セヴァンとセノ
元重装兵と元盗賊が小屋にソリで戻ってきた。
キヴァスとシヴはそのソリですぐさまセヴァンのもとに向かった。
工房、セヴァンの部屋にて。
キヴァスとシヴは入り口の脇で見慣れない銀色の物体を目にした。
「何ですか、これ?」
「ん? うん……何かあったか?」
「侵入者がいました」
「そうか」
セヴァンはそう言って、キヴァスと対面する。
「もしかして……」
「太ったオッサンだったか?」
「子供二人だったそうです。それも突然消えたと……」
セヴァンはうつむいて、こめかみを両手で押さえた。
「どっちかわかるか?」
「おそらく魔法使いかと……唐突に消えたらしいです」
セヴァンは目線を上げると、遠い目をして、何度かまばたきをした。
◇◇◇
セヴァンたちが話をしている最中。
コロミィは机から離れると、廊下へは向かわず、壁にある扉へと歩み寄った。
その扉の先は作業部屋。
扉は開けたままにして、その部屋に入った。
部屋の真ん中に進んで佇む。
ボタンに指先を掛け、おもむろに服を脱ぎ始めた。
すべてを脱ぐと、ストレッチを始める。
入念に指先から足先まで。
隅々まで丁寧に伸ばし、血を全身に巡らせていく。
髪留めを外した。
フサッと背中へと流れ落ちた髪。
それを一本一本感じながら、ときほぐしていく。
そして――
藻が入っていない水槽へ、湯船に浸かるように足先から入った。
少しぬるい。
でも、じんわり温かい。
何も考えずにいるとすぐに意識を持っていかれそうだ。
しばらくすると部屋の外から少し強めのセヴァンの声がした。
「寝るなよ」
コロミィはパッと目を開ける。
それがいつもの合図のようになっている。
湯船から出て、濡れたままの髪を結んだ。
そして、紙を作り始めた。
もう一つの藻が入っている水槽。
その中に現れた弱い光の粒を丁寧に丁寧に手で寄せていく。
それはまるでコロミィの手に寄っていくように集まっていた。
じっくり時間をかけて水槽の端へと集めていく。
それは分厚いたった一枚の紙になろうとしていた――
◇◇◇
セノはシカくんとともに工房に来ていた。
キヴァスとシヴの後をこっそりついてきたのだ。
工房を一周すると一ヵ所だけ明かりが窓からもれていた。
ただ、その窓が高くて中が見えない。
シカくんの上に乗っても手すら届かない。
セノはポケットから手のひらサイズの紙を取り出した。
それに召喚魔法の魔法陣を描き始めた。
シカくんはそれをとなりでじっと見ている。
描き終えた紙を洗濯物を乾かすときのように音もなく、はたいた。
すると、その魔法陣が宙へとはじき出され、地面の上で溶けるように消えた。
セノはその魔法陣が消えた地面の上に立った。しっかりと立つ。
シカくんもセノのとなりに移動すると、そこで香箱座りとなった。
二人を乗せ、透明な魔法陣がゆっくりとその窓へと浮かんでいく。
まず、キヴァスと目が合った。
セノはちょっとだけ顔を傾け、少しだけニコッとして見せた。
キヴァスは顔を引きつらせて、頭を少し引いた。
キヴァスの隣にいたシヴとも目が合う。
セノは同じようにニコッとして見せた。
シヴは反応することなく一点を見続けている。
キヴァスとシヴの視線に気づいたセヴァンも振り返った。
セノはその顔を見て、ハッとする。
セノの瞳の真ん中にセヴァンの顔が映ると、瞳の黒い部分が大きくなった。




