三つに分かれて
「全然来ねぇじゃねぇか! 何やってんだ!」
ソリードは突然声を荒げた。
振り返って、続ける。
「クソガキと手をつないで暢気にハイキングしてるんじゃねぇだろうな!」
「落ち着け……」
ヘッセルアンテがなだめる。
「ヴァウツが来ないのもおかしい」
ドッテルが伏し目がちにつぶやく。
急に立ち止まって、振り返る。
「ヴァウツ! 隠れてないで、おまえも手伝え!」
ドッテルは目線を左右くまなく動かす。
――しかし。
――返事がないどころか、小鳥のさえずりすら感じられない。
「ちっ」と舌打ちし、再び歩き始めた。
ヘッセルアンテ、ソリード、ドッテルの背中が遠ざかっていく。
左右からソリードの肩を支え、一歩ずつ確かめるように歩く。
やがて、三人の背中は森の中へと紛れていった。
~
山道の先頭を行くワネットとエレーラ。
二人は山道から少し外れていた。
「大きな木ね……」
何気なくエレーラがつぶやく。
「お茶にしましょうよ」
目を見合わせる二人。
一緒に木の根元へと走り出す。
木の根元で腰を下ろした。
一息ついたところで、目の前に何かが次々と落ちてきた。
ドサッ
ドサッ、ドサッ
二人は目が点になる。
それは人の頭より少し小さいくらいの木の実だった。
ワネットは枝葉を見上げる。
そして、何を思ったか、幹に足の裏で力いっぱい蹴りを入れた。
でも木はビクともしない。
ピタッ
ワネットの額に何かが落ちる。
「痛ーーい!」
ワネットがそれを投げ返した直後――
ドサッ、ゴトッ
地面に落ちた木の実がはずんで、ワネットの側頭部に直撃した。
うつぶせで倒れているワネットを見つめるエレーラ。
お茶の準備をしていた手は止まったまま。
ハッと正気に戻ると、慌てて駆け寄った。
「ねぇ! ねぇったら!」
何度も肩を揺するが、ワネットが目を覚ます気配はなかった。
~
先を歩く小柄な女性。
足取りや肌ツヤから年は四十代後半ぐらいだろうか。縁の広い帽子を被っており、表情はわからない。
時折立ち止まり、振り返っては、フェルンたちに不審者を見るような目を向けてくる。
フェルンたちは距離を取って、ゆっくり歩を進めていた。
「どうするの?」
ネムがフェルンの胸を肘で突き、問いかけた。
「……こうする」
そう言うとフェルンは走り出した。
セノが揺れる。
フェルンの肩を掴む手が強くなる。
あわててネムも走り出す。
すぐにセノのお尻の下に手を差し出した。
二人で山道をなるべく音を立てずに駆け上がっていく。
「こんにちはー」と言って、さわやかに通り過ぎようとするフェルン。
「こんにちはっ」と続くネム。
女性が振り返ろうとした時にはフェルンたちは横を通り過ぎていた。
フェルンはチラッと後ろを見る。
その女性、目元は困っているのに、口元は笑っていた。




