2.ケンカとスイカ
探検、冒険は子供の特権!
でも危険な場所には近づかない!
でもどこの何が危険かは、経験によるからね…(体験ではない)
ある日のことです。
ゆうたはゆうきとケンカしました。
ゆうきが三角岩にたんけんにいこうとさそったのです。
でも、ゆうたはいやだとこたえました。
だって、三角岩はあぶないから、こどもだけでいってはいけません。ママになんども言われています。
こどもだけであぶないところであそばない、そうママとやくそくしています。やくそくをやぶったらママにしかられます。
でも、ゆうきはきいてくれませんでした。
なんだい、かあちゃんにしかられるくらいで。ゆうたのよわむし。
ゆうきはおこって、ひとりであそびに行ってしまいました。
セミが鳴いています。ひまわりが咲いています。
青空と入道雲を切り分けて、つばめが飛んでいきます。
氷が溶けて、麦茶がうすまってきました。ガラスのコップはびっしょり汗をかいています。
おやつのスイカはすっかりぬるくなって、端っこなんかちょっとかわいてしまいました。
でも、ゆうきはもどってきません。
ゆうたはひとりでぬるい麦茶を飲みました。
ゆうたはひとりでしおれたスイカをかじりました。
まるで、ゆうきにであう前みたいです。
夏やすみって、こんなにつまらなかったっけ?
ゆうたは決心しました。
あしたゆうきにあやまろう。
朝はやくから、あたりがざわざわしています。
おとなのひとが何人も歩きまわっています。
漁に出ていたおじいちゃんがあわてて帰ってきました。
たいへんだ、山手のぼうすがきのうから帰ってないんだと。もしかしたら、潮に流されたかもしれん。
そういって、もう一度でかけていきました。
おばあちゃんもいそいでどこかへでかけていきました。ママはなんども電話をかけています。
よくわからないけれど、とってもたいへんなことみたいです。ゆうきならしっているかもしれません。
ゆうきが来たら聞いてみよう。
ゆうたは縁側にこしかけて、ゆうきがくるのを待ちました。
おひさまはどんどん高くのぼっていきます。気温もどんどん高くなってきます。
でも、ゆうきはまだ来ません。
お昼前になるというのに、どうしたことでしょう。
きのうおこって、ひとりあそびに行って、そのまま帰って来なかったけれど。
まだおこっているのかしら。
それとも。
ゆうたは玄関からくつと麦わら帽子をとってきました。こっそり庭におりて、小さなしげみにかけこみました。
そうだ、ゆうきにあいにいこう。
小道を走って、小川を渡って、林をぬけて。ゆうたはゆうきとあった場所につきました。
ゆうたはゆうきを呼びました。
なんども、なんども。
だけどゆうきは出てきません。
呼んで、呼んで。
声がかれそうになっても、ゆうきは返事をしてくれません。
どうしよう。ゆうたはなみだがでてきました。
ゆうきはぼくがきらいになっちゃったのかしら。
だから出てこないのかしら。
ゆうたはしょんぼりと帰ります。
おひさまは頭のまうえにいます。もうおひるごはんの時間です。あまりおそいと、こっそり出かけたことがママにみつかってしまいます。
それでもいそいで帰る気になれなくて、とぼとぼ歩いていくと。
とおく三角にとがった岩のかげが見えました。きのうゆうきがさそった、あの三角岩です。
きょうもゆうきはあそこに行っているのかもしれない。
それとも。
『山手のぼうすがきのうから帰ってないんだと』
おじいちゃんがそう言っていたのを思い出しました。
もしかして、それはゆうきのことではないかしら。
ゆうきは、帰っていないのかしら。
きのう三角岩に行ったきり、もしも帰っていないなら。
ゆうきはまだ、三角岩にいるかもしれません。
ゆうたは、三角岩に向かって走り出しました。
大人も、子供も。
危険な場所に居たり、危険な様子だったら。
声を掛けたり、様子を見たり。時には助けたりしてください。
黙って見過ごしたり放置したりしないで。
甥っ子、もうちょっとで危ないトコでした。
最近の子は、手加減を知らないのが多くてかないません。




