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魔術師セノ  作者: 森山すぱこ。
セノの夏休み
48/54

セヴァンとセノ


元重装兵と元盗賊が小屋にソリで戻ってきた。

キヴァスとシヴはそのソリですぐさまセヴァンのもとに向かった。



工房、セヴァンの部屋にて。

キヴァスとシヴは入り口の脇で見慣れない銀色の物体を目にした。


「何ですか、これ?」

「ん? うん……何かあったか?」


「侵入者がいました」

「そうか」


セヴァンはそう言って、キヴァスと対面する。


「もしかして……」

「太ったオッサンだったか?」

「子供二人だったそうです。それも突然消えたと……」


セヴァンはうつむいて、こめかみを両手で押さえた。


「どっちかわかるか?」

「おそらく魔法使いかと……唐突に消えたらしいです」


セヴァンは目線を上げると、遠い目をして、何度かまばたきをした。



◇◇◇



セヴァンたちが話をしている最中。


コロミィは机から離れると、廊下へは向かわず、壁にある扉へと歩み寄った。

その扉の先は作業部屋。

扉は開けたままにして、その部屋に入った。


部屋の真ん中に進んで佇む。

ボタンに指先を掛け、おもむろに服を脱ぎ始めた。


すべてを脱ぐと、ストレッチを始める。

入念に指先から足先まで。

隅々まで丁寧に伸ばし、血を全身に巡らせていく。



髪留めを外した。

フサッと背中へと流れ落ちた髪。

それを一本一本感じながら、ときほぐしていく。


そして――

藻が入っていない水槽へ、湯船に浸かるように足先から入った。


少しぬるい。

でも、じんわり温かい。


何も考えずにいるとすぐに意識を持っていかれそうだ。



しばらくすると部屋の外から少し強めのセヴァンの声がした。


「寝るなよ」


コロミィはパッと目を開ける。


それがいつもの合図のようになっている。

湯船から出て、濡れたままの髪を結んだ。

そして、紙を作り始めた。


もう一つの藻が入っている水槽。

その中に現れた弱い光の粒を丁寧に丁寧に手で寄せていく。

それはまるでコロミィの手に寄っていくように集まっていた。

じっくり時間をかけて水槽の端へと集めていく。

それは分厚いたった一枚の紙になろうとしていた――



◇◇◇



セノはシカくんとともに工房に来ていた。

キヴァスとシヴの後をこっそりついてきたのだ。


工房を一周すると一ヵ所だけ明かりが窓からもれていた。

ただ、その窓が高くて中が見えない。

シカくんの上に乗っても手すら届かない。


セノはポケットから手のひらサイズの紙を取り出した。

それに召喚魔法の魔法陣を描き始めた。

シカくんはそれをとなりでじっと見ている。


描き終えた紙を洗濯物を乾かすときのように音もなく、はたいた。

すると、その魔法陣が宙へとはじき出され、地面の上で溶けるように消えた。


セノはその魔法陣が消えた地面の上に立った。しっかりと立つ。

シカくんもセノのとなりに移動すると、そこで香箱座りとなった。

二人を乗せ、透明な魔法陣がゆっくりとその窓へと浮かんでいく。



まず、キヴァスと目が合った。

セノはちょっとだけ顔を傾け、少しだけニコッとして見せた。

キヴァスは顔を引きつらせて、頭を少し引いた。


キヴァスの隣にいたシヴとも目が合う。

セノは同じようにニコッとして見せた。

シヴは反応することなく一点を見続けている。


キヴァスとシヴの視線に気づいたセヴァンも振り返った。

セノはその顔を見て、ハッとする。

セノの瞳の真ん中にセヴァンの顔が映ると、瞳の黒い部分が大きくなった。


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