不本意な救世主
「頼む!俺の代わりに試合に出てくれ!」
淡海マヒロは思わず固まった。
目の前で深々と頭を下げるのは、他クラスの男子――藤沢カイ。名前だけは聞いたことがある。確か学生にして起業所属のチームで社会人バスケリーグにも出場している選手で、学校内でもちょっとした有名人だ。部活にも入っていたのか。
「……ん?代わりに出ろって、どういうこと?」
マヒロが怪訝そうに眉を寄せると、藤沢は少しだけ視線を落とした。
「……実は、ちょっと練習で怪我をしてさ。足をやっちまったんだ」
「まあ事情はわかるけど。それは自己責任じゃないのか?」
マヒロが呆れたように返すと、藤沢は苦笑いして首を振る。
「悪い。でも、本当に動けないんだ。医者からは『安静にしろ』って言われてる。無理すればもっと悪化する」
「それなら休んでおけよ。次に出りゃいいだろ」
冷たく突き放すマヒロに、藤沢は強い目で言い返した。
「それが次なんてないんだよ。この試合は3年生最後の県大会だ。勝ち抜けば全国だって見えてくる。でも、ここで負けたら終わりだ」
「……最後の大会な」
藤沢はうなずき、拳をぎゅっと握りしめた。
「俺たちのチームはそんなに強くない。でも、ここまで勝ち進んだのは3年生たちの努力のおかげだ。だからこそ、俺は――このチームで、あの人たちを勝たせてやりたいんだ」
その言葉に、マヒロは少しだけ沈黙した。藤沢の真剣な表情には迷いが一切ない。
「それで、何で俺に頼むんだよ。他に適任のやつはたくさんいるだろ?」
「……正直、目ぼしい奴は何人かいたんだが、全員他の部に入ってる。ウチの学校は他の部と兼任で試合に出ることは認められない。そんな時に芹沢さんが教えてくれたんだ」
藤沢はちらっと隣のサクラを見た。
「淡海は全然知られていないけど、実は運動神経がものすごいって」
「お前……余計なことばっか言うな」
「てへぺろ」
マヒロがサクラを睨むが、彼女は舌をぺろりと出して全く悪びれていない。
「だって本当じゃん!淡海君なら絶対いけるって!」
「根拠のない自信やめろ……」
マヒロは頭を抱えた。
だが、真剣に頭を下げ続ける藤沢を見ていると、断りづらい空気が漂ってくる。
「なんかさ」
藤沢がふと呟くように言った。
「淡海って、もっと気難しいやつだって噂で聞いてた。でも……話してみると、全然そんなことねえな。やっぱり人の噂なんて信用ならないんだな」
「……誰だよ、そんな噂流したやつ」
ムスッとしながら返すマヒロだが、藤沢の言葉は続く。
「頼む。これが俺たちにとって最後の大会なんだ。お前にしか頼めないんだよ」
その言葉に、マヒロは再び黙り込んだ。
――どうせ面倒事に巻き込まれるだけだ。別に無視したって問題ない。
頭ではそう分かっているのに、目の前の藤沢の必死な顔を見ていると、何も言えなくなる。
「……やれやれ」
マヒロは大きくため息をついて、窓の外へ目を向けた。
「分かったよ。……ただし、俺ができることなんてたかが知れてるからな」
「本当か!すまない、ありがとう!恩に着るよ!」
藤沢が勢いよく頭を上げ、ホッとした顔で礼を言う。
サクラも隣でニヤリと笑いながら、マヒロの肩を叩いた。
「ほらね、淡海君、頼られちゃってるじゃん!」
「……こういうの、全部お前のせいだからな」
マヒロは頭を抱えたまま、深々とため息をついた――。
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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