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127_三枚におろします~

「うわ~~~~ん!!!ヒヨリちゃんの鬼~~!!悪魔~~~!!!」


「…行っちゃいましたね。」


「知りません!それよりエレフさん。今日は従業員へのご指導、宜しくお願いします。」


「分かったよ~。ラビリさんについては放置の方向だね~。」


「エレフさんってこういう時、結構動じませんよね。」


ヒヨリさんの脅迫に屈した僕がラビリさんにパソコン禁止を言い渡した後の遣り取りがこちらだ。

幼児退行するラビリさんを余所に、本来の目的を達するべく、僕らはヒヨリさんと共に厨房へと向かった。

ちなみに何故、臨時休業になっていたかと言えば、パティシエ全員のたっての願いで、エレフさんに指導を直接受けたかったからだそうだ。

そしてホールスタッフについても後学のために試食と意見交換を兼ねた勉強会となったわけだ。

『ラビアンローズ』の中では『スイートポテト』の製作者であるエレフさんは一種のレジェンドとなっているそうで、その人気は凄まじいの一言だとか。


僕らが厨房の扉に向かった所、


「見ろ!あれってコンヨウさんとパフィちゃんだよな。って事はあの後ろに居るのが。」


「えぇ、癒し系の象の美男子。エレフ様で間違いないわ。」


「やっべぇ~。わたし~の超タイプなんですけど~。これを機に大人の指導とかされたらどうしよ~。」


「コラ!ミシェルさん!今日はスイーツのご指導をして頂けるんでやすから、そういう態度は感心しないでやすよ。」


「タッパ殿の言う通りだ。小生達は指導を受ける立場。無礼は看過できん。」


「ブ~ブ~、二人とも堅いよ~。あんないい男見たらちょっとくらい浮ついても仕方ないじゃん~。」


エレフさんの登場に場の空気が色めき立つ。

なんか尊敬と憧れと邪な好意がエレフさんに降り注いでるんですけど、エレフさんってきっと乙女ゲームの攻略対象並みの美形なんだろうな。

扱いが学園の王子様とか貴公子とかみたいな感じなんだもん。チビ、根暗、腐れ外道の三重苦の僕とはエライ違いだ。

もしかしてエルフさんがシマトラ組のヤクザどもに一番に絡まれたのってモテない男の僻みだったりするのかな?

僕だってあれだけモテればボインのお姉さんといや~んな事出来るのかなぁ。


「また、その妄想ですか♡死なないと治らないなら一回ガスぶち込んでみましょうか♡」


「いえ、私は何も考えておりません!本当です!パフィ様!!」


命の危険を感じた僕はパフィさんに最敬礼をしながら必死に妄想を振り払う。

最近、時々パフィさんの笑顔が凄く怖いんだけどどうしてかな。清純パフィさんにとって、ロマンを追う男はみんな敵なのかな?


「ふん!巨乳なんて滅べばいいんです。どうせわたしなんてAAAですよ!このおっぱい星人が!!」


なんか誰にも聞こえない小声で世界の全てを呪っているようだけど、きっと気にしちゃいけないんだろうね。


「皆さん、お静かに!これより『スイートポテト』の製菓講習を行います。」


はい!!!


ヒヨリさんがピシャリと一喝すると場の空気が一気に引き締まる。

流石店長。幼児退行して職務放棄したなんちゃって会長(笑)とはエライ違いだ。

ピリリとした心地よい緊張感の中、ヒヨリさんが言葉を続ける。


「それでは今後皆さんの指導を行って頂ける講師を紹介します。

メイン講師で料理人のエレフさんとアシスタントのコンヨウさんです。

エレフさんはご存じの通り、『スイートポテト』の現状唯一の製作者であり優れた料理人です。

そしてコンヨウさんは『スイートポテト』の原型をエレフさんと一緒に作り上げた豊富な知識の持ち主です。

この調理場に置いて、彼等二人には私や会長以上の敬意を持って接するように。」


はい!!!


「宜しい。では講師のエレフさんからお言葉をお願いします。」


「はい~。では二言ほど〜。まず皆さんは優秀なパティシエだと思うので~、気負わず楽しんで美味しいスイーツを作る事を心掛けて下さい~。」


はい!!!

尊敬するイケメン料理人エレフさんの激励に全員の瞳に火が走る。


「それから二つ目〜。スイーツは分量や時間や手順、レシピが命です~。もし目分量とか感覚で時間を測るようなふざけた輩がいたら~…三枚におろします~。」


ハイ~~~ッ!!!!!

恐怖の料理人エレフさんの脅迫に全員の背筋に悪寒が走る。


エレフさんって料理に関しては本当に情け容赦ないからなぁ~。ちょっとでも手を抜こうものなら僕相手でもケチョンケチョンにしてただろうね。もっとも僕は食に関して手抜きなんてしないけどね。

では鬼の料理人エレフさんによる『スイートポテト』製菓講習の始まりだ~。


「こんなもんでいいですか~。エレフ先生~。」


「ミシェルさん~…今、どういう風にサツマイモの分量決めたの~…」


「エッ?大体こんな感じで~。」


「僕~…目分量でやるなって言ったよね~…ちゃんと秤があるのにどうして使わないのかな~…」


「だって~、だいたいあってるし~これくらいで大丈夫かなぁ~って…」


「…ダメに決まってるでしょうが~~!!スイーツは1グラムの重さの違いで味が全然変わってくるんだよ~~!!!人間の感覚なんて結構いい加減なんだから絶対に目分量は禁止~!!いいね~!!!」


「はい~、すみませんでした~~~~~。」


「おぉ、あのミシェル殿がタジタジだな。流石はエレフ師。」


「あの~、タカハシさんはやたら分量を量るの早いですけど、どうしてですか?」


「コンヨウ殿、小生は『絶対分量感覚』と『絶対時間感覚』を持っている。一応秤も使っているが確認の意味合いが強い。」


「なるほど、スキルにも色々あるんですね。」


………………


「よし、石窯の温度がいい具合になりやしたよ。」


「うん~。見事な火の調整ですね~。皆さん、成形したスイートポテトを窯に入れて下さい~。」


「凄いですね、タッパさん。僕は火の調整はちょっと苦手なので素直に尊敬します。」


「いやいや、コンヨウさん。そう言って貰えるとちょっと照れるでやすよ。

でも今回はあっしが調整しやしたが、ここのグランパティシエのアイザックさんの方が火の調整は上手でやすよ。」


「へぇ~、あの気難しそうなサイ獣人のパティシエさんって凄い人なんですか?」


「えぇ、それはもう。流石、この『ラビアンローズ』の長と言うだけあって、全ての調理技術が高水準。

そして難しい火の調整も『温度感覚』スキルのおかげで細かく行う事が出来る。今だって『絹甘スイート』やバター、乳製品といった新しい素材をどう使おうか思案中なのでしょう。

確かに少し気難しく見えやすが、それはスイーツに対して真剣だからであって、本当に尊敬できる方でございやすよ。」


「そうですか…(僕は自然に人の美点を褒める事が出来るあなたの方が凄いと思いますけどね。)」


…………………

……………………………


「さぁ、完成ですね~。皆さん、大変よく出来たと思います~。では食堂に運んで試食しましょう~。」


はい!!!!


エレフさん指導の元、無事『スイートポテト』の講習は終了した。

蕩ける様な甘い香りのスイートポテト達に思わず涎が溢れそうになる。

元『ゴージャスずんだ』組も無事この職場に溶け込めている様で何よりだね。

さて、ではこれから楽しい試食の時間だ。

食堂ではパフィさんがホール組と一緒に紅茶を淹れてくれている事だろう。

可愛らしいお洋服を身に纏ったパフィさんが給仕をしてくれると思うと、それだけで気分が上向く僕なのであった。

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