ソリード、早くも心が折れかける
ソリードは曇り空を見上げていた。
穴の底から見ているためか、雲が動いていないように見える。
サク、サク……
草を踏む音が近づく。
「おーい! 誰か!」
音が止まった。
空が薄暗くなったように感じた。
絶対に誰かいる。
「手を貸してくれないか?」
一瞬、顔の影が横切った。たぶん、鼻筋からヘッセルアンテだ。
チラッとのぞき込んできただけで、声も発しない。
「ふざけんな! 助けろ! 足くじいてんだよ!」
必死に大声を出したが、声は届いていないようだった。
~
ヘッセルアンテは地面の穴を見下ろしていた。
ソリードの声が聞こえる。絶えず喚いている。間違いない。
「ちょっと待ってろ」
穴の近くでうつぶせになり、手を精いっぱい差し出した。
届かない。
ソリードがまだ喚いている。
振り返って、目を細める。
ドッテルがふうふう言いながら、こちらに向かっていた。
~
ヘッセルアンテがうつぶせのまま顔を上げ、ドッテルに話しかける。
「足を押さえててくれないか?」
「何やってんだ?」
ドッテルが返事した直後、穴からソリードの声が聞こえる。
「助けろ!」
ドッテルは穴に向かって話しかけた。
「助けてくださいだろ?」
「助けろ!」
ドッテルはやれやれといった表情で穴を指さし、ヘッセルアンテにたずねる。
「助けるのか?」
「助けたあとにぶん殴ればいいだろ?」
「意外と言うな……」
ドッテルは地面に座り込むと、ヘッセルアンテの足を脇に抱え、足首を持った。
「ふざけんな! おまえ、家来の分際で! クビだ!」
まだ穴からソリードが喚いている。
ヘッセルアンテは表情を変えることなく、穴の中に手を差し出した。
~
ソリードを真ん中にして、ドッテルとヘッセルアンテが肩を貸していた。
「何やってんの? あんたたち……」
ワネットとエレーラが後ろから声を掛けた。
「穴に落ちて、足を痛めたんだって……」
ドッテルが振り返って、ワネットたちに答えた。
ソリードはうなだれている。
「ふーーん……ネムちゃんしか治せないわね……そいつ一人置いて、先に行けばいいじゃん」
ワネットが当然のように言う。エレーラも続ける。
「先に行くね」
ワネットとエレーラは興味なさげにソリードの足先を見て、通り過ぎていった。
ソリードは一言も発さない。
が、離れていく二人の背中をじっとにらみ続けた。
ヘッセルアンテがドッテルにたずねる。
「どうする?」
「どうするかな……」
「置いて行けよ」
ソリードが力なく声にする。
「……ネムが来るまで付き合ってやるよ」
ドッテルがそう言うと、三人は再び歩き始めた。
◇◇◇
小柄なメガネ男――ヴァウツ。
ヴァウツはドッテルが苦手だった。
自分だけには高圧的だからだ。
本当なら追い越したい。
でも、見つかったら何か絶対に言われる。
ドッテルが急に振り返っても見つからないよう、距離を取りながら、ゆっくり歩いていた――




