力を知るための場所
――何かがぼんやりと見える。
マヒロはゆっくりと瞼を開けた。
「……ここ、どこだ……?」
視界に映ったのは、無機質な蛍光灯の光と、壁一面に並んだモニター、金属製の棚にずらりと並ぶ試薬や器具――どこかアングラな雰囲気の漂う場所だった。
たしか矢口と喧嘩して変な夢見て、それから……。
「起きたか」
低くも落ち着いた声が聞こえ、マヒロはゆっくりと体を起こした。
声の主は、椅子に座る一人の女性だった。セミロングの髪が艶やかに揺れ、白衣を着てはいるが、その下に覗く黒いタイトな服装が妙にセクシーさを際立たせている。クールで鋭い視線を持つ彼女は、片手に持った端末を操作する。
女性はマヒロの方を一瞥すると、端末を耳に当て、何かを話し始める。通話を切った彼女は、再びマヒロに視線を向けた。
「目が覚めたなら、さっさと起きなさい。時間を無駄にできない」
「あの……、どこなんですか、ここ?」
マヒロが額を押さえながら訊ねると、彼女は呆れたように肩をすくめた。
「例え言ったとして、今のキミにわかるのか?」
その回答の冷たさに、マヒロは思わず顔をしかめる。
「……そうですか」
女性は椅子から立ち上がると、マヒロに背を向け、部屋の扉に向かって歩き出した。
「立て。ついて来い」
振り返ることなくそう言い放つ彼女に、マヒロは仕方なくベッドを降り、後を追うことにした。
金属的な匂いと足音が響く中、マヒロは冷たい雰囲気の女性の背中を見つめながら歩く。
暫く廊下を歩いて辿り着いたのは、広々とした会議室だった。
重厚な木製のテーブルに椅子がいくつも並び、その一角に見覚えのある顔が二つあった。
「……サクラ?それに……矢口?」
テーブルの端に座るサクラは、無邪気に手を振りながら笑みを浮かべる。
「やっほー、淡海君!無事でよかったー」
一方、反対側に座る矢口は無言で腕を組み、険しい表情を浮かべながら視線を逸らしている。
困惑するマヒロに対して、案内してきた冷たい女性は無言で扉を閉めると、部屋の中央に座っている男に声をかけた。
「とりあえず連れてきたわよ」
その声に反応して、男が椅子を軽く揺らしながら顔を上げた。
「おお、来た来た。ようこそ、待ってたよ!淡海マヒロ君」
男はスーツの襟を直しながら立ち上がった。着ているスーツは、ぱっと見で高級そうだなという印象だった。メガネの奥には柔らかな瞳が覗き、親しみやすい笑顔を浮かべているが、その立ち姿には、どことなく隙がなかった。
「僕は七神アキト。この施設の所長をしている。よろしくね」
軽い口調で言われ、マヒロは一瞬呆気に取られたが、すぐに頭を下げた。
「あ、どうも……。ここにいる理由とか、何が起きてるのか理解できていないんですけど……」
アキトは笑みを浮かべたまま、軽く手を振った。
「まあまあ、焦らないで。キミがここに来た理由は、これからゆっくり説明するからさ」
「……はあ」
マヒロはまだ釈然としない表情で頷く。
「とりあえず、サクラちゃんや矢口君も揃ってるんだし、いい機会ってことで」
アキトは軽く両手を広げ、マヒロに席を勧めるような仕草をした。釈然としないが、とりあえず指定された椅子に腰掛けるマヒロ。
「早速だけど、淡海マヒロ君。タイタンの覚醒おめでとう。さぞ衝撃的だったろうけど、無事に目覚めてくれて安心したよ」
アキトの言葉にマヒロは目を見開く。
(……そうだ。あの時、俺はよく分からない石像の前に案内されて、気が付いたら矢口をぶん殴ってた。あれは夢じゃなかった……?)
「あなたは、アレについて何か知っているんですか?」
マヒロの問いに、アキトはまたも柔らかな笑みを浮かべたが、どこか意味深な光を瞳に宿していた。
「それを知るのが、これからのキミの役目だよ」
マヒロがその言葉を飲み込む間もなく、サクラが明るい声で言葉を続けた。
「ここね、色々なことを教えてくれるんだよ。私たちが“どうしてこうなったか”とかね!」
「どうして……、というか私たち?」
思考が頭の中をぐるぐるする。
(私達というのは矢口、と、まさかサクラもってことなのか?)
「そうそう。それに、マヒロ君自身のことも色々わかるようになるはずだよ」
アキトが椅子に腰を掛け直しながらそう言うと、サクラが小さく笑った。
「マヒロ君、安心して大丈夫だよ。七神さん、こう見えても実はすごい人だからね」
「サクラちゃん、『こう見えても』は余計だなあ。僕はキャリア官僚の中でもトップクラスのスーパーエリートよ?」
軽い調子でそう言ったアキトだが、マヒロを見つめる目には鋭さが宿っていた。
「さてと。そろそろ始めようか――マヒロ君も気になってるであろうタイタニアについての話をね」
その言葉に、マヒロの心臓が小さく跳ねた――。
■レイア(00001)
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
いいねやコメント、本当に励みになります!
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




