終わりの始まり 2
「それで、どんなお願いですか、お姫様」
リクは皮肉を込めてリツに問う。
もうっと怒ったふりをしながら、リツは説明を始める。
「この子が見つけた病気を利用するのよ。」
リツが隠した真実は、サクラのことだった。
サクラがとある病気を見つけ、それを外敵に利用するのだと言った。
それが意図して生み出されたものではなく、自然発生的に見つかったものだと話した。
リクは半信半疑の顔している。
ときおりサクラの顔を見ようとするが、リツがそれを遮って話し続ける。
しかたなく、サクラは二人の様子を眺めていた。
何か言おうとして、言えなくて。
時折リツの袖をつかむ。
リツは熱を込めてリクに話しかける。
こちらは見ていない。
それでも、袖をつかむ手に、そっと手を添えてくれる。
「それで、ワクチンとかいうのは、確実に効果があるのかい。」
遮るリツを押しのけて、リクはサクラに問う。
「私自身で実験しました。」
サクラがそう告げると、二人は驚きを隠せない。
だが、サクラは更に衝撃の事実を告げる。
「実は、研究所の皆さんにも、すでにワクチンを投与しています。」
「ほんとに!?」
思い当たる節はある。
研究所では定期的に、健康の調査だとか、何らかの材料にすると言われて、血液の採取を行っている。
あの時に、それをされていたのであれば、気が付かないかもしれない。
「あとは、実際のゴブリンがどのような状態になるか、これが確かめられていません。」
サクラの言葉に、二人は落胆の表情を見せる。
「大丈夫です。効果が無いということは考えられません。ただ、一度始めてしまうと、もう止めることが出来ないんです。」
リツとリクは顔を見合わせている。
根拠は田中さとみが残した資料だろう。
しかし事態は、すでに田中さとみの想定を超えている。
リクは暫く両手を空で動かし、口をあけて考え事をする。
リツはその姿を心配そうに見つめている。
暫くして、リクが口をひらく。
「大体決めたよ。もう一度、駅の町に行く必要があるね。強化防護服が必要だ。」
リツはやったぁと喜ぶ。
「リクがいいと言えば、大抵のことは大丈夫なんだからっ」
そう言って、リツはサクラと肩を抱き寄せる。
首にぶら下がって礼を言うリツの頭を撫でながら、リクは冷たい瞳でサクラを見つめていた。




