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魔術師セノ  作者: 森山すぱこ。
セノの夏休み(前半)
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セノ、再び湖畔の小屋へ


セヴァンが里芋とセノを探しに行く前。

里芋とセノが工房から出てきた時に戻る。



セノは分厚い魔法紙を胸に抱きしめ、満面の笑み。


セノが抱きしめる紙を見て、里芋がたずねる。


「それ、普通のと何が違うの?」

「たぶん、魔力いらない」


「ダメじゃん」


セノが抱きしめる魔法紙を里芋は取り上げようとするが、セノは離さない。

目をつぶって、手に力を入れる。

片目を開けると、目の前に里芋がいる。


「取らないの?」

「それで何する?」


「小屋に行く」

「……それならいいか……セヴァンも魔術使ったらダメって言ってなかったし……」



セノはソリの座席に分厚い魔法紙を置く。

荷台に乗って別の方向を見ていたシカくんが、突然立ち上がって向きを変えた。再び座ると、間近でセノの顔を見つめる。

里芋もセノの後ろから見つめる。


セノは魔法紙に指先を当てると、円を描き始めた。

そして、円を描き終えた時だった。


円の中から出てくる骨の手。

それがセノの手首をしっかりつかんだ。



「ぉ」


セノは手を軽くグーパーグーパーしてみるが、まったく動かせない。


《セノ?》


セノは手首をつかむ骨の指を一つ一つ剥がそうとする。

でも、まったく動かない。


《セノ?》


「なに?」



セノはその骨が誰かわかっているかのように返事をする。

シカくんは座ったまま、首をニュッと出して、骨の手の甲に何度も噛みつく。

里芋はギョッとして、骨の手に目が釘付け。セノが誰としゃべっているかもわからないようだった。


《頼みがある。ニタニルのところへ連れて行ってほしい》


「なんで?」


《ヤツをここに連れてきたのは私だ。連れて帰りたい》


セノは骨の手を見つめて、話しかける。


「もう少し、ガマンできる?」


《……》


「できる?」



《……問題ない。この紙を彼に渡してくれればいい》


「わかった」


骨の手がセノから離れ、魔法紙の円の中へとゆっくりと沈むように消えていった。



◇◇◇



魔法陣の上に乗って移動するセノと里芋とシカくん。

セノの前髪がふわっと上がって、おでこが出る。

あっという間に湖のほとりにたどり着いた。


ゆっくり地面まで降下すると、魔法陣は地面の中へと消えて行った。


「湖って言われないとわからないね」


里芋が雪で覆われた湖を眺めながら、つぶやく。そして、セノにたずねる。


「何するの?」

「夕方またくる」

「?」


セノはそう言うと小屋に向かって歩き出した。

ぼーっとしていた里芋はあわてて、セノの後ろを追いかける。さらにその後ろをシカくんがゆっくり追いかける。



◇◇◇



小屋の中の四人が一斉に入口に顔を向けた。

シカくん、セノ、里芋の順番で小屋に入っていく。



セノに気づいた元盗賊。

立ち上がって、セノに近づいていく。


「少年! 無事だったか!」


セノを笑顔で見下ろすと、しゃがんで抱き上げ、肩車をした。

元盗賊はセノを見上げて、たずねる。


「セヴァンを倒したのか?」 

「倒してない。一緒に戻って来た。ぼくと里芋が一緒にいないとセヴァンは倒れるんだって」

「……? なんだそれ? ところで、なんで看守(里芋)をつれてきた?」

「一緒にいないとダメなんだって」

「どういうことだ?」


そう言うと、元盗賊はセノを期待の眼差しで見上げる。


「そんなことより、少年。一生のお願いだ。工房の中が見たい」

「エレライン見たいの?」

「わかってるじゃねぇか……」


「エレラインなら収監所に戻ったよ」

「……なんだと」



里芋の言葉で、元盗賊の顔が一気に赤くなった。

元盗賊はセノをそっと床に下ろすと、看守の首を片手で掴んで持ち上げた。



「もう一度言ってみろ……」


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