表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4.ないしょのやくそく

 どのくらいそうしていたでしょう。

 ふたりとも、いつのまにか小さくすすりあげるだけになっていました。

 つかれて、のどがかわいて、おなかがへっていたのです。

 そこで、ゆうたとゆうきは、三角岩のちかくにある神社によって、たっぷり水を飲みました。

 暑いあつい夏の日でした。

 山から流れ出た水はつめたくすんで、ジュースよりもずっとあまくておいしく感じられました。

 そして、ほんとうはいけないことですが、あまりにも冷たくて気持ちよかったので、ひしゃくで頭からたっぷり水をかけ合いました。


 つめたい水でのどのかわきはおさまりましたが、おなかはへったままです。ぐうと鳴ったのはだれのおなかでしょう。

 でも、とゆうきはつぶやきました。

 三角岩に行ったってわかったら、かあちゃんにしかられる。

 ゆうきは、そのまますわりこんでしまいました。

 おひさまは頭のまうえよりすすんでしまっています。足元のかげも、さっきよりちょっと長くなっています。おひるごはんの時間を、ずいぶんすぎてしまったようです。

 ゆうたも、ママにしかられるでしょう。

 ゆうたも、ほんのちょっと、ちょっとだけゆうきと同じことを考えました。

 それでも。

 ゆうたが帰らなかったら、ママが心配するように。

 ゆうきが帰らなかったら、ゆうきのママも心配するでしょう。

 だから、ゆうたは言いました。

 ぼくもいっしょにあやまってあげる。だから、いっしょに帰ろうよ。


 ゆうたは、つよいな。

 ゆうきが言いました。

 ゆうたはすごい。だって、いっしょにあやまるって言えるもの。三角岩まで、こわがらずにひとりでさがしに来たんだもの。

 ちがうよ。ゆうたは首を振りました。

 ぼくは、ゆうきがいないのがいやだったんだ。

 ひとりがいやなだけだったんだ。

 だからゆうきをさがしに来たんだ。

 ねえ、ぼくはわがままなのかな。


 そうじゃないよ。

 ゆうきは言いました。

 ゆうたは、ゆうきがあるんだよ。

 だって、おれがさそったときにも、ダメだって言ってくれた。

 それでもたすけに来てくれたんだもの。

 ゆうたのゆうは、やさしいゆうだ。

 ゆうたのゆうは、いさましいゆうだ。

 ゆうたのゆうは、ゆうきのゆうだ。

 だって、やさしいってゆうきがいることだもの。

 おれも、ゆうたみたいになりたいな。


 ゆうたは、うれしくなりました。

 ゆうきの言葉は、ゆうたのむねをドキドキさせました。

 やさしいという言葉が、すごくすてきに思えました。

 そして、はじめてじぶんの名前がすきになりました。


 ゆうたは言いました。

 ゆうきだって、すごいよ。

 だって、ぼくに勇気をくれた。

 ゆうきのゆうは勇気のゆうだけど、やさしいゆうでもあるんだね。


 ゆうたはうれしくて。

 ゆうきもうれしくて。

 だからふたりはこっそりやくそくしました。

 ゆうたのゆうはゆうきのゆう。ゆうきのゆうはゆうたのゆう。

 こっそり名前をこうかんしました。

 おとこどうしのやくそくです。

 ふたりだけのないしょです。

 ゆうきが笑います。

 ゆうたも笑います。


 ないしょのやくそくをかわしたふたりの目の前を、大きなチョウがかすめていきました。

 くろくて、みどりで、ぴかぴかの、ゆうたとゆうきがであったときの、あのチョウでした。

 ああ、あのチョウだ。ゆうたもゆうきも、すぐにわかりました。

 ゆうたとゆうきがであえたのは、あのチョウが飛んでいたからです。

 ゆうきにとって、ゆうたにとって、幸運のチョウだったのです。

 うれしくてたまらないふたりは、チョウを追いかけて走りました。

 しげみを抜けて、林をかけ抜け、丸木橋をわたって、小道をたどり。


 たのしいね。

 どちらともなく言いました。

 夏やすみって、ステキだね。

 だってきみがいるんだもの。

 ぼくらはともだちだね。

 ずうっとともだちだね。

 きみにあえてよかった。


 そうだ。

 あしたもあそぼう。

 いっしょにあそぼう。

 ずうっといっしょに。


「うん」


 おたがいに、やくそくを交わしながら。

 ゆうたとゆうきは、しげみをかけ抜けました。


 きらりとおひさまが光りました。

 ぴかりとチョウのハネがかがやきました。

 さわりとすずしい風が吹き、ひらりと木の葉がゆれました。

 ゆうたはたちどまりました。

 風に飛ばされたように、チョウのすがたはどこにもありません。

 ゆうたはチョウを見失ってしまったのです。

 かなしくなって、ゆうたはふりむきました。


「ゆうき?」

手水所では手を洗い口を漱ぎ、心を清めます。

遊んじゃダメです。


でも…サワガニとかヨコエビとか、いるんだよね。

そんなときは、ひと気のないとき、その地の神様にことわりを入れてからにしてね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ