3.三角岩
三角岩です。
とがった岩がごつんごつんと立っています。ここには、去年パパとふたりで来たことがあります。
『ここはあぶないから、子どもだけで登っちゃダメだぞ』
パパともそのときやくそくしたのです。
岩はとがって、うっかりさわると刺さりそうです。むき出しの岩にかわいた砂が積んで、ふんだだけですべりそうです。
おや?
ほんとうに、すべった足あとが残っています。
ゆうきはここに来たのでしょうか。
ゆうきはここにいるのでしょうか。
ゆうたはゆうきを呼びました。
「ゆうき、どこ?」
どこからか、声がかえってきました。
いた!
ゆうたは急いであたりを見まわしました。
かわいた岩、かわいた砂、しゃきしゃきのくさむらと平たいはっぱのこんもりしたかたまり。
おや? はっぱがちぎれています。かさなったはっぱが、ほんのすこしうすくなっています。うえの斜面にはおおきくすべったあとがあります。
ゆうたははっぱをかきわけました。おおきなはっぱが、ゆうたのかおをたたきます。
ゆうたはふとくて何本もからんだつたを押しのけました。がんじょうなつるが、ゆうたの足をつかみます。
いつものゆうたなら、途中であきらめてしまったでしょう。でも今日はちがいます。
はっぱが顔をたたいても、つるが足にからんでも、虫がなんびきとびまわっても、ゆうたは進んでいきました。
だってそこには、ゆうきがいるのです。だいじな友だちがいるのですから。
草をかきわけ、はっぱをふみしめ。
「うわあっ」
ゆうたはしりもちをつきました。
つるんとすべった草のかげに、大きな穴が隠れていたのでした。そして穴の中には。
たいへんです。
ずどんと落ちた穴の中。
ゆうきはそこにいました。
黒いほほには白いすじ。泣いていたのかもしれません。
たすけて、ゆうた。おれ、落っこちちゃったんだ。ゆうきがべそをかきながら言いました。
のぞきこんだ穴のふちには、指のあとがついています。穴のかべには、すべった靴のあとがあります。穴の底にはちぎれた草がちらばっています。
もうちょっと。もうほんのちょっと足りないのです。手を伸ばせば届きます。でも、ゆうたの力ではゆうきを引っ張り上げることができません。
おとなのひとを呼んでこなくちゃ。
かけだそうとしたゆうたを、ゆうきが止めました。
かあちゃんに見つかったら、しかられる。
おや、おや。きのうと言うことがちがいます。
でも、ゆうたは立ち止まってかんがえました。
ぼくもママにないしょで来たんだっけ。
ゆうたはママにしかられるでしょう。それにもしかしたら、ゆうきと遊んじゃだめって言われるかもしれません。
ママの言うことはきかなくちゃいけません。でも、ゆうきと遊べなくなるのはいやです。
ゆうたは困ってしまいました。
だけど、ゆうたひとりでなにができるというのでしょう。
ゆうたは、かんがえて、かんがえて。
いいことを思いつきました。
ゆうたは、さっきじゃまをしたつるを引っ張りました。
いちばんふとくて、いちばんがんじょうそうなのを見つけました。
そしてそれを、穴の中に垂らしたのです。
さあ、これにつかまって!
ゆうたは力いっぱい引っ張ったけれど、ぜんぜん持ち上がりません。
でも、ゆうきはつるをのぼって、穴から出てこられました。
ああ、よかった。
ほっとしたとたん。
ずっとがまんしていたのでしょう。
ゆうきが泣き出しました。
大きな声で、わんわん泣きました。
つられて、ゆうたも泣いてしまいました。
子供には冒険と秘密が必要です。
子供は子供だけで解決しようと考えます。
それは正しい。
でも、大人はそれを知り、理解し、かつ見守ることが必要です。
そうなりたい。そうありたい。




