四度目の展示会
昨日と同じ時間。
展示会場の屋根の上。
セノはあきらめていなかった。
淡く白く輝く魔法陣の上に立って目を閉じ、うんうん頷いている。
その足元にはセヴァンが横たわっていた。
薄いベージュ色の寝袋のような布団を頭までかぶっている。
時々、ズゥーという音を響かせていた。
セヴァンの風邪は少し快方に向かっている。ただ、熱がまだ下がっていなかった。
なので、今日も布団の中で安静にしている。
そして、今日のパートナーもコロミィ。
セヴァンのお世話も兼ねている。
枕元に座って、汗を拭いてあげたり、水を飲ませたり……。
「静かで揺れていなければ、どこに居ても同じ」と悪セノに言いくるめられて、今日も一緒に来てしまった。
そんな三人を乗せた魔法陣がゆっくりと降下していく――
◇◇◇
展示会場の警備室。
そこにはいつもの警備員二人に加え、ゲストが一人いた。
魔術師シルドバ――衛兵団に属する魔術師だ。特別な時にだけ出てくる。
今日も侵入者がやってくるということで待機しているのだが……。
背中を預け、椅子に座っている。後頭部が少し見えるだけだ。
もしかしたら寝ているのかもしれない。
警備員たちがこそこそと話している。
「まだこの時間だぞ……いつもは何時に寝てんだよ……」
「聞こえるぞ」
警備員のうち一人が後ろからシルドバの顔をそっとのぞく。
濃い緑の髪。
わずかに息が聞こえる。
まつげがわずかに動く。でも、目は閉じている。
大事そうに木の棒を抱きしめ、寝ている。
どうしても触りたくなった。
ふわふわの白い首回り。
手を伸ばそうとした、その時。
カチッ
突然の歯が鳴る音がした。それに思わず肩がビクッとなる。
目は閉じたままだ。
夢の中で何か、もごもご食べているようだった。
~~
展示会場の外。
セノは魔法陣に乗って、水平移動しながら、ターゲットを探していた。
展示会場の外壁におでこをぐりぐりしながら、眉間にしわを寄せ、会場の中を見つめる。
今回は転移先までの距離をちゃんと測るため、二つの石をそれぞれの手で握りしめている。
まず、その一つを展示会場の屋根に置いた。
角が丸い四角形をした、緑に点滅する石。セノの手ぐらいの大きさだ。
今まではざっくりとしていた距離測定を正確に行うために持ってきたアイテム。
残りのもう一つをターゲットの近くに置けば準備完了なのだが……。
「ない!」
展示会場を二周したが、ターゲットが見つからない。
それまでゆっくりだったのが、宙を滑るように周っていく。
展示会場の上方を見ていたコロミィ。
何か発見し、口にする。
「上に明かりがついてるよ」
コロミィは指をさす。
セノはその方向を見て「ぉ」という表情になる。
わずかに光が漏れている。
だが、その隙間は小さい。
中を覗くことはできない。
魔法紙を膝の上に置いて考えるセノ。
足を投げ出し、光が漏れている場所を見上げる。
サクッと魔法陣を描きあげた。
光が漏れている場所の前まで静かに上がっていく。
そして、期待の眼差しで魔法陣の真ん中に人差し指の先を落とした。
パスッ
魔法陣が光ったかと思うと、直後に壁も一瞬光った。
セノは光った壁の辺りを、何かを確認するかのように手のひらで触っていく。
そして、指で壁を少しずつ剥いでいった。
壁の小さな欠片がパサパサッと下に落ちていく。
ある程度剥いだ後――
トドメを刺すかのように、人差し指を壁にスッと突き刺した。
「ぁ」
突き刺した指の周りから光が漏れる。
壁の大きな欠片が一度にガサッと落ちた。
穴は大人の拳ほどの大きさになった。
それは床より少し上にできた。
中から漏れる光がセノの顔に当たる――
中には男が二人……。少し離れて、もう一人いた……。




