セヴァンへの罰
アバロン収監所の所長室。
セヴァンは左肩にくっつく暑苦しいセノを険しい目で見ていた。
ギルマンは二人がくっついていることを確認すると、今度はセノの小さな左手とセヴァンの右手を持って、強引に握り合わせた。
セヴァンの左肩にくっついていたセノがズルズルと滑り落ちる。
ギルマンはすぐにセノのお尻を片手で支えると、床にゆっくり降ろした。
セノは少し口を開け、まばたきしながら、ギルマンの顔を見上げる。
「どうだ?」
ギルマンはセヴァンの瞳の動きをしっかりと見ようと覗き込んできた。
そして、セヴァンの肩をゆすりながら、大きな声を出した。
「気持ちをしっかり持たないと持って行かれるぞ!」
セヴァンは下を向いたまま、一点を見つめている。
胸の奥から不安のような、やるせない気持ちがとめどなく湧き上がってくる。
それはどろどろとしており、じわりじわりと胸の中をうごめく。
その額から汗が流れるのを感じた。
セノは目を輝かせながら、セヴァンとギルマンを交互に見ている。
セヴァンの下まつげが濡れていた。
セヴァンは目に力を入れると、まばたきをすることなく顔を上げた。
すぐさま、セノを抱き寄せ、左肩に乗せると、左手で背中を押さえた。
そして、右手でセノの左手を握ると、すぐに離した。
スーーーーッ
目を閉じて一度だけ深く息を吐いた。
そして、ギルマンに向かって言った。
「キヴァスたちは毎日こんな思いをしてたんですね」
セノがセヴァンから離れようと、手足を激しく動かし始めた。
セノの動く左手が視界に入り、思考がかき乱される。
左目をつぶって、考え込む。
もう一度息を吐くと、セノの左手を押さえ、ギルマンを見つめて言った。
「もう十分なので解除してくれませんか? 仕事に支障が出ます」
「約束は守れ。工房の生産性には影響はないだろ?」
「……」
「何度言ってもダメだ」
セヴァンは腕を組んで目をギュッと閉じた。
ギルマンはセノに話しかける。
「5日間だけガマンしてくれ。魔術の勉強になるから」
そう言うとギルマンはセノの頭を優しく撫でた。
セノはセヴァンの顔を見つめ、その瞳を輝かせた。
◇◇◇
セヴァンはセノを左肩に抱えたまま、収監所から出た。
昼前で日差しが強い。
左肩の重みに、眉間にシワを寄せながら、セヴァンはソリに乗るための準備をしていた。
「あっ」
セノが指をさす。
セヴァンもそれを見ようと目を細めるが、動く影しかわからない。
「なんだ?」
「シカくん」
「ん?」
シカくんが一直線にサッサッサッと小走りで近づいてくる。
そして、目の前で止まるとセヴァンを見上げた。
――シカくんが野生の鋭い目になった――
ジャンプすると、セヴァンの額に両足の蹄を当て、強く押し出した。
ドンッ!!
セヴァンは目を開けたまま、仰向けに倒れ、後頭部を地面に叩きつけた。
そのおかげで、セノが受けた衝撃は微々たるものだった。
セノは必死に動かなくなったセヴァンの右手をつかもうともがくが、まったく届かない。
シカくんはそれをシュッと背筋を伸ばした姿勢で見下ろしていた。
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【あトがき】
収監所の所長室にて。
セヴァンは目を覚ました。
頭がズキズキする。
左肩を見て、セノがいなくなったことにホッとしていると、突然、頭の方からアバロンの声が聞こえた。
「明日から5日間だ」
「……何がですか?」
「罰に決まってるだろ。今日はそのまま安静にしていろ」
セヴァンはショックで気が遠くなった。




