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真逆なふたりのお付き合い(優子編)(6)(終)

優子ちゃんの話、最終話です。

今日から藍丹中との合同合宿。去年は色々あったけど、今年は大丈夫そうだ。


…藍丹中の1年生が何かケンカをしているみたいだけど。


あ、大宅さんと柳木さんが1年生を引っ張っていった。


…まあ、欧天中(うち)は特にトラブルもなく終わりそうだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



合宿所のとある一室。この部屋は両チームの女子マネージャーの宿泊場所になっている。


今は自由時間だ。私は息抜きに動画を見る。ユーロのスーパープレイ集だ。


「はああああぁぁ…疲れた…!」


そう言って布団に座っている私の近くまで寝返りをうったのは北條(ほくじょう) 柚芽花(ゆめか)さん。藍丹中の女子マネで、私と同級生だ。


「お疲れ様です。北條さん。色々あったみたいで大変だったでしょう。」


「本当だよ!去年の柳木福谷コンビに比べたらマシだけどね!」


「ふふっ、そうですね。」


「あっ!それより…優子ちゃん。」


「どうしました?」


「ごめんね!今年は宍戸くん、副キャプテンだから色々忙しくて…話す機会が無かったよね!」


「へ?」


急な宍戸さんの話に私が困惑していると、北條さんが不思議そうな顔で話し出した。


「えっ、優子ちゃんって宍戸くんの事好きだよね?」


「うえっ!?」


突然の北條さんの発言に、周囲はざわつく。私も変な声を出してしまった…


周囲からは「何を今更…」という同級生の声や、「な、なんで宍戸先輩…?意外…」といったざわつきが聞こえる。今更ってなんだ!?


それに意外とはなんだ。確かに私は無愛想かもしれないけど…宍戸さんに対してはにやけるのを我慢しているんだから。


私が勝手に周囲のざわつきに対してうだうだ考えていると、北條さんがニヤリと笑いながら近付いてきた。


「それでさ~あ?聞きたいんだよね…どこが好きかーとか、いつ好きになった…とか、ね?」


そう言って私に迫り来る北條さん。に、逃げなければ!


「わ、私!用事を思い出しました!」


私はなんとか北條さんを躱し、部屋を出ていった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



なんとか部屋を抜け出し、私は外に出ていた。


(…綺麗な星空。)


そう思っていると、人影が見えた。


あっ。あそこにいるのは…


「宍戸さん。」


「あれ?奥島さん。こんな時間にどうしたの?」


「逃げてきました。」


「逃げてきた!?」


「ええ…その…恋愛の話になりましたので…」


「まあ、女子ってそういう話好きそうだしね。うちのクラスの女子も修学旅行でしてたみたいだし。」


「そ、そうですよね。私はあまり興味が無いのですが…」


嘘である。物凄く興味はある。ただ、自分が標的になると物凄く恥ずかしいのだ。それに…


私が考えていると、宍戸さんは何かを閃いたような表情をし、私に話し掛けてきた。


「じゃあさ、俺とサッカーの話しようよ。」


「…良いんですか?」


「良いよ良いよ。…ほら、せっかく月が綺麗で明るいし。」


…今、月が綺麗って言った?


いや、他意はないだろう。文学作品はあまり興味がないと話していたし。


…月の話はともかく、せっかく話を振ってくれたのだ。答えねば。


「…!は、はい…では、お言葉に甘えて、今季のJリーグの話でも…」


「お、良いね!奥島さんは今季どこに注目してる?」


「ええと…」


こうして、私達は消灯ギリギリまでサッカー談義をするのであった…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



合宿が終わり、私は1人帰路に着く。


(…このままじゃダメだ!)


私は決意する。


次に会った時、宍戸さんに告白をしよう。


最初は推しの選手に似ていたり、絡まれていたのを助けてもらったという理由で、ほとんど一目惚れだったが、今は違う。


しっかりと宍戸さんと向き合って、確信した。


私は宍戸さんのことを好ましく思っている。


だからこそ、この思いは真っ先に宍戸さんに伝えたい。


家族や友人には察されているだろうが、まだ私の口からは誰にも言っていない。


全中が終わったあと、夏休みには携帯をしばらく封印する。


それまでに、なんとか告白をしよう…!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



時は経ち、私は3年生になった。


結局何も言えずにずるずるいってしまった。


お互いに普段は忙しくて出掛けられない。かといって、試合や練習試合で出くわしても話す機会がほとんど無いということもあり、ここまで経ってしまった。もう地区大会に突入してしまった…


さておき。


今年こそは全中へ…!という気持ちで一致団結した欧天中(我が校)。先ずは最大の敵である藍丹中に一矢報いるのだ。


その為に、チーム全員で秘策を考えていたのだが…


地区大会決勝で藍丹中と当たり、0-1で敗北した。


アディショナルタイムで柳木さんが決めたゴールが決め手となった。いや、それよりも…


「何だよあのバケモン共!」


そう叫ぶのは欧天中(うち)のキャプテン。


そう言いたくなる気持ちも分かる。私達が考えた初見殺しとも言わんばかりの戦法を持ってしても優位に立てなかったのだ。


実際、藍丹中のメンバー、特に宍戸さん、大宅さん、福谷さん、柳木さんの4人は突出してバケモノである。非常に困った。勝てない。


私が考えていると、キャプテンが話し掛けてきた。


「なあなあ、奥島。」


「どうしました?」


「あの4人の誰でも良いからさ、県大会の宣戦布告しておいてよ。あとあの戦法の感想聞いてきて。」


「…自分で聞けば良いのでは?」


「だって気まずいじゃん!」


「私も一緒ですが?…まあ良いでしょう。」


正直自分で言えよっていう気持ちは多分にあるが、宍戸さんと話す機会ができたのでありがたく利用させてもらおう。


私は宍戸さんにメッセージを送った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



公園で宍戸さんを待ってると、姿が見えた。


宍戸さんは私に駆け寄って話をする。


「お、お待たせ…!」


「宍戸さん。すみません、試合の後ですのに…」


「良いよ。…それで?用事は何?」


「え、えっと…その…試合の感想を聞きたくて…」


「試合って…今日の?」


「はい。流石に周りに人が多い状況だと聞きにくくて…」


「ああ、なるほど。…強かったね。欧天中。」


「そ、そうですか!…でも、あの戦術、2度目が通用しないんですよね。」


「確かに!」


「…ですので、県大会までにもっと強くなって見せますから…!と、うちのキャプテンが言ってました。」


「…!良いねえ…県大会が楽しみだよ。」


「…お互い、頑張りましょう。」


「うん!…じゃあ、またね!」


「ええ…あ!宍戸さん!」


「?どうしたの?」


「い、いえ…その…また、こうして、話をしても良いでしょうか…」


「良いよ!勿論!」


「…!ありがとうございます。では、また。」


「うん、またね!」


…とまあ、話しはしたものの…


(…告白のことをすっかり忘れていた…!)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



県大会が終わった。準決勝で藍丹中と当たったが、結果は0-1で敗北した。


3位決定戦では3-0で勝利、県3位で地方大会出場が決定した。


そして藍丹中は決勝で4-0で勝利、優勝した。


地方大会ベスト4までが全国大会に出場できる。かなり厳しい戦いだが、希望はある。最後まで足掻き続けよう。


そう思っていると、宍戸さんからMANE(メイン)が来た。


「…宍戸さんから?えーっと…『この後、この前話をした公園に来て欲しい。』…?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



公園に着くと、宍戸さんが公園の真ん中で立っていた。


私は宍戸さんの方へ駆け寄り、話し掛ける。


「あの…宍戸さん…話とは?」


「あ、う、うん…」


…?何か様子がおかしい?


「あ、あの…大丈夫ですか?」


私がそう言って顔を近づけると、宍戸さんは驚いた表情をして叫んだ。


「可愛い!好き!」


「…えっ!」


焦って後ろに下がる私。


それを不思議そうに眺める宍戸さん。…まさか、さっき自分が声に出していた自覚がない!?


私は努めて冷静に宍戸さんに話し掛ける。


「あ、あの…声に出てましたよ。」


「へ?何が?」


「そ、その…好きって…」


「…えっ。」


みるみるうちに宍戸さんの顔が赤くなる。…青くなった。かなり焦っているようだ。


まあ、本人としてはもっと格好良く告白したかったんだろう。


…正直、ちょっと締まらないところは少し可愛いと思った。


さておき。返答をしなければ。答えは決まっている。


「引退した後だったら良いです。」


「へ?」


「…ですから、お互いが引退したら、お付き合いをしても良いと言ったんです。」


「…」


宍戸さんが黙り込んだ。


一度は断られた相手から、今度はOKをもらったのだ。脳の処理が追い付かないのだろう。


私は下から見上げるように宍戸さんに近付き、話し掛ける。


「…宍戸さん?」


「…夢じゃないよね?」


「夢ではありません。」


「…やったああああああああ!!!」


ビックリした!うるさい!


嬉しいのはわかるが、今後の試合に支障をきたすのはまずい。私は慌てて宍戸さんに話す。


「い、引退したらですからね!」


「うんうん。大丈夫大丈夫、後数ヶ月くらい、全然待つよ!」


宍戸さんは数ヶ月(・・・)と言った。全中に出て活躍するつもりだ。


そう思うと嬉しくなってきた。そういう意外と真面目なところが結構好きなのだ。


私は感情を抑えながら宍戸さんに話す。


「…だったら良いです。…その…よろしくお願いします。」


「うん!よろしくね!」


そうして、私と宍戸さんは恋人(予定)になった。


その後、はしゃぎすぎた宍戸さんがきっかけで、ちょっと疎遠になっていたクラスメイトと再び関わることになるのは別の話。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「…と、いうわけです。」


私はそう言ってコーヒーを飲み干す。涼平くんは砂糖とミルクが必須らしいが、私はブラックが好きだ。


「そ、そんなラブストーリーが…」


「初めて聞いたよ…!」


目をキラキラさせながら話すのは、私と同じ藍丹高校1年生でサッカー部のマネージャーをしている鷺谷(さぎや) 瑠美(るみ)さんと、北條 柚芽花さんだ。


私たちは今、駅前のカフェに来ている。瑠美さんは甘いホットココア、柚芽花さんは甘くしたホットカフェラテを飲んでいる。


「2人とも、別に初めてでは無いでしょう。」


「いやいや、ここまで聞いたのは初めて!もっと聞きたい!」


そう言う瑠美さんに、私は答える。


「これ以降は大体瑠美さんも知ってることです。それよりも…映画の時間を考えないといけませんね。」


「あっ!そうだ!行かないと遅れちゃう!」


そう言って私達はカフェを後にした…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



カフェから出ると、柚芽花さんは私と瑠美さんに話し掛ける。


「お手洗い!行ってくる!」


「…公共の場ですから、声のトーンは落としてください。」


「はーい!」


そう言って柚芽花さんはお手洗いへ駆け出していった。…もしかして結構我慢していたのかな?それだったら少し悪いことをしたな…


そう思っていると、金髪の男子高校生2人組が前から歩いてきた。あっ…


「あ、涼平くん。」


涼平くんと、その幼馴染みの西郷さんだ。


涼平くんもこっちに気付いたようで、話し掛けてきた。


「お、優子…とギーちゃん。」


「ちょっと!もっと可愛いあだ名が良いって言ったじゃん!」


そう言ってプリプリ怒る瑠美さんを尻目に、私は涼平くんに尋ねる。


「何をして…って、幼馴染みさんの恋愛相談ですよね。」


「そうそう、ちょっと思い出話を。そっちも?」


「はい。私も思い出話をしました。」


「ふーん…あ、これから服見に行くけど、一緒に行く?」


「いえ、映画がありますので。」


「オッケー。じゃ、また明日な。」


「ええ、また明日。」


そう言って私達は別れた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ねえねえ、優子ちゃん。」


「どうしました?瑠美さん。」


「さっきの話を聞いて疑問に思ったんだけどね。…シドくんっていつの間に優子ちゃんを呼び捨てにしてたの?」


「あっ!それ私も気になる!ずっとお互いに名字にさん付けだったのに!」


「ああ、私から言ったんですよ。」


「そうなんだ…どんな話したのか気になる!」


「私も!あっ、でも…」


「別に構いませんよ。映画が終わったら少しお話ししましょう。」


私はそう言うと、映画館があるフロアへ歩いていった。




サッカー以外の趣味も、見た目もまるっきり違う私達。


そんな2人でも、今は楽しく、幸せな日々を過ごしている。


(大人になっても、一緒にいたいな…)


そうひっそり思う私であった。





優子編、終わり。


その後へ続く。

次回!真逆な2人の呼び方問題です。

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