5.あした、いっしょに
ゆうきはへんじをしません。
まえにもうしろにも、どこにもゆうきのすがたが見えません。
今までいっしょに走っていたのに。今までいっしょにチョウを追いかけていたのに。いっしょにしげみを通ってきたのに。
呼んでも呼んでも、ゆうきは出てきません。
かなしくて、かなしくて、ゆうたは泣き出しました。ゆうきを呼びながら泣きました。
ゆうき、ゆうき、どこにいったの?
おどろいてママが出てきました。
おばあちゃんもまえかけで手を拭きながら奥から出てきました。
それでゆうたはようやく、そこが海のおじいちゃん、海のおばあちゃんのおうちの庭先だったことに気づきました。
でも、なみだはとまりません。
拭いてもふいても、後からあとからあふれてきます。
ゆうきがいない。どこにもいない。三角岩からいっしょに帰ってきたのに。
ゆうたは泣きました。声がかれても泣き続けました。
その晩のことです。
ゆうたは目を覚ましました。
ゆうたは泣きつかれて眠ってしまっていたのです。
細い光がふすまの間から差し込んでいます。そっとのぞくと、ちゃぶ台を前にママとおばあちゃんとおじいちゃんがすわっています。
「三角岩に行っちゃダメって、あんなに言ったのに」
ママの声はおこっています。ゆうたは首をすくめました。
「山手のぼうず、な。ゆうたの言ったとおり、三角岩のところで穴に落ちて泣いていたのが見つかったぞ」
お手柄、お手柄。おじいちゃんの声はごきげんです。でもちょっと首をかしげました。
「そういえば、昔。ゆうきも大泣きしながら帰ったことがあったな」
「そうそう、こんな夏の日で。ちょうどゆうたくらいのころだったかしら」
お茶を注ぎながらおばあちゃんがこたえます。
「ともだちとはぐれたって、何日も探していたけれど。夏休みに来た町の子だったのか、結局それきりだったっけ」
「ゆうたがはぐれた子はゆうきだって? ふしぎなこともあるものだ」
おじいちゃんはお茶をのんで、そういえば、と言いました。
「ゆうきはあしたのいつごろ着くんだって?」
「おひるの二時半には着く予定ですって。
あしたはパパに、ゆうたをしかってもらわなくちゃ」
パパはあした来るんだ。うれしくなって、ゆうたはぎゅっと両手をにぎりました。
でも。
「ゆうたはまだねているのかしら。おひるも、ばんも食べないで」
ママが立ち上がってこちらに来ます。
ゆうたはあわてて布団にはいってねたふりをしました。
ふすまが開いて、光がどっとおしよせてきます。でもゆうたはねたふりをつづけました。だって、いま起きたらママのお小言がはじまるのはまちがいないからです。
「つかれているんだろう。目を覚ますまでねかせておやり」
おじいちゃんが言ったので、ママはだまってふすまをしめました。
でももうすこし。
そうしてねたふりをしている間に、ゆうたはまたねむくなってきました。
半分ゆめにふみこんで、ゆうたはパパによびかけます。
パパ、パパ。あのね、ぼくいっぱいおはなしすることがあるんだ。
ぼく、パパのつけてくれたゆうたってなまえ、だいすきだよ。
それに、だいすきなともだちができたんだ。パパとおんなじ、ゆうきだよ。
おとこどうしの、ひみつのやくそくもしたんだよ。
ゆうき、ゆうき。あしたもあそぼう。あしたもあさっても、そのつぎも。
だって、やくそくしたんだもの。
ぼくらはともだちだもの。
きっとあしたもいい天気。きっとあしたもいい日だよ。
ゆめのとびらを開けながら。ゆうたはにっこりほほえみます。
パパも、ゆうきも。
あしたあおうね。
だからこんやは、おやすみなさい。
ゆうたのゆうは、ゆうきのゆう。
ゆうきのゆうは、ゆうたのゆう。
<Fin.>
今夜はどんな夢を見るのでしょうね。




