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魔術師セノ  作者: 森山すぱこ。
セノの夏休み(前半)
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三度目の展示会


里芋をアバロンに戻して、セノが帰ってきたその日の夜。


展示会場の屋根の上。

そこには白く輝く魔法陣があった。

その上にセノとコロミィ、そして布団をかぶっているセヴァンがいた。


何やら真剣な表情のセノ。

同じく真剣な表情のコロミィ。わくわくしている。目が輝いている。


「うん!」


コロミィはノリノリだ。両手を握りしめている。

そんなコロミィを前に、セノは得意げな顔をして作戦を発表する。


「今日のターゲットは灰色のビンです!」


セノは小さな人差し指を立てて見せる。


「一個でガマンします!」



セノとセヴァンはギルマンの魔法で三歩以上離れるとセヴァンだけに精神的ダメージが入ってしまう。

なので、コロミィにビンを取りに行ってもらうという作戦だ。

もちろん、すぐそばまで魔法陣で向かう。


ムリしない。

何かあったら、すぐ戻る。

そういう方針をコロミィに伝えた。


~~


セヴァンの布団が魔法陣から少しはみ出ていた。

コロミィは布団の端を持って、魔法陣の真ん中へと寄せる。

セノもコロミィと同じようにして引っ張る。

あんまり役に立っていないと思ったのか、ちょこちょこと走ってコロミィの反対側へ移動した。

しゃがんで布団の端をうーんとうなりを上げて中に押し込んだ。



セノは折りたたんだ紙を広げる。

魔法陣の淡い白い光がセノの顔を照らす。

紙の上で何かを探している。

コロミィも目を細めながら、隣で見ている。

その紙には小さな文字の塊があちこちにあった。


セヴァンがうわ言のように何かしゃべっている。

でも、誰も聞いてない。

「高さをちゃんと計算しろ」

「足首ひねっただろうが……」


セノは魔法陣の一部を手の腹で擦って消した。

紙を見ながら、数字を書いた。



コロミィは魔法陣の端に手を置いて、下の真っ暗な建物の数々を眺めていた。

ところどころ光が漏れている。

ただ、建物がどんな形をしているのか、どこまで建物が続いているのか、まったくわからない。


三人を乗せた魔法陣が少しずつ浮かび上がる。

そして、消えた。



◇◇◇



セノたちがいたすぐ下。

そこは展示会場の屋根裏にある警備室。

警報が低い音で鳴り響いていた。


丸椅子に座る小さい警備員の背中が見える。

腕を組んで、透明な床の先を見つめていた。


「昨日の子供だな」


その言葉を聞いて、大きい警備員は黙って小さい警備員の目線の先を見やる。

透明な床の下に映る展示会場に子供と女の姿があった。

小さい警備員が続ける。


「おまえは昨日見てなかったな」


大きい警備員はそれに答えることなく、話しかける。


「衛兵呼びますね?」

「女は……昨日いなかった」


「呼びますよ?」

「……」


小さい警備員は問いかけに答えることなく、目を凝らして、子供と女の様子をじっと見ている。


大きい警備員は小さい警備員の答えを待たずに席を立った。

柱に掛けられた布を上げる。

そこには人の後頭部が映っている鏡のようなものがある。

鏡に口元を当てると、話しかけた。


「侵入者です。衛兵を至急お願いします」


鏡の中の人物が振り返る。


「わかりました。すぐに向かいます」


大きい警備員はその言葉を聞くと、再び鏡に布をかぶせた。

そして、小さい警備員の後頭部に向かって、話しかけた。


「衛兵を迎えに行ってきますね」

「おーう」


小さい警備員は振り返ることなく、片手を上げる。

昨日は行方を見失ってしまった。

だから、今日は見逃すまいと目を見開いたまま、展示会場の二人を凝視していた。


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