↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師セノ  作者: 森山すぱこ。
セノの夏休み(前半)
74/86

セノと里芋の攻防


展示会場の屋根裏にある警備室。

ベテラン泥棒のベゼカは展示会場の様子を上からうかがっていた。

ある光景を見たベゼカは思わず口にしてしまう。


「おーーい。馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿……」


子供(セノ)がベゼカの目標――灰色のビンに興味を持ったのだ。

灰色のビンの中には熱い砂が入っている。

寒いところでは手軽に暖を取れる貴重なアイテムになるのだ。


毎回、展示会が開催されるたび、ベゼカはそれをくすねていた。

今回もその予定だったのだ。

ベゼカは室内を大股で落ち着きなく往復する。


「持って行くなよ、持って行くなよ、持って行くなよ……」

「止めろよ…… 止めろ! 止めろ!」


セノが灰色のビンを両手で一個抱えて、よいしょよいしょと運ぶ。


(一個か……いやっ一個でも……一個なら……)


それを見つけた里芋がセノから灰色のビンを取り上げ、元の場所に戻す。


(よし! よくやった! そのまま!)



ビーーーーッ、カチッ


ベゼカは長めに鳴り続けた警報のスイッチをようやく解除する。

そして、里芋を心の底から応援する。


警報の音で目覚めた警備の一人が、薄目で周囲の様子をうかがっているとも知らず……。


~~~


セノが灰色のビンを手にする。

里芋がそれを取り上げ、元に戻す。

それは何度も何度も繰り返された。

セノもなかなかあきらめないが、里芋も根気強い。


それに一喜一憂するベゼカ。

本気で里芋を応援する。


「よし!」

「あ……」

「よし!」

「あ……」


だが、ついに均衡が破れる。

里芋が現場を放棄して、一方向に向かって走り始めたのだ。

その隙を見て、セノが再び灰色のビンを両手で抱える。


「何やってんだ!」と言った瞬間。


グイッ

ベゼカの首元が、背後からヒモで息もままならないくらい、強く締め上げられた。


~~~


セノは灰色のビンをリュックに入れる。

しかし、重くて背負ったままだと立ち上がれない。

しばらくじっとして考える。


目をこするセノ。

仕方ないので、一旦外に出した。


その時、再び里芋がやってきた。

灰色のビンをサッと元に戻すと、有無を言わさず、セノを抱きかかえる。

やってきた方向へと向かった。




「どう?」


里芋は心配そうにセヴァンに話しかける。


「あぁ……もう大丈夫だ」


セヴァンはうずくまり、胸に手を当てていたが、ゆっくりと立ち上がった。


「お前ら何ともないのか? 何ともなさそうだな……やっぱり、オレだけか……」



~~~



「大人しくしていろよ……」


屋根裏の警備室。

警備の男はベゼカの手足をヒモできつく縛る。


「下のヤツらはお前の仲間か?」

「……」


床に座って下のヤツらを見ているベゼカ。

警備の男が話しかけても無反応だ。


もう一人の警備の男を激しく揺するが、全く起きる気配がない。


侵入者は三人。一人では立ち向かえない。

目の前に侵入者がいるというのに何もできず、ただ途方に暮れていた――



突然、ベゼカが大きな声を上げた。


「おーい!」


「あっ?」


ベゼカがさらに声を漏らす。

警備の男が反応し、ベゼカと同じ方向を見やった。

もうそこには三人の姿がなかった。


「どうした? おまえを置いて仲間は帰ったのか?」

「……」


ベゼカは激しく揺すられるが、何も答えようとしない。

しばらくして、つぶやくように言った。


「消えた……」

「はっ?」


警備の男はベゼカと同じ方向に目を凝らしてみたが、その痕跡は全く残っていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。