏡を押し上げる。


「この戦いでは “何が真実か” は、誰にも分かりません。」


「……!」


「攻撃しようにも “そこにいる” とは限らない。」


「避けようにも “そこにいない” とは限らない。」


「あなた方は “真実と虚構が混ざり合った世界” で戦うことになるのです。」


 ──すなわち “認識を操る能力” 。


「これは “情報戦” です。」


「……なるほどね。」


 サクラが静かに息を吐き、ニヤリと笑う。


「面白いじゃん。」


「だったら私たち、お互いの感じたことを相互に信じるしかないね。」


 その言葉に、ルナは静かに頷いた。


「……ええ。」


 ──サクラとルナはお互いを見合うと、共通の敵を見据えた。

みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!


こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!

この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!


ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。


そして最後に……

いいねやコメント、本当に励みになります!

いただけると「次の更新もがんばるぞー!」ってやる気がグンとアップします。どんな感想でもいいので、気軽にひとことでも残してもらえると嬉しいです!


それでは、今日も物語の世界へどうぞ!

お楽しみいただけますように!

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