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来訪者の告白


「残りの魂の欠片を、一緒に探してほしい」

「頼まれなくても、最後まで付き合うつもりですよ」


骸骨紳士の声は、風の中でかすれたように、意識してないと聞き逃しかねない。

その虚ろな眼窩を揺らめかせながら、言葉を続けた。


「不用意に外を歩けば、トドメを刺されかねない」


ナツメは、机に置かれたランプの芯をわずかに上げた。

ランプの火も揺れ、骸骨紳士のゆらめきが強まる。


「あの魔龍が消失したのは、もう、数百年前の話ですよ。生きてはいないでしょう」

「念のためだ。誰が屠ったのかも、未だ定かではない。用心に越したことはない」



かつて、骸骨紳士は自身の魂を収めた箱を、友である魔龍に託した。

だが何者かがその龍を倒し、箱は砕け、骸骨紳士の魂は霧散した。


数百年。消えゆく意識の中で、骸骨紳士を繋ぎ止めたのは魔龍の残滓だった。



ナツメが魔龍の死地で、その魔力を吸収させて作った魔石。

そこに、バラバラになった骸骨紳士の魂が付着していた。

そして今、その一部を宿した魔石がノノアの傍にあることで、かろうじて姿を現せたのだ。


ナツメは椅子にもたれるノノアへ歩み寄り、その首筋に指を触れた。

トク、トク、と指先に柔らかな脈動が伝わってくる。


「ノノアはこのままでも、大丈夫なのですか?」

「私の影響を最も受けにくい器を選んだ。配慮はしているつもりだ」


骸骨紳士の空虚な眼窩が、眠る少女を見下ろす。


「……ただ、一つ問題がある。……離れられなくなった」


椅子に戻ろうとしていたナツメの足が、ぴたりと止まった。

出した足を戻し、探るような視線を骸骨紳士へ向けた。


「え?」


「私がこの娘の力を頼りすぎたために、私の魂がこの娘から離れられなくなってしまった。引き剥がすには、残りの魂の欠片ができるだけ必要だ」


骸骨紳士は、骨張った指先をノノアに触れる寸前で止めた。


「それまでは禍々しい魂に触れさせんためにも娘の意識を戻さん方が良かろう」


もし、ノノアが意識を取り戻して今の状態を知れば、即座に失神するであろうことは、容易に想像できる。


教室に重い沈黙が立ち込めた。



◇◇◇



ナツメは朝を待たず、旅の支度を始めた。


学長には朝にフェルディノン家への説明を。

トーノには、明日からの先生代理を。


学長とトーノ、ナツメ。その三者で情報を共有するための、三枚で一対となる魔法紙を取り出し、魔力をまとった指先を走らせる。

こちらで文字を記した瞬間、対となる相手の魔法紙にも、同じ言葉が刻まれる。


遅くても、明日の朝には確認してくれるだろう。



骸骨紳士には、移動中はノノアの中で眠ってもらうことにした。

だが、眠り続ける女子生徒を連れての二人旅は、あまりに不自然だ。


適任者は、一人しかいない。


明日の朝では、遅すぎる。

ナツメは外套を手に取り、教室を出た。


今から、伝えに行くしかない。


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