問われる力、まみえる月
七神のオフィス。静かな空間の中、マヒロとサクラの前にスーツ姿の七神が現れた。その隣には、白衣を纏ったレイアが無表情に立っている。
「マヒロ君とサクラちゃん、ご無沙汰だね。今日は一体何の相談かな?」
七神は柔らかな微笑みを浮かべ、軽い調子で問いかけた。
マヒロはわずかにためらった後、事情を話し始めた。同級生の藤沢カイが他人の悪意により故意に怪我を負わされ、もう元通りには戻れない可能性が高いこと。そんな彼を救うために、レイアの治癒能力に頼りたいということ――。
「なるほどね……」
七神は一通り話を聞いた後、椅子に深く腰掛け、しばらく黙り込んだ。隣のレイアは何も言わずにマヒロを見つめている。
「正直に言おう」
沈黙を破るように、七神が口を開いた。
「その話、聞いていて気持ちはわかる。藤沢君の苦しみや、キミたちの善意には敬意を払うよ。ただ……力を貸すわけにはいかない」
その言葉に、マヒロは瞬時に眉間にシワを寄せた。
「……どういうことだよ」
「タイタンの力は、普通の医療とは違う。それはおそらくキミたちも理解しているだろう? 一般の人間に行使するのは、非常に危険なんだ」
「危険って……レイアの力なら治せるんだろ?」
「治せる可能性はある。ただ、同時に大きなリスクが伴う。タイタンの力は万能じゃないし、時に副作用や別の問題を引き起こすこともある」
七神の言葉は冷静で、しかしどこか冷たさも感じられた。
「それに、国の人間としての立場もある。キミたちはまだ若いからわからないだろうけど……我々が特定の個人にだけ力を使うのは、公平性に欠けるんだよ」
「公平性って……そんなの、どうでもいいだろ!」
マヒロは声を荒げた。
「目の前に困ってる人間がいて、助けられる力があるのに、それを使わないって……それが正しいことなのかよ!」
その言葉に、七神は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに穏やかな笑みを取り戻した。
「マヒロ君、その気持ちは素晴らしいよ。でも、タイタンの力を使うことは単純じゃないんだ。もし1人を助けたとして、その陰で助けられなかった他の何十人、何百人をどうする?」
マヒロは返す言葉を失い、ぐっと拳を握り締めた。七神の言葉が理屈として正しいことは理解できる。だが、それでも納得できない自分がいる。
(……結局、俺も同じなんだよな)
ふと、これまでの自分の行いが脳裏をよぎった。自分には昔から大きな力があることは分かっていた。けれど自分はその事実に蓋をし、本来自分であれば助けられるようなことであっても平穏のため、見て見ぬ振りをしてきた。
(俺も……助けなかった側だ)
マヒロは唇を噛み締め、視線を落とした。
七神とレイアに礼を言い、サクラと共に施設を後にした。街はすっかり夕闇に包まれ、街灯が点き始めている。二人は無言のまま、少し足早に歩いていた。
「……淡海君、大丈夫?」
サクラが心配そうに声をかけるが、マヒロは首を振るだけだった。
しばらく歩き、サクラと別れて自宅の近くまで来た時だった。
「……なんだ?」
マヒロの目に飛び込んできたのは、停車している一台の黒い車だった。威圧感のある外装で、見慣れないナンバープレート。車内に人影はなく、不自然に佇んでいる。
(こんなところで……誰の車だ?)
嫌な予感が胸をよぎったその時、ふと車の近くに人影が見えた。
「……?」
振り返ったその人物は、マヒロの通う高校の制服を着ていた。そして、月の形をした髪飾りが、夜の街灯に照らされて微かに光っていた。
「……ルナ?」
思わず呟いたマヒロの声に、彼女――月瀬ルナがゆっくりと振り返る。
「淡海さん……」
彼女の冷静な声が夜の静けさに響いた。
■月瀬ルナ(00003)
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




