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「なかなかできる事じゃない」
「それは、そうですよね」
「常識に囚われるってチャンスを逃す事なのかも知れないと思ったわ
わ」
ソフィーはあの場には居なかったと思う。
いや、もしかしたらバスの中に居たかもしれない。
どちらにせよ、私は思うまま動いた。善し悪しはこの後に分かるだろう。
ソフィーはしなかった。やれなかった。それを常識的にやらないよねと。そういう事。
「……常識外れって言ってます?」
「ははっ」
「…………」
「コホン。次の子始まるよ」
いや、私の事貶してないか!?しらーっとした目で問い詰めるもから笑するだけで目も合わせない。
この人私の事嫌いなのか?
じーっと見つめていると、バツが悪くなったのか分かりやすく話をそらす。
「え?」
「向こう側」
まあ、空気悪いままこの場にいられるのも嫌だし、指さす方に顔を向ける。
ソフィーは控え室に戻らないんだろうか。
反対側の袖口には、透明感のある儚い美少女が深呼吸をしていた。
フリルのいっぱい付いている薄緑のドレス。
分かりやすく緊張しているのがみてとれる。顔が真っ青だけど大丈夫だろうか。
「あ、あの子」
「知ってるの?」
私が見覚えあるなぁと、見ているとソフィーが意外そうな顔を私に向ける。
どういう感情でその表情なんだ。
「前日リハの時に目に止まったというかなんと言うか」
「へぇ、綺麗な子。あーゆー子が好きなの?」
「んなっ!そーゆーのじゃないですよ!ただ」
私があの子を覚えている理由、気になった理由は何となく言いたくなくて、ゴニョゴニョと誤魔化して答えたら、何を勘違いしたのかソフィーはぱあっと顔を輝かせてとんでもないことを言った。
いきなり過ぎて強めに否定してしまった。
その声が観客席に行くかもと急いで口元を抑える。
言った後に抑えても無駄じゃねと思って直ぐにどかしたけど。
「ただ?」
「……1曲終わってバッテバテだったので」
「それだけー?」
ソフィーが尚も追求してくるから、第一印象を答えて。はい終わりと思ったらまだ食らいついきた。
スッポンか。
ジロジロと何が楽しいのか視線がうるさくて、観念して本当の理由を言う。
元気あるアイドルはいくらでもいる。というか、私の出会った人たちはそういう子達が殆どだった。
だからと言うのもあった。けど、それ以上に儚いと思う人だった。
「…………なんと言いますかね。散り逝く花みたいで、美しいと」
「へぇ、やっぱあーゆー子が」
「違います!!」
私の強めの否定は観客席の前の方に聞こえていたらしい。




