月光の姫君
車がゆっくりと止まり、エンジン音が静まる。
マヒロが窓の外を見ると、そこには圧倒的な存在感を放つ大きな門がそびえ立っていた。木造の梁は美しく磨かれ、周囲には手入れの行き届いた庭園が広がっている。どこか時代を感じさせる日本家屋だが、その威圧感はただものではなかった。
「何だよ、ここ……」
マヒロが呟くと、隣に座っていたサクラも窓の外を見て目を丸くした。
「すごーい!……けど、なんかすごく厳かな感じだね。どこなんだろう?」
矢口は無言のまま腕を組み、警戒するような目で門を睨んでいる。
七神アキトは車から悠然と降りると、メガネを軽く押し上げながら振り返った。
「さあ、着いたよ。ここが今日の目的地――月瀬家だ」
「月瀬家?」
マヒロが眉をひそめて尋ねると、七神はにやりと笑った。
「タイタニアに関わるいろんな物事を影で支えている、由緒ある名家さ」
「……全然知らないけど」
マヒロが呟くと、七神は軽く肩をすくめた。
「まあ、そうだろうね。普通は表に出ない家だから」
その会話が続く間に、黒塗りの高級車のドアが開けられ、黒服の男たちが降り立つ。どこかピリついた空気をまとった彼らが門の前で整列する中、門の奥から人影が現れた。
「……おお」
サクラが思わず感嘆の声を漏らす。
門から現れたのは、一人の中年の男だった。黒い着物を身にまとい、頭は短く刈り上げられている。背後には付き人らしき男たちが控えており、揃いのスーツ姿がさらにその場の空気を引き締めていた。
男は七神を見つけるなり、険しい顔で言い放った。
「七神。……やっと来たか」
その一言で空気が一気に凍りついたように感じられた。マヒロは思わず目をそらし、矢口は無意識に口をへの字に曲げる。
「まあまあ、隆盛さん。そんな怖い顔しないでくださいよ」
七神は慣れた様子で手を軽く挙げ、なだめるように言った。
「こっちも急いで準備してたんですから。それに、こうして続々と“例の力”を持つ人材が集まりつつありますよ」
その言葉を聞いた月瀬家の当主――隆盛は、一瞬目を細めたかと思うと、鼻を鳴らして笑った。
「……ほう、そうか。やっと“使える奴ら”が揃い始めたってわけだな」
その目は、マヒロたち一行をじっくりと値踏みするように動いていた。マヒロは居心地の悪さを感じながら、視線を逸らす。
「中で聞こう。ここで話してると目立つからな」
隆盛がそう言い放つと、付き人たちが整然と門を開けた。七神が軽くマヒロたちに手を振り、先導するように門をくぐる。
「さあ、みんな行こうか」
厳かな雰囲気の中、マヒロたちは月瀬家の敷地内へと足を踏み入れる。大きな門をくぐり抜けた先には、さらに広がる見事な庭園と壮大な母屋があった。手入れの行き届いた石畳の道を進むと、七神たちは月瀬家の使用人たちに導かれて母屋の奥へと進んでいった。
「……やけに広いな」
矢口がぽつりと呟く。
「これ、全部一つの家なんだよね?」
サクラも感嘆しながらあたりを見渡している。
一行がたどり着いたのは、大きな襖で仕切られた大広間だった。使用人が襖を静かに開けると、中は見事なまでに整然としており、磨かれた木の床や美しい掛け軸が、ただの家屋ではない威厳を漂わせていた。
「どうぞ、こちらへ」
使用人の案内で一行が席に着くと、しばらくしてふすまの向こうから音もなく一人の少女が現れた。
現れたのは、自分たちと同じくらいの年齢に見える少女だった。長い黒髪が艶やかに揺れ、涼しげな目元が印象的だ。その凛とした佇まいは、品格と美しさを兼ね備えており、まるでこの家そのものを象徴しているかのようだった。
少女は静かに歩み寄ると、盆に乗せた湯呑を一人ひとりの前に置いていく。その所作の一つ一つが、まるで舞のように洗練されている。
「ようこそ、月瀬家へ」
少女は穏やかな声で一行に挨拶した。その声には緊張を感じさせない落ち着きがあり、場の空気をさらに引き締めた。
サクラはじっと少女を見つめ、何か考え込むような表情を浮かべている。矢口は無表情のままだったが、どこか目線をそらしているように見えた。
その時、奥の襖が勢いよく開き、先ほど門で出迎えた月瀬家の当主、隆盛が現れた。
「おう、待たせたな」
隆盛は一行をざっと見回した後、雑に手を振るような仕草で言った。
「こいつはうちの娘、ルナだ。そこそこ役に立つから、何かあれば使ってやってくれ」
「……使ってって……」
思わずサクラが小声で呟いたが、隆盛は気にも留めず七神の方を向いた。
「で、七神。話ってのは、もちろん良い話なんだろうな?」
「ええ、もちろんです」
七神は微笑を浮かべながら軽く頷いた。
「まずは一息ついていただこうと思いましたが――さっそく本題に入りましょうか」
隆盛は鼻を鳴らして、腕を組んだまま大広間の中央に腰を下ろした。
「お前の胡散臭い前置きなど興味ない。さっさと話せ」
一行が自然と彼を囲む形で座り直す中、大広間の空気がさらに張り詰めていく。七神は一度咳払いをすると、マヒロをチラリと一瞥し話を始めた。
■月瀬ルナ(00001)
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
いいねやコメント、本当に励みになります!
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




