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魔術師セノ  作者: 森山すぱこ。
セノの夏休み(前半)
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セノ、謎の分厚い魔法紙を手に入れる


昼すぎ。

セヴァンと里芋とセノでシカくんと自分たちのごはんを買って工房に戻ってきた。


今はソリの上。

シカくんは荷台の上で大きな袋の中に頭を突っ込んでいる。

絶え間なく咀嚼音がしている。


セヴァン、セノ、里芋の順番に並んで食事をしていた。

セヴァンが夢中で食べる里芋の横顔に強い目線を送り、注意する。


「ゴミは袋の中にまとめろ」

「……わかりました」


里芋はソリを下りると、食べ物を包んでいた紙を拾い集めた。

荷台で横に寝そべっているシカくんと空になった大袋を見て、思わず声が出る。


「おまえ、全部食べたのか……また買いに行かなきゃいけないんじゃないの?」


セヴァンとセノが同時に振り返ってシカくんを見る。

里芋がセノにたずねる。


「お金、大丈夫なのか?」

「大丈夫」


「明日の昼前に行くか? 三人で」

「わかりました」


セヴァンの提案に里芋はすぐに返答して、ソリに座る。セヴァンとセノは目を合わせると、セノが軽く頷いた。



「明日の朝早く、魔法紙を作るか……今日は作業の邪魔になるから」


セヴァンがつぶやく。セノのセヴァンを見つめる目が少し鋭くなる。

話を続ける。


「今日は他の部屋の中には入るなよ」

「わかりました」

「絶対離れるなよ」

「大丈夫です」


里芋だけが返事をした。セノは食べながら、黙って何かを考えているようだった。

セノがセヴァンに質問する。


「湖行っていい?」

「近くの小屋は?」


セノの立て続けの質問にセヴァンは手元のすりつぶした芋の揚げ物を頬張ってから、答えた。


「……あそこは行ってもいい……。湖の中には入るなよ。凍ってても」


セヴァンはソリを下りる。


「部屋に戻るから、ゴミ散らかすなよ」


そう言うと、二人の反応を待つことなく、工房へと向かう。

そして、少し歩くと、振り返った。


「絶対離れるなよ」


最後にそう言うと、セヴァンは工房の中に入って行った。


食事をして、気が紛れたせいか、油断したのか、意外なことにセヴァンは二人を残した。

昨日までのセヴァンでは考えられないことだった。



◇◇◇



里芋がセヴァンの部屋の扉をそっと開ける。

頭だけを入れて、中を覗く。

セヴァンは机に向かって書きものをしていた。


それを確認してから、音を立てずに入って行く。

里芋が扉を持って、セノが部屋に入るまで待つ。

扉をそっと閉めると、セノのあとをついていく。



セノはまっすぐ扉の開いているコロミィの作業部屋に入った。

長椅子に座っているコロミィと目が合う。


上下の唇で人差し指を軽く挟んで、「しゃべらないで」の合図を送る。

早足の忍び足で近づくと、腰のポケットから取り出した透明のケースに入ったグミを握らせた。



コロミィがグミに夢中になっている間。

セノは部屋の中を見渡し、水槽の横の棚にある分厚い魔法紙を指さす。

里芋がそれを察し、手に取ろうとする。


セノは里芋がこちらを見るのを、期待の眼差しで待つ――

二人の視線が交わり、小さく頷き合うと、そっと忍び足で二人して、部屋から出て行った。


コロミィは長椅子でグミを一粒一粒、口に入れては顔をほころばせていた。



◇◇◇



外はもう、すっかり暗くなっていた。


セヴァンの脳裏にふと二人(里芋とセノ)の姿がよぎった。

まだ帰ってこない。

立ち上がる。


後ろの壁際に立っていたコロミィの肩がビクッとして少し上がる。


セヴァンは「少し出てくる」とだけ言うと、コロミィを一瞥することもなく部屋を出て行った。


「いってらっしゃい……」


コロミィは小さくつぶやいた。


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