闘いの果てに
現実に引き戻されたマヒロの目の前には、矢口の拳が迫っていた。
(――来る!)
その瞬間、マヒロの体が白いモヤのようなオーラに包まれた。
周囲の空気が変わる。攻撃が触れる寸前、マヒロの手が自然に動き、矢口の拳を軽くいなした。
「……!」
矢口の目がわずかに見開かれる。しかし、次の瞬間には薄く笑みを浮かべていた。
「……待ち侘びたぞ、淡海」
矢口の声には驚きよりも、むしろ期待が満たされたような感情が滲んでいた。
マヒロは何を言うでもなく、穏やかな表情を浮かべたまま、次に襲い来る攻撃をいなしていく。矢口の拳も足も、一切マヒロには届かない。
矢口は次々と繰り出される自分の打撃が空を切る感覚を味わいながらも、焦りはしなかった。それどころか――
「いいぞ。もっと、その力を見せてみろ!」
嬉しそうに笑いながら、一歩引いて再び拳を構えた。
周囲の不良たちがざわざわと動揺する。
「矢口さんが……押されてる?」
「いや、それよりもアイツの様子……全然別人みたいだぞ……」
マヒロは依然として口を開かず、ただ矢口の攻撃を無駄のない動きでかわし続けた。
「さあ、行くぞ!」
矢口が力を溜め、渾身の一撃を繰り出す。その拳は一際赤い輝きを纏っていた。
マヒロも拳を構え、静かに前に踏み出した。
マヒロと矢口。二人は一直線に駆け出し、最後の拳を振り下ろす――。
衝突による激しい衝撃波が辺りを包み込み、周囲のギャラリーたちが思わず顔を覆う。その瞬間、時間が止まったように二人の拳が交錯する。
「……っ!」
激しい衝撃波が収まり、静寂が訪れる。
その場に立ち尽くしていたマヒロと矢口だったが――次の瞬間、二人は同時に崩れるように倒れ込んだ。
「矢口さん!?」
「淡海君……!」
ギャラリーから驚きと動揺の声が上がる。
地面に倒れたまま、矢口が肩で息をしながら苦笑した。
「……やっぱりお前、化け物だな……。けど、悪くない……」
マヒロも同じように倒れ込み、空を見上げたまま力なく呟いた。
「……わかんねえよ、何がどうなってんのか……」
周囲のギャラリーがざわざわと声を上げる中、マヒロがゆっくりと体を起こした。その動きに、不良たちがどよめく。
「淡海が……立った!」
「こいつが矢口さんに勝ったのか……!」
歓声が上がり、場が沸き立つ。
しかし、その熱狂を打ち消すように、遠くから複数のパトカーのサイレンが鳴り響いた。
「パトカーだ!何台も来てる!」
「やべえ、逃げるぞ!」
ギャラリーの一部が慌てて走り出す中、マヒロは力を使い果たし、再び倒れそうになった。その体を支えたのは、矢口だった。
「……ボロボロじゃねえか」
矢口は苦笑しながらマヒロを支え、その肩に手を置いた。
「よく立ったな。お前がこんなふうに倒れるのを見たのは初めてだ……」
マヒロは息も絶え絶えの中、矢口を一瞥した。
「お前だって……十分ボロボロだろ……」
矢口は肩をすくめ、ギャラリーに向けて怒声を上げる。
「早くここから逃げろ!全員だ!」
不良たちはその声に押されるように散り散りに走り去っていく。
矢口はマヒロの体を支えながら叫ぶ。
「……芹沢ァ!」
その名前を聞いて、マヒロは遠のく意識の中で考える。
(……サクラ……?)
近くでその様子を見ていたミホも驚いたように顔を上げる。
「えっ……?サクラ……?」
サクラはいつもの無邪気な様子とは違い、どこか真剣な顔つきで矢口に歩み寄る。
「淡海をどうする?」
矢口の問いに、サクラは一瞬考えた後、はっきりと言った。
「……七神さんのところへ連れて行こう」
その言葉を最後に、マヒロの意識は完全に途切れた。
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
お楽しみいただけますように!




