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130_商売の三方良し

「すみません、ラビリさん。早速調べて欲しい事が。」


「嫌ですわ…またヒヨリに怒られちゃうじゃない。」


「ははぁ…やだなぁ~、冗談ですよ。そんな怖い顔でこっちを睨まないで下さいよ。」


お茶会の後、僕とパフィさんはラビリさんとヒヨリさんと一緒に店長室へと向かった。

冗談で情報収集の依頼をしてみたんだけど、この時のラビリさんの拒絶は本物で、僕は背筋に氷柱をツッコまれた様な寒気を感じたのでそれ以上追及するのを諦めた。


ちなみにエレフさんは早く帰ってお料理がしたいとの事で、スキップしながら買い物へと駆け出して行った。

あの料理以外の筋力皆無で、普段は走るの大嫌いなエレフさんが。あの人料理が絡むと異常に逞しくなるんだよなぁ~。

やっぱり予算とレシピと『スキル強化芋』を渡したのがいけなかったんだと思う。きっと孤児院のみんな、エレフさんの調理風景を見てドン引きするだろうなぁ~。

さて、僕らの晩御飯が豪勢になる事が確定したところで話を元に戻そう。


「まあ、今すぐ何かを調べろとは言いませんけど、以前お願いした調査の進捗状況はどうなってますか?」


「それでしたら、順調ですわ。まず最初に依頼があったテングサについては寂れた漁村の近くにありましたので、住民にお願いして集めて貰ってそれを買い取る形に致しましたわ。

これがサンプルですわ。」


そこには赤紫のもさもさしたテングサと、それを洗って干して真っ白になった乾燥テングサがあった。

ちなみに僕もラビリさんのPCで検索して知ったんだけど、テングサって単体の海藻じゃなくて、寒天の原料になる海藻の総称らしい。いや~、調べてみるって大切だね。

テングサの乾燥方法についても前回PCで調べていたからそれを実践してくれたみたいだね。乾燥テングサの方は僕も前世でところてんを作った事があるから見覚えがある。


これをお酢と一緒に煮込んで煮汁を冷やせば寒天が出来るんだよね。

でもお菓子の材料にするためにはここから更にひと手間加えて棒寒天、粉寒天を作る必要がある。(僕は生の寒天でお菓子を作る方法を知らないから。)

生の寒天を棒状に切って冷たい風で乾燥させれば棒寒天になるし、ところてん状にした後に乾燥と凍結を繰り返した後粉々に砕く事で粉寒天に出来るんだけど、ここで問題なのはリンガが温暖で今は春だという事だ。

つまり、今リンガでどんなに頑張っても天然寒天は作れないのだ。もうこうなればエレフさんの冷凍庫と食品乾燥機を駆使して、工業寒天を作るしかない。

あの人のスキルってその気になれば食品工場も作れるんじゃないかと思ってしまう僕がいる。寒天についてはライン生産しようかな…うん、止めておこう。やると色んなモノが失われる気がして怖いから。主に常識とか。

まぁ、別に大量消費するわけじゃないし、そこまで大掛かりにする必要も無いよね。等と凄まじい勢いで思考が逸れているところに、


「その様子から察するにご満足いただけた様ですわね。では漁村の皆様とも引き続き取引を進めさせて頂きますわ。

その漁村、今年は不漁みたいでだいぶ困窮していた様ですし、このテングサが産業になれば大助かりと喜んでいらっしゃいましたわ。」


ラビリさんから飛んできた言葉に、僕は思わず言葉を漏らす。


「…そうですか。その~、ちょっと我が儘があるんですけど、いいでしょうか?」


「はい?なんでしょうか?」


僕の珍しく歯切れの悪い言葉にラビリさんが首を傾げながら聞き返す。

みんなの視線が集中する中、僕はゆっくり自分の頭の中を整理しながら言葉を紡ぐ。


「えっと~、ラビリさんは商人ですから、やっぱり安く仕入れて高く売りたいですよね。」


「えぇ、そりゃまぁ。」


「僕がこれからお願いする事はその商人としての基本から外れる事なんですけど…」


この瞬間、頭のいいラビリさんは僕が何を言いたいのかを察したみたいだ。

口元に小さな笑みを浮かべながら、先回りで返事をする。


「分かりましたわ。テングサは可能な限り高く買い取る様に致しますわ。」


「はい!ありがとうございます。」


この瞬間、僕だけじゃなくて、ラビリさん、パフィさん、ヒヨリさんからも自然と笑みが浮かぶ。


「だたし!それに見合うだけの極上のレシピを『ラビアンローズ』に提供して下さいませ!それが条件ですわ。」


さすがラビリさん。ちゃんと生産者に利益を還元しつつ、自分自身も儲ける事を忘れない。

商売の三方良しってやつをしっかり心得ている。そんなラビリさん相手に思わず挑戦的な笑みが浮かぶ。


「勿論ですよ。きっと満足のいくレシピを提供してご覧に入れます。」


「えぇ、楽しみにしておりますわ。」


僕とラビリさんがバチバチと火花を散らせていたからかな。


「…やっぱりコンヨウさんはコンヨウさんですね。」


「なるほど。パフィさんはコンヨウさんのこういう所が好きになったんですね。」


「はわぁ~!はい…いつもはダメダメな事ばっかり言ってるけど、本当は優しくて、お腹を空かせている人は見捨てられないんです。

わたしはそんなあの人を隣で支えていきたいんです。」


「パフィさん…あなた、とってもいい女よ。」


「何か言いましたか?」


「いえ、大変でしょうけど頑張ってね。」


「はい!!」


僕らの遣り取りに目を細めながら楽しそうに話すパフィさんとヒヨリさんの様子に、僕とラビリさんは気づくことが無かった。

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