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魔術師セノ  作者: 森山すぱこ。
セノの夏休み(前半)
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ニタニル回帰


元盗賊、元徴税官、元重装兵は湖へと仕事で出かけていった。

シカくんと爺さんが小屋の中にいる。


爺さんが夕食の準備を始めた時だった。

たっぷりの水を入れた平たい鍋を暖炉の上に置く。

シカくんは横たわったまま、不思議そうに首を伸ばして見ている。

爺さんは小屋の奥から夕食用のパウチ(食事セット)を六つ取ってきた。



ザッザッ。

雪を踏みしめる音が外から聞こえてきた。


その音が聞こえてからすぐに、セヴァンが小屋に入って来た。

シカくんはセヴァンの顔を見ると、すぐに興味なさそうに床にあごをつけた。

セヴァンは小屋の中まで入ってくると、シカくんの後頭部を見ながら、たずねる。


「二人(セノと里芋)はどこいった?」

「収監所(アバロン)に行ったよ」

「アバロン?」


まさかの行先なのか、言葉を失うセヴァン。

見開いた目で床を見つめ、頭を左右に振った。


「どうやって行った?」


セヴァンは真剣な目をして爺さんにたずねた。


「骨の手で行きおった。」

「……骨の手?」


セヴァンは床を見渡す。

頭上の球には気づかない。その球には魔法紙を作る時に使う木製の水槽が映し出されていた。



◇◇◇


里芋は部屋の中を覗く。


「いない」


セノも里芋の顔の下から部屋をのぞく。

部屋へ足を踏み入れる。さらに、そのまま扉が開いたままのコロミィ部屋へと入っていく。

セノは分厚い魔法紙を里芋に渡した。里芋はそれを元あった場所へと戻す。


コロミィが水槽に浸かっている。

目を丸くして、里芋とセノの一連のやりとりを見つめている。


気づいたセノがコロミィに近づくと色とりどりのグミが入った透明の丸いケースを掲げる。

水槽にかろうじて届く小さな手。声は出さない。


コロミィはその鮮やかな色で気づくと、すぐに手に取る。



「行こう」


里芋がセノをせかす。


「わかった」


セノが里芋のもとへと走って行く。

里芋を見上げて、セノが話しかける。


「待って。シカくん連れてくるの、忘れてる」

「小屋に行く?」


里芋がセノにたずねると、「ん……」と言いながら、コロミィの部屋を出て行った。





「シカくん?」


コロミィがつぶやく。

すでにいなくなった二人には聞こえない。

水槽に浸かりながら、グミのケースを回転させ、少し遅れて転がるグミの粒々をながめていた。



---------

【あトがき】

両腕に泥だらけのクーレンを抱え、空を飛んでいるニタニル。


山の上空。なびく肩まであるボロボロの髪。

下を強い視線で見つめる。少し横移動しては、目だけを動かし地上を見る動作を繰り返す。

そして、ある一点を見つめたまま、ゆっくりと降りていった。



深い森の中、斜めの細い線となった木漏れ日が、幾筋も地面へと届いている。


そこにあるのは小さな泉。

水が時々ボワッと湧いてくる。

水はすぐに土へと吸収されていく。


ニタニルは泉の脇にクーレンをそっと下ろした。

そして、静かに地面に腰をおろす。

目を閉じる。

眉間にしわが寄る。


ニタニル「わかった」

ニタニル「……」

ニタニル「もういい」


独り言をはっきりと言ったあと、辺りを見渡すニタニル。


何かを探すのをあきらめたのか、湧いてきた水を両手ですくってクーレンにかける。

時間をかけて、丁寧に全身に少しずつ浴びせていった。


その周りには、まだわずかに平らな石などの人工物が残っていた。


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