休日と真実
休日の練習。青空の下、照りつける日光がコートを照らし、バスケットボールが地面を叩く音が響いていた。マヒロは真剣な表情でドリブルをしながら、パスの練習をしている。
あれから1週間、毎日のように続いた練習で、マヒロは徐々にチームプレイや動き方を覚え、バスケにも慣れてきていた。
「よし、淡海!動き、だいぶ良くなったじゃん!」
練習が終わり、3年生のキャプテンが笑顔で声をかけてくる。
「まあ、なんとか形にはなってきた感じっすね」
マヒロは近くのベンチに腰掛け、タオルで額の汗を拭いながら息をついた。練習はハードで身体は疲れ切っている。それでも自分がやらなければと感じている責任感が、不思議とマヒロを動かしていた。
「淡海君、はいこれ」
突然、冷たい飲み物を手渡される。顔を上げると、そこにはたまに練習を手伝いに来てくれている同級生の女子が立っていた。彼女は乃ヶ峰リノ。正確にはマネージャーではないのだが、休日練習の時など、彼女が空いているタイミングで色々とサポートしてくれているらしかった。肩までの髪をヘアピンで留め、控えめな笑顔を浮かべている。
「あ、どうも……」
マヒロは受け取ったペットボトルを見て少しだけ戸惑いながら礼を言った。
「大変だよね、急にバスケの公式大会に出るなんて。それもカイの代役で。でも……すごく頑張ってると思う」
乃ヶ峰は控えめながらも、真剣な眼差しでマヒロを見つめていた。
「……まあ、練習は嫌いじゃないっすけど」
そう答えながら、乃ヶ峰の視線がどこか遠くを見ていることに気づく。
「……ありがとね」
「あのさ。勘違いだったら申し訳ないんだけど、藤沢の怪我のこと何か知ってんの?」
乃ヶ峰が憂いを帯びた視線で藤沢を見ていることに気づいたマヒロはとりあえず訊ねてみた。結局ケガの詳細を藤沢から聞けていない。もしかすると彼女は何か知っているんじゃないかと直感で感じた。乃ヶ峰は少し躊躇いがちに口を開く。
「……実はカイ、怪我の原因はただ練習で失敗したから、ではないの」
その言葉に、マヒロは飲み物を持つ手を止めた。
「所属しているクラブチームの練習中に、大学生の先輩に無理やり怪我をさせられたの……。元々カイのポテンシャルを妬んでたみたいで……」
彼女の声は震えていた。
「けど、一番悔しいのはカイ自身だよ。あいつ、3年生の先輩たちと全国行きたいってずっと言ってたのに……」
その言葉に、マヒロの胸がざわついた。
「それで……藤沢の怪我の状態は?」
「……おそらく、もう今までみたいには動けないだろうって。医者からも、今までのようにプレイすることはできないかもしれないって言われて……」
乃ヶ峰の声がかすれ、マヒロは思わず言葉を失った。
◇◆◇◆◇
マヒロはコートの外に出て、ひとりで深い溜め息をついた。
(……俺が出て、本当に藤沢を助けることになるのか?)
これまで渋々引き受けてきたが、今さら自分が試合に出たところで、藤沢カイを救えるわけではないと思えてくる。
(あいつのバスケ人生はもう……)
その時、ふと七神の言葉が脳裏に蘇った。
「レイアのタイタン能力か……あれが治癒能力なら……」
マヒロは無意識にポケットからスマートフォンを取り出していた。
電話が繋がると、少し間を置いて、サクラの声が聞こえた。
「もしもーし、淡海君? どしたの?」
「いや……ちょっと頼みがある」
マヒロが事情を説明すると、サクラは珍しく真剣な声で言った。
「……藤沢君、そんなことになってたんだ。淡海君、力を貸したいんだね?」
「……別にそういうわけじゃねえけど。まあ……タイタンがどうにかしてくれるなら、それが一番いいと思ってな」
「……淡海君」
「なんだよ」
「私……本当にタイタンの力を使っていいのか、わからない」
その言葉に、マヒロは思わず電話を持つ手を強く握りしめた。
「タイタンの力はね、そもそも普通の人間が扱えるものじゃない……。私たちが簡単に無関係の人のために使っていいものじゃないと思うの」
サクラの声はわずかに震えていた。
「でも、それを使うことで誰かが救われるなら、それは間違いじゃないんじゃねえのか?」
マヒロの低い声に、サクラはハッと息を呑んだ。
「俺は別にタイタンの力が何なのか、よくわかってねえ。でも……藤沢が悔しがってんのを見て見ぬフリするのは、なんか嫌なんだよ」
短い沈黙が流れる。電話越しに感じるのは、サクラの葛藤だった。
「……淡海君、わかった」
サクラの声が再び聞こえた時、それはどこか覚悟を決めたような響きだった。
「でも、これだけは聞かせて。藤沢君を助けることが、淡海君自身のためにもなるって、ちゃんと信じられる?」
「……俺がどうとかは関係ねえ。ただ……助けたいだけだ」
サクラはその言葉に少し息を吐いた。
「わかった。私も協力するよ。でもタイタンの力を使えるかどうかってことは保証できないけど。私も一緒に七神さんに掛け合ってみる」
サクラの真剣な言葉に、マヒロは少しだけ視線を落とした。
「……すまねえ、サクラ」
普段は素直に謝ることのないマヒロが、自分の口から出た言葉に驚いていた。そして電話の向こうで、サクラは驚きのあまり小さく笑った。
「ふふっ……淡海君、今謝った?」
「うるさいわ」
「うん。明日一緒に七神さんに掛け合ってみよう」
サクラの言葉に、マヒロは小さく頷いた。
「……頼む」
電話を切った後、マヒロは静かに空を見上げた。
(……あのスーツ野郎が動いてくれるといいけどな)
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
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