ギルマンの新作
収監所の入り口・看守の待機部屋の隣。
そこには、棺がちょうど入るくらいの狭い寝床が壁面にずらりと並んでいた。
看守五人に対して、寝床は十分にある。
それぞれ間隔をあけ、バラバラの位置で寝ていた。
夜中。寝息しか聞こえない。
二人の男がある寝床の前に立っていた。
一人の男が寝床の中にある足首を両手でつかむと、後ろに下がって一気に引っ張り出す。
床に頭がつく寸前。
もう一人の男が足の甲で頭を受け止め、床に下ろした。
そして、そのまま食糧庫の中まで引きずって行った。
それでも男は起きる気配がなかった。
◇◇◇
食糧庫の床で眠る里芋。
それを人参と灯りを持った茄子が見下ろしていた。
「バカかよ。こいつ、全然起きねぇ」
そう言うと、茄子は灯りを里芋の顔に近づける。
人参が半笑いで里芋の頭をつま先で小突く。
「おまえ、昼間やらかしたんだってな」
「こいつのせいですよ……」
そう言うと、茄子は里芋の寝顔を見ながら、顔を一瞬ゆがめた。
突然、人参が振り返った。
「誰か来ましたか?」
「黙ってろ」
人参が言った直後、灯りが音もなく消えた。
何も見えなくなった。
「おい……。何やってんだ?」
辺りを見回して耳を澄ますが、声はもちろん、何の音も返ってこない。
「おい!」
人参が庫内に響き渡るほどの大きさで問いかけるも全く反応がない。
つま先で里芋の感触を探ろうと、じりじりとつま先を一歩前へと押し出す。
かかとを床にゆっくりと下ろす。
その直後。
人参の意識は飛んだ。
◇◇◇
翌朝、所長室。
ギルマンは魔法紙に描かれた魔法陣を机の上に置いて、目を閉じていた。
「所長、入りますよ」
「あぁ」
開いた扉からセヴァンが入ってきた。
ギルマンはセヴァンの顔色、瞳を遠目で目線だけを動かして確認する。
「調子はどうだ?」
「さきほど診てもらったので大丈夫です」
ギルマンは魔法紙を手に取って、立ち上がると室内の開けた場所まで歩みを進めた。
そして、床に魔法紙を置くと、人差し指で魔法陣の真ん中を押して力を入れた。
セヴァンの足元に魔法陣が展開され、青白く輝き、魔法陣がゆっくりと回転し始めた。
「何ですか?」
「新作だ」
しばらくすると、セノと里芋がとことことやってきた。
部屋の入口で待ち構えていたギルマンは黙って手を出して魔法陣の中に入るよう促した。
里芋がギルマンにたずねる。
「……ぼくもですか?」
「そうだ」
セノの後ろに立っていた里芋は、セノの背中を押して、一緒に魔法陣の中に入る。
里芋の足が魔法陣の内側に入った途端。
縦に青白い光のカーテンが一瞬舞い上がり、魔法陣がスッと消えた。
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【あとがき】
人参と茄子がいなくなった朝。
里芋は休憩室の床の上で目を覚ました。
「ん?」
しばし、ぼーっとする。
周りを見渡してから立ち上がり、自分の寝床へと戻った。
その後、人参と茄子の失踪が発覚した。
しかし、業務優先のため、残りの看守三人で仕事をこなし、捜索は後回しにされた。
そして、さらに翌日。二人の遺体が食糧庫で発見された。




