霧に包まれた声
霧が渦巻く異様な空間。マヒロの目の前には、クラスメイトの片上ユリカを含む、数人の生徒たちの姿があった。
「これ、夢……? じゃないよね……?」
別クラスの生徒らしい男子が震える声で呟く。生徒たちは一様に顔を青ざめ、混乱した様子で周囲を見渡していた。
ぐるぐると辺りを包み込む霧は、まるで生きているかのようにグネグネと形を変えながら周りを回っていた。
「あー、くそ気持ち悪い!俺は出ていく!」
叫びながら男子生徒の1人が霧の中に突っ込んでいく。だが、次の瞬間にその男子生徒は反対側の霧から飛び出してきた。
「あれ?俺、出て行ったはずじゃ……」
「これどうなってんのよ!なんなのよ!……意味わかんないよ!」
特に気の強そうな女子生徒がパニックを起こしそうになり、頭を抱えながら動揺している。
「ど、どうしてこんな……」
ユリカもまた、不安そうにメガネを指先で押し上げながら周りを見回していたが、その動きが一瞬止まった。
「淡海君……」
視線を向ける先には、自分を見つめるマヒロの姿があった。
「あの……私……」
何かを言おうとして俯くユリカ。その頬がわずかに赤らんだ。
――直前の出来事が、断片的に彼女の脳裏に蘇る。
ユリカにはここ数時間の記憶が無かった。ただ、気が付いた時にはマヒロに抱き抱えられていた。その温もりと力強さだけが、妙に鮮明に残っていた。
「おい、落ち着けよ」
マヒロは慌てふためく生徒らを見ながら淡々とした声で言う。
「片上、大丈夫か?もう意識はしっかりしているのか?」
その視線が妙に優しく感じられたせいで、ユリカは慌てて首を横に振る。
「あ……ごめん、大丈夫。平気だから」
そう言いながら、彼女はぎこちなく笑った。しかしその笑顔もすぐに引きつり、隣にいる別クラスの生徒に掴まるようにして小さく震えている。
「お前さ、淡海……、だよな?」
別の男子生徒がマヒロを見て、気まずそうな顔をしながら声をかけてきた。
「お前って、なんかヤバい噂あったよな……お前なんかと一緒にいるのもヤバいんじゃねえのか……」
その言葉を聞いて、マヒロは鋭い目を向けた。
「……そう思うんなら無視しておけばいいだろ」
低い声でそう答えると、男子生徒はびくりと肩を震わせ、一歩後ずさった。
「ご、ごめん……別に責めてるわけじゃ……」
周囲の生徒たちが互いに不安げな視線を送り合いながらも、どこかマヒロに対して警戒しているのが伝わる。その中でユリカだけが、彼に向ける目に微かな信頼を宿していた。
そんな張り詰めた空気を裂くように、けたたましい音が響き渡った。
「よう、どうだい。居心地のいいヘヴンだろ?」
霧の向こうから現れたのは、拡声器を持った柄シャツの男――。
「お前がやったのか……!」
マヒロが睨みつけると、男はわざとらしく肩をすくめて笑う。
「あー、俺の名前、イザヤってんだよ。で、やったのが俺だって言ったら、どうする? ここで大暴れして、この子たちを守る? それとも、君だけ逃げるかい?」
「……っ」
イザヤの挑発にマヒロは拳を握りしめた。
「ふざけるな。お前の目的は力を持つ俺らだろ!無関係な奴らまで巻き込んでんじゃねえよ!」
その声に、イザヤは大袈裟に顔をしかめる。
「無関係な奴らねえ……お前、タイタニアがどれだけ迷惑な存在か分かってないのか?」
「何言ってんだ……」
「まあ、いいさ。それが分かるように、ここでたっぷり教えてやるよ」
イザヤは拡声器を鳴らし、霧がさらに濃くなっていく。その中でマヒロは、不安げな生徒たちを振り返った。
「お前ら無事に帰りたければ、誰も動くな。俺がこいつをどうにかする」
短く告げたその言葉に、生徒たちはしがみつくように頷いた。ユリカはそんなマヒロを見つめていた――。
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




