セノとシルドバ①
展示会場の警備室。
そこには三人の男がいた。
警備員の一人は展示会場を監視している。
もう一人の警備員は足元に並んでいる灰色のビンを見つめている。
さらにもう一人、衛兵団所属の魔術師――シルドバは少し離れた場所でスーゥスーゥと寝息を立てていた。
灰色のビンを見つめていた警備員がぼやくように話し始めた。
「空のビンを会場に置いて、近くにシルドバさんを待機させておけばよかったんじゃないですか?」
さらに続ける。
「ここにあるとわかったら、狙われますよ。危ないですよ」
「そうだな……。俺達の命と引き換えになるかもしれないな……」
「そこまでの価値はないでしょ?」
「それはそうだけどな……」
一人の警備員が寝ているシルドバの椅子の下に灰色のビンを移動させ始めた。
「あんまり意味ないんじゃ……」
「少しの違いが大きな違いになるかもしれないぞ」
力強く語る。
それを聞いて、もう一人の警備員も手伝い始めた。
「もしかすると、床が抜けるかもしれないからな」
「そんなことしてきますかね?」
「わからん……」
ようやく、すべての灰色のビンを移動させた。
目を閉じる。
シルドバの寝息以外、何も聞こえない。
あたりを見回す。
天井、壁、床。今のところ……異状なし。
あとは侵入者が来るのを待つだけだった――
~~
「あった!」
セノが思わず叫ぶ。
コロミィはセノの小さな顔の隣に顔を寄せ、壁穴の中を見る。
そこには椅子の下に隠すように灰色のビンが何本も置かれていた。
コロミィはさすがに止めようとセノを説得する。
「あれは……さすがに無理じゃない?」
「うーーん……」
それでもセノはあきらめたくないようだった。
~~
警備員二人が見つめ合う。
「聞こえたか? 子供の声」
「ああ」
寝ていたシルドバも目を覚ます。
立ち上がると、手を挙げて伸びをする。
振り向くと、こちらに歩き出そうとした。
警備員の二人は必死に止めようとする。
シルドバがその椅子に座っている限りは侵入者は容易に手を出せないはずだ。
「まだ大丈夫そうです」
「ゆっくりしてて大丈夫ですよ。何かあれば、すぐに……」
「……ん? そうか?」
シルドバは再び椅子に座ると、あくびをしながら、つぶやいた。
「もう少しで寝るところだった……」
((寝てただろ……))
~~
シルドバの手から木の棒が滑り落ちた。
カラン
その音に気づいて、だるそうに目を開ける。
その目線の先には通気口があった。
その手前まで転がっていく。
シルドバは木の棒が止まったのを確認すると、ゆっくりと目を閉じた。
木の棒はスッと通気口に吸い込まれていった。
~~
筒状に丸めた魔法紙。
セノはその筒越しに壁穴の先にあるターゲットを片目で見定めていた。
一旦、目を離す。
そして、筒にふたをするように指先で押さえた。
スポッ
次の瞬間には魔法紙の先に木の棒が刺さっていた。
「ぉ」
眉間にしわが寄るセノ。
思っていたのと違う。
木の棒を取ると、もう一度、魔法紙で作った筒から中を覗く。
でも、光が見えない。
「ん?」
目が合った気がした。




