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終わりの始まり

「はぁ」


部屋を出ていくリツの背中を眺め、リクはため息をついた。


意見の食い違いなんて、何処にでもある。

今までだって、意見の衝突はいくらでもあった。


だからと言って、話し合いの場から離れてしまうことは、解決には繋がらない。


とりあえず、それぞれの考えを取りまとめる。

大きく分けて二つ、積極的にうってでるか、籠城するかで割れている。

あわせて、他の集落との連携の点でも、ほぼ同数での意見の割れがあり、調整は難航が予想される。


「どちらか二つに絞ることはない。二つの意見を合わせたり、中間点を探ることも必要だ。」


リクは全体に聞こえるよう、声を張って話す。

実のところ、こんなことにあまり意味はない。


恐らくは、この意見以上のものは出ないと感じていた。

中途な作戦、細かな作戦を実行する能力もない。


ただ停滞し、皆が思考を止めるのを防ぎたかっただけだ。


リクの考えはこうだ。


案は、どちらでもよい。

どうするかは、それぞれの意見の顔ぶれを見て決めようと考えている。


まとまりを失い、皆がバラバラに行動することを避けたい。

独断専行を防ぎ、想定外のトラブルを最小に抑える。


一つ大きな心配がある。

いつも一歩引いていたユウタの表情がおかしい。


顔を眺めていると、視線を避けて顔を伏せる。

いつもであれば、アイコンタクトでユウタは合わせてくれていた。


つまりは、今回ユウタは引くことが出来ないってわけか。


理由は思い当たる。

足繁く通っていた、あのシェルターのことを気にしているのだろう。


あのままでは、移民たちは危ない。

今のような状況であれば、少なくとも無事にはすむまい。


リツはどうだろう。

あの子は・・・いくつかの戦いを経験し、傷ついた仲間の姿を見るたびに、大きく変わっていった。


リツの考え方には傾向がある。

より厳しいと思うものを選ぶ。より苦しいと思うことを選ぶ。甘えを排除したものを選ぶ。


誰よりも甘く、楽天家な彼女が、自分に苦しい選択肢を正しいと考えるようになってしまったことを、リクは少し寂しく感じていた。


あらためて、集会場の面々の顔を眺める。


彼らは日和見主義ではない。

意見を割って行動することに危険を感じた時、自分の意見と異なったとしても、やるべきことを実行できる者たちばかりだ。


ただし、それは今回のユウタを除いてではあるが・・・。

彼はおそらく、自分の意見が通らなければ、シェルターに向かうだろう。

独断で行動するものを生み出すのは、出来るだけ避けたい。


リクは皆にはいったん食事を取らせ、再度の集合するように伝える。


食事の後で、おそらく方針は決まるだろう。

のんびりと考えている猶予はない。

皆もそれをわかっている。

後は決まったことに全力を尽くすだけだ。


リクは一人残り、ユウタとリツ、どちらを説得すべきかを考えていた。

幼馴染の二人の心は手に取るようにわかる。

今回はどちらも折れないだろう。

まとまらぬ考えにため息をつく。


不意に声を掛けられて、驚き振り向く。


「あれ、リクしかいないの。」


いつの間にかリツが戻ってきている、顔には妙な笑顔を浮かべている。

普段なら、一度怒ると3日は不機嫌な顔をしているはず。

違和感を感じる。


しかし怒っているより、話しやすいであろう。

リクはため息をつくと、両手を広げて問いかける。


「それで、どうしたいんだ。」


「ちょっとねー。ちょっと聞いてほしい話があるんだけどねぇ。」


リツのおどけた口調に、危機感を感じる。

これは彼女が良くないお願い事をするときの話し方だ。


「ねぇサクラ。いまリクしかいないから、入ってきなさい。」


そしてリツは、こちらを見てニッと笑う。


「リクはぁ、私の仲間よねっ。」


やれやれ・・・。

そうだよと、手を挙げて答えた。









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