目立ちたくないのに
放課後の掃除用具置き場。マヒロは仮の机を雑巾で拭きながら、ひどく使い込まれた木目をぼんやりと見つめていた。
「ねえねえ淡海君、もしかしてタイマンのこと考えてる?」
サクラが横でしゃがみながら、ニヤニヤとした顔で話しかけてきた。
「別に……」
マヒロは顔をしかめながら雑巾を絞る。
「あの、タイマンって……ケンカのことだよね?」
隣でミホが少し不安そうに首をかしげた。
「……そう。だから嫌なんだよ」
マヒロは深く息を吐きながら答えた。
「でも矢口さん、すっごく本気だったよね~。断るのは無理っぽくない?」
サクラが楽しそうに言うと、マヒロは少しむっとしながら顔を上げた。
「そりゃわかってるけどさ……なんでこんなことになるんだよ」
ミホがふと、少し怯えたように呟いた。
「あとね……なんか最近、私たち他の人たちに見られてる気がするんだけど……。なんか視線を集めてるっていうか」
「それ、サクラのせいだろ」
マヒロが淡々と言うと、サクラは一瞬驚いた顔をした。
「え、私?」
(そうだよ。お前みたいなルックスが良くて、明るくて目立つやつが、いつも自席で寝てばっかりで、誰ともあんまり関わらない俺とつるんでりゃ、嫌でも目立つに決まってんだろ)
「……目立つやつだからな」
マヒロは淡々とそう言いながら机を拭き続けた。
「ええ~、そうかなあ?」
サクラは笑いながら肩をすくめる。
「そうに決まってる」
マヒロがぼそりと言うと、ミホも小さく頷いた。
「確かに……サクラ、すごく明るいし、話しやすいし……男子もよく見てる気がする」
「だよな?」
マヒロは軽く肩をすくめると、目の前の机をポンと叩いた。
「おかげで俺まで余計な注目を浴びてる。しかも今日、これだし……」
脚がガタガタの年季が入ったボロ机――それは今日の三時間目に、マヒロが力の制御を誤ったせいで割ってしまった机の代用品だった。
授業中、先日起きた矢口の件を考え込んでぼーっとしていたマヒロは、先生が何度も名前を呼んでいることにも気づかず、強く名前を呼ばれた瞬間に慌てて立ち上がった。机に手をついた瞬間――
「バキッ」
机はあっけなく真っ二つに割れ、教室中が凍りついた。
「普通、机って割れないよね~」
サクラは笑いをこらえながら言うと、ミホは不安そうに言った。
「そのあとは大丈夫だったの……?」
「いや、俺は力を入れてないつもりだったんだけど。一応元からヒビが入っていて、相談しようと思ってた。ってことにしてる」
(どれだけ信じてる奴がいるかは分からないけどな)
マヒロは小さな声でぼやいた。
「でも、それでますます注目されちゃったね」
サクラはケラケラ笑いながら言ったが、ミホはさらに不安げな表情を浮かべた。
「本当に……変な噂になってないといいんだけど……」
「俺はただ平穏無事に波風立てず過ごしたいだけなんだよ」
マヒロは再びため息をつくと、雑巾を置いて机のガタついた脚に目を落とした。
「普通に過ごしたいって言う割には、いろいろ壊しちゃってるけどね~」
サクラの楽しそうな声を無視しながら、マヒロはそっと廊下を行き交う生徒たちを横目で見た。
ひそひそと何か話している声が、耳に入るような気がした。
みなさん、こんにちは!いつも読んでいただきありがとうございます!
こうして皆さんに物語をお届けできるのは、本当に幸せなことだと感じています。感謝の気持ちでいっぱいです!
この物語は定期的に更新を目指しており、皆さんと一緒に成長していきたいと考えています。少しでも続きが気になるような展開をお届けできたら嬉しいです!
ちなみに、途中で「あれ?前に読んだ内容がちょっと変わってる?」と感じることがあるかもしれません。それは物語の本筋を変えない範囲で、文章や展開をブラッシュアップしているからです。より楽しんでいただけるよう、細かい部分をちょこちょこ改稿するのが作者の趣味なんです(笑)。
そして最後に……
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それでは、今日も物語の世界へどうぞ!
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