真逆なふたりのお付き合い(優子編)(2)
優子ちゃんの話、第2話です。
再び宍戸さんに会ったのは、全中の地区予選だった。
(あれ…?観客席にいる…)
疑問に思いながら歩いていると、先に座っていた宍戸さんが話し掛けてきた。
「奥島さん、久し振り!練習試合以来だね。」
「宍戸さん。そうですね。…観客席にいるということは…」
「うん、流石にレギュラーにはなれなかったよ…」
宍戸さんが!?確かに練習試合の時点ではBチームだったけど…相当上手いはずなのに…
「…私もです。まあ、私の場合はマネージャーとしてですけど。」
「マネージャーも先輩がいるからね。」
「ええ。ですが、いずれは私もベンチに入り、チームに貢献してやります!」
私がそう決意すると、宍戸さんは「頑張れ!」と言ってくれた。
…正直嬉しい。
鷺谷さんが言う通り、私はかなりチョロいのかもしれない。
宍戸さんと少し話をしていると、試合の時間が迫ってきた。
藍丹中の人が宍戸さんに話し掛ける。
私が退散しようとすると、宍戸さんはニコッと笑って手を振った。
「じゃあ奥島さん、またね。」
「ええ、また…」
「「決勝で。」」
…
宍戸さんが座っていた観客席から離れて、しばらく経った後に気付く。
…さっきの発言は本来試合に出るメンバーが言うセリフでは?
…まあ、良いか。
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決勝の後、後片付けをしていると、宍戸さんが近くにやって来た。恐らく、マネージャーと一緒に後片付けをするのだろう。
「…」
「…」
試合に出てないとはいえ、決勝で負かせた相手に話し掛けるのは気まずいと感じているのか、宍戸さんは無言で作業をしている。
なので、私から話し掛ける。
「宍戸さんがベンチに入れない理由が分かりました。」
「えっ?どう言うこと?」
「藍丹中の皆さん、素晴らしい動きでした。欧天中の先輩方も良い選手ばかりではありますが…完敗です。宍戸さんも上手いとは思いますが、やはりレギュラーともなると1段階違いますね。」
「あ、ありがとう…?」
何故疑問系?
…はっ!もしかして、褒めてると気付いていないのかもしれない。
「褒めてますよ?」
宍戸さんは「何でわかったの!?」って言いたげな顔で私を見つめる。
…宍戸さんって結構分かりやすいな。
「1年生の段階で全国常連校のレギュラーに入れる人なんて極僅かですからね。後1歩まで行っただけでもすごいと思います。」
「そ、そうかな…?」
「そうですよ。」
「もっと頑張ってレギュラーにならないとな!」
張り切る宍戸さんを見て思う。
「…最初からそういう態度で来れば良かったのに。」
…しまった。声に出してしまった。
「?どうしたの?」
…聞こえてなかったのか。良かった。
「いえ、何でもありません。私は終わりましたので…また、県大会で。」
「う、うん。またね!」
そう言って私達は別れた。地区大会では敗れたけど、これからは県大会。ベンチには入れなくても、もっと選手達のサポートを頑張らねば!と私は気合いを入れた。
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結局、私達欧天中は県でベスト8、地方大会には出場できず、3年生達の中学サッカーは終わりを告げた。
対して藍丹中は、県で優勝、地方大会への出場を決めた。
なので、再戦の機会は当分無い…つまり、宍戸さんと会う機会も当分無いということ。
「つまり、その男の子との接点が欲しいわけだ。」
鷺谷さんがアイスココアを飲みながら話す。
今、私達はカフェに来ている。私の父の会社が運営しているカフェだ。
鷺谷さんの話を聞いて私は頷いた。
「…でも、優子ちゃんの話を聞く限りだと、次に会えそうなのが…」
「11月ですね。」
そう、11月には藍丹中と欧天中の合同合宿が行われる。
「うーん…遅いね。間に何かイベントがあったりしないの?」
「そうですね…あっ。」
閃いた。
「国体があります。」
「こくたい?」
「ええ、簡単に言いますと、各県の代表が戦う大会です。藍丹中の3年生が出場するみたいで…」
「なるほど!彼も応援に来るかもしれないと!」
私は頷く。
「ということで、話はまとまったね!…にしても、優子ちゃん。」
「?どうしたのですか?」
「何やかんやあったけど、結局その男の子の事、好きなんだね。」
「…」
「沈黙は肯定とみなすよ。」
「…そう、ですね。好きです。彼の事が。」
「…」
「…?どうしました?鷺谷さん。」
「…か…」
「か?」
「かわいい~っ!!!」
「へっ?」
「恋する乙女はかわいいなあ…!優子ちゃん、私と結婚しない?」
「しません。…むぐぐ…」
み、見かけによらず力が強い…!
こうして私はしばらくの間、鷺谷さんに抱き締められるのであった…
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「秋なのに暑いですね…お兄様。」
「ああ。そうだな、優子。」
私の呟きに兄、志郎が答える。私達は今、国体の会場にいる。藍丹中の3年生が1人メンバーに選ばれているので、偵察に来た。という体で、あわよくば宍戸さんに会う作戦を行っている。
(まあ、広い会場にこの人数だと、流石に会えないでしょうが…)
地方大会か全国大会に行けば良かったのだが、私がまごついている間に地方大会は終わり、全国大会はお小遣いの都合で断念した。
お小遣いで断念は(一応)社長令嬢としてはどうかと思うが…
なので、全国大会の会場より近い国体の会場に行くことにしたのだ。
(うーん…)
「で?優子のお目当ての男子は見つかった?」
「へ?」
兄の発言に私はすっとんきょうな反応をする。きゅ、急に何を言い出すんだ…?
「あれ?優子の好きな相手がここに来るかもしれないから探しに来たんだよね?」
「ど、どこでそれを…!」
「この前、家に遊びに来てた子から聞いたんだ。」
「…鷺谷さん…」
また会った時に頬を引っ張ってやろう。前より強めに。
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「あ、あの…すいません。」
「?私ですか?」
急に男の人に話し掛けられた。だ、誰?
「う、うん…ちょっと場所を聞きたいんだけど…」
怪しい。成人男性が女子中学生に声をかける時点でかなり怪しいのに、更に道案内?近くにフロアマップもあるし、係員もいるのに?
「すみません、私はここに初めて来たので、案内はできません。あちらの係員の方に聞いていただけませんか?」
「う、うーん…そうなんだけどね?」
歯切れが悪い。確定した。不審者だ。
「と、とにかく!場所を教えて欲しいんだ!」
「ちょっ!や、やめてください!」
まずい。近付かれた。この体格差で腕を掴まれると抵抗が難しい…!
助けて…!
「おじさん。俺の友達に何か様?」
「し、宍戸さん…!」
…また、助けてくれました。
…やっぱり、格好いいな…
「い、嫌だなあ…僕はただ、この子に道を聞いていただけだよ…」
「ですから、私では分からないので係員の方に聞いてくださいと、さっきから言っています!」
「い、いやー…それはそうなんだけどね…」
「すみません!こっちです!」
言い訳をするおじさんと話していると、大宅さんが係員の方を連れてきました。
「えーっと…どうかされましたか?」
係員の言葉を聞いて、私は話そうとしたが、宍戸さんに止められた。
「すみません!どうやらこの人が道に迷ったみたいで…よろしければ案内していただけないかな…と思いまして…」
宍戸さんが係員にそう言うと、何かを察したみたいで、おじさんを連れていってくれた。よ、良かった…!
「あ、あの…!宍戸さん…」
「大丈夫だった?奥島さん。怪我とかしてない?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます。」
「良かった…ねえ奥島さん。良かったら俺達と一緒に試合を見ない?さっきみたいなことがあると大変だし…」
「そうですね…ただ、今日は兄と来ていまして…あっ!」
「優子!どうしたんだ!」
宍戸さんと話をしていると、兄が戻ってきた。
宍戸さんを睨み付けている?…あっ!
「お、お兄様!違うんです!この人は私を助けてくれたんです!」
私が言うと、兄は警戒を緩めた。助かった…!
「す、すまない…そうだったんだね。ありがとう。えーっと…」
「あ、俺、宍戸 涼平と言います。藍丹中1年サッカー部です。…で、横にいるのが大宅 公徳、同級生で、チームメイトです。」
「なるほど、君が…」
「え?」
お兄様!?何を言おうとしてるの!?
「お、お兄様!もうすぐ試合が始まります!会場に行きましょう!し、宍戸さん達も一緒に!」
そして私達4人は会場へと駆けていった。
…うまく誤魔化せたかな?
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「いやー…凄かった…」
「やはり、藍丹中のエースなだけあって、素晴らしい活躍でしたね。」
「ああ、特に前半28分のあの動きが…」
「公徳良く見てるなー…後半最初のあの動きとか試合で使えそうなんだよな…」
「そうですね。ただ、配置を考えると…」
3人で試合後のサッカー談義をする。結構、いやかなり楽しい!
兄は、「良く喋れるなー…」と少し後ろで私達を眺めている。…と、宍戸さんに話し掛けてきた。
「宍戸くん。ちょっと良いかい?」
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帰り道、私は兄に尋ねる。
「何を話したんですか?宍戸さんと。」
「んー?何も?」
「何もではないでしょう。」
「男同士の話だよ。秘密。」
「…まあ、良いでしょう。悪いことはしないでくださいね。」
「大丈夫大丈夫!優子の好きな人に悪いことはしないって!」
「すっ!好きな…って!」
「え?違った?」
「…違いません、けど。」
「なら良いじゃん。」
なんか…どんどん話が進んでいくように思える。
…私も結構分かりやすいのかな?
そう思っていると、兄は私を見てゆっくりと話し出した。
「…優子。」
「…どうしました?お兄様。」
「頑張れよ。」
「…はい。」
私達はゆっくりと家に帰るのであった…
…あっ!連絡先!
次へ続く!
優子ちゃんは表情固めですが、割と分かりやすいです。




