二度目の展示会②
展示会場の屋根の上。
セノは白く光る魔法陣の上にいた。
セヴァンと里芋が乗ったのを確認すると、四つんばいのまま、ちょこちょこと体の向きを反転させる。
そして、魔法陣の真ん中に人差し指をそっと置いた。
次の瞬間。
白い光がスッと消えた直後、セノたちの姿は完全に暗闇に包まれた。
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そこは展示会場。
円周上に魔道具が所狭しと並んでおり、薄明りながら会場内が照らされていた。
そこには二人の男性がいた。
なぜか、セヴァンはヒザを抱え、痛恨の表情を浮かべている。
涙も浮かべている。
里芋が心配そうに話しかける。
「大丈夫?」
「つぅ……、ちょっと待ってくれ……」
歯を食いしばるセヴァン。目をギュッと閉じる。
里芋はキョロキョロと周囲を見回す。
しかし、辺りにはもう、セノの姿はなかった。
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少し離れた場所。
営業時間外であっても、一部の魔道具は動いている。
セノの小さなリュックがある魔道具の前に置かれていた。
そこでセノは無邪気に遊んでいる。
壁面を使ったビリヤードみたいなゲームだ。
セノは壁面に立って、全力で走る。
スーーーーーッ
壁面をおなかで滑ると、前髪をかきあげて、おでこを出す。
そして、ボールにおでこが触れる瞬間――
セノは目を閉じる。
すぐに目を開けると、転がるボールの行方を満面の笑みで追いかけた。
◇◇◇
同じ頃。
展示会場の屋根裏にある警備室。
そこでは二人の男がぐっすり眠っていた。
その近く、じっとスイッチを見つめている別の男がいた。
ビーッ、カチッ
ビーッ、カチッ
ひっきりなしに重々しい警報が鳴り響く。
鳴り始めるたびに、すぐに上がるスイッチを下げて、音を消す。
スイッチが上がるのを待ち構える手がわずかに震えていた。
その男はベゼカ。この展示会場をカモにしているベテラン泥棒。
警備の二人を眠らせ、今回も目的の物を頂いて帰ろうとしていた時だった。
自分以外にも侵入者がいたのだ。しかも無警戒で警報を鳴らしまくっている。
警備室の床は透明だ。
そこから展示会場の様子がまるわかり。
ベゼカはスイッチを荒々しく連打しながら、展示会場の様子を見ていた。
(三人もいる……)
(同業者か?)
セヴァンと里芋の服を見る。それは制服のようなきっちりとした服装だった。
(警備? 同じ制服ではないな……でも、同業者らしくもない……)
魔道具で無邪気に遊ぶ子供に釘付けになる。
(なんで子供?) ベゼカは固まり、真剣な表情になった。
(まさか、子供にやらせているのか? とんでもないヤツらだな)
(あいつら、子供に何をやらせてんだ……)
(ん? 同業者なら……子供なんて連れて来ないよな……やっぱり関係者か?)
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子供が水槽の中で次々と浮かんでいく泡を見ている。
その視線が、泡が出てくる部分で止まった。
唐突に服を脱ぐと、裸になって水槽を登る。
そして、お風呂に入るかのように足先で水温を確認すると、水槽の中へと入っていった。
(おいおい……止めろよ……やりたい放題やってるぞ……)
その時、セヴァンと里芋はまだ話し込んでいる。
やがて、セノは泡を出していた部品を持って出てくる。
そして、嬉しそうにリュックの中に入れた。
(あの子供が同業者!? おいおいおい……先が思いやられるぞ……)
◇◇◇
里芋が突然大きな声を出した。
「待って! 三歩以上離れてる!」
「えっ」
「なんともないぞ」
胸を押さえるセヴァン。それよりも足が痛む。
しばらくすると、ようやく立ち上がれるようになった。
しかし、まだ歩けない。足に力を入れると全身にジンジンと痛みが走る。
里芋はようやくセノを見つける。
セノは魔道具の魔法陣を展開し、必死にメモをしていた。
里芋は後ろからセノに近づいて覗き込む。
「お風呂にでも入ったのか? 髪の毛濡れてるぞ」
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セヴァンは壁に手をつき、円周上に設置された魔道具を興味深そうに見ていく。
痛めた足を引きずりながら。
そして、足の痛みが引いてきた瞬間だった。
セヴァンが静かに地面に視線を落とし、叫ぶ。
「あぁ……。おい! やっぱりダメだ。 来た……。来た!来た!来た! 戻ってこーーい!」
場内にセヴァンの切羽詰まった声が響き渡った。




