126_店長怒りの咆哮
「エレフさん、今日は色々と宜しくお願いしますね。」
「分かってるよ~。村の外でお料理を作るなんて久しぶりだから楽しみだね~。」
3/14紫の日(土曜日)今日はナプールで焼き芋販売をした後、『ラビアンローズ』による予定だ。
以前、ラビリさんと約束した『スイートポテト』のレシピ伝授の為、そしてあわよくば『大工』スキル持ちの人を紹介して貰う為だね。
さて、まずは孤児院に寄ってスフィーダさんを回収しないと。
「おはようございます、クズミ様。それからついでに(以下略)。」
「おはようございます。パフィちゃん、エレフさん。ついでに(以下略)。
パフィちゃん、今日は可愛らしい服装なのね。」
「おはようございます、スフィーダさん。今日は『ラビアンローズ』でスイーツ講習があるのでちょっとおめかししてみました。」
「おはよう~…パフィちゃん、この二人っていつもこんな感じなのかい~?」
「はい…もうむしろ仲がいいんじゃないかって疑うレベルですね。」
「ほっほぉ。おはよう、皆さん。今日はそちらのエレフさんも泊まって行くんじゃろぅ。」
「はい~、クズミ神父~。今日は宜しくお願いします~。お礼に晩御飯は僕が用意しますので~。」
「それは楽しみじゃのぅ。皆さん、気を付けていくんじゃぞ。」
僕とスフィーダさんが心温まる?会話を繰り広げる中、大人なエレフさんとクズミ様が和やかに挨拶をしあう。
ナニ!今日の晩御飯はエレフさんの料理だと!これは色々奮発しないとね。パフィさんもその言葉をしっかり聞いていたようで僕と同じく涎を垂らしながらキラキラした視線をこちらに向けて来る。分かってるよ。新レシピだよね。エレフさんにお願いしておくよ。
ところで今日の村の食事って誰が作るんだろう?一応みんな料理は出来るみたいだけど、エレフさんと僕がいないときは食事がワンランク落ちるってゼブラさんがぼやいてたな。
ったく、それって作ってくれる人に失礼でしょう。えっ!ゼブラさんも作る側だって。なるほど、納得だね。しかしあの人結構色々出来るなぁ~。動機がモテる為っていうのもあの人らしいし。
さて、益体もない事を考えてないで仕事しないとね。
僕らは孤児院のみんなへの挨拶を済ませて焼き芋販売へと向かう。
………
「ふぅ~、今日も無事に終わりましたね。」
「相変わらず…凄まじい勢いです…」
「君達~、いっつもこんなの捌いてるの~。僕が前に手伝った時より凄いんだけど~…」
「今日はエレフさんがいてくれたから…まだマシな方ですよ…」
「さぁ、今日は早く売り切れちゃいましたし、お弁当食べて早めに『ラビアンローズ』に向かいましょう。」
「はい!!!」×3
またしてもご飯チラつかせたら速攻で復活しちゃったよwwそう言えばエレフさんも食いしん坊派閥だったねwww
さて、今日のお弁当は…
「唐揚げにサツマイモコロッケにジャンボシュウマイ…が凍ってますけど…」
「エッ?パフィちゃん。それ本当ですか?」
「エレフさん。成功したんですね。」
「うん~!今から電子レンジで温め直すから『スキル強化芋』お願いね~。」
「二人とも…なんかだんだん行動が大胆になってきましたね。」
ふっふっふ。聞いて驚け。なんと僕とエレフさんはこの中世レベルの文明の世界において冷凍食品を完成させたのだ。
と言っても僕はアイデアを出しただけで開発したのはエレフさんなんだけどね。
あぁ、『スキル強化芋』を食べた後、周りの目を憚る事無く電子レンジを生成して冷食を温め直すエレフさんの姿に僕と同じ匂いを感じる。
この人、料理に関してだけは僕以上に自重しないからなぁ~。なんか僕らを見るパフィさんとスフィーダさんの目が凄い事になってるんだけど。
………チ~~ン
そして待つ事5分程、聞きなれた音と共に目の前にアツアツのから揚げとサツマイモコロッケとジャンボシュウマイが並ぶ。
それから付け合わせのサラダとデザートに甘いサツマイモパイ、飲み物は氷でキンキンに冷やしたハーブティー。そして主食は言うまでもなく僕の焼き芋だね。
サラダにはマヨネーズ、コロッケにはケチャップも忘れないところが、流石エレフさんだと言わざるを得ない。
「さて、では…」
「いただきます!!」×4
こうして僕らは周りの奇異の目を完全シカトし、異世界の食事に舌鼓を打つ。
「はぁ~、唐揚げの衣と醤油の香ばしさとジューシー感、コロッケのホクホク食感、シュウマイの溢れ出る肉汁。完璧ですね。」
「外であったかいご飯が食べられるなんて、凄すぎます!」
「別に保温系のスキルがあれば~、外であったかいご飯を食べる事は難しくないんだけどね~。」
「モグモグ、でも保温系のスキルは材料の劣化を抑えられないって聞きます。こんなに出来立ての様な仕上がりにはならないと思いますよ。」
「スフィーダさん、詳しいですね。なんでそんな事知ってるんですか?」
「親切のおじさんにおすそ分けして貰った事があります。」
「……」×3
今までスフィーダさんが飢え死にしなかった理由がここで判明した。この大喰らいリス、どうやら周りの男どもに餌付けされていたみたいだ。
きっとご飯を与えると美味しそうに食べるスフィーダさんの姿に下心タップリの男どもが吸い寄せられたんだろうな。今までお持ち帰りとかされなかったのが奇跡だよ。
さて、知人の行動の危うさに遠い目になる僕ら3人を余所に、当のスフィーダさんは能天気にバクバクとおかずを消費していく。
ヤベェ!このままじゃ食い尽くされる。周りは食いしん坊しかいなかったんだ!僕は急いで自分の分を確保しながら食事を再開。
………モグモグ………モグモグ………
「はぁ~、ごちそうさまでした!!」×4
僕らは食事を食べ尽くし、締めのサツマイモパイを平らげ満足感の内にごちそうさまをする。
このままお昼寝でも出来たら、どれだけ幸せだろうと思うけど、今日は『ラビアンローズ』に行かないといけないのでお預けだね。
僕は3人にバイト代を渡した後、一旦スフィーダさんと別れて、本日のメインイベントの舞台へと向かう。
「あれ?午後は臨時休業?」
「えっと?どうしたんでしょうね?」
「取り敢えず入ってみようか~。」
『ラビアンローズ』がお客さんが特に入る紫の日の午後に臨時休業。
僕らはただならぬモノを感じながらも裏口から店長室へと向かう。
「お久しぶりです。コンヨウさん、パフィさん、エレフさん。」
今日出迎えてくれたのはヒヨリさんだ。でもなんだか少し不機嫌みたいだけど。
「こんにちは、ヒヨリさん。ラビリさんはどうされましたか?」
「お嬢様でしたら、『例のスキル』を使う為の部屋におります。もうすぐ来ると思いますけど…」
ちなみに『スキル強化芋』の存在についてはヒヨリさんにはバラシていいとラビリさんに言っておいたので、別に知ってても不思議じゃない。
ただ、ヒヨリさんが何故不機嫌なのかは引っ掛かる。
「どうしました?ラビリさん。何かやらかしましたか?」
「…ちょっとこの前、お嬢様と喧嘩しまして。」
「エッ!!!」×3
ヒヨリさんからの意外すぎる一言に面食らう僕ら3人を余所に、珍しく愚痴を零し始める。
「お嬢様、例のスキルを手に入れてから初日で使い方を覚えたんですけど…」
ほぅ、僕がいる時はおっかなびっくりだったのに、流石僕以外の人には完璧超人だと言われているだけの事はあるね。
「余りの便利さとドンドン新しい事が出来るようになる楽しさにハマってしまったらしく…」
えっと、これってもしかして…
「仕事以外はずっとスキル部屋に閉じこもって検証を続けているんですよ!」
うわぁ~~~!!異世界でまさかのパソコン中毒者を生み出してしまった~~~~~~!!!!
でもおかしいな。僕のスキルじゃ確か1時間くらいしか『スキル強化』は持続されないはずだけど。
「お嬢様、時間制限を何とか伸ばせないかと検証して、『例のお芋』を一口サイズにして食べる事で持続時間を4時間まで引き延ばしてしまったんですよ!」
「…それは何と言うか。」
「筋金入りですね。」
「なるほど~、そういう手もあるのか~。僕も試してみようかな~。」
ラビリさんの行動に怒れるヒヨリさんと呆れる僕とパフィさん。ただ一人、エレフさんだけは『スキル強化芋』の検証結果に感心した様子。この人、絶対に同じことするつもりだな。
「それにお嬢様ってば、いつまで経っても寝ないから声を掛けに行ったら『今いい所だから、あと5分したら寝るから。』を2時間続けて、結局その日は1時間しか寝なかったんですよ!」
「……」×3
「それで怒鳴ったら『別にいいじゃない。私、3徹くらい全然平気よ。』って目の下にクマを作りながら言いやがるんですよ!!」
「……」×2
「ねぇ、二人ともどうして僕を見るの?」
なんか僕もそんな事言った事がある気がするけど、今はラビリさんの話だよね。なんで僕がジト目で責められないといけないわけ。
そんな僕らの様子を余所にヒヨリさんが肩で息をしながら僕に詰め寄る。
「コンヨウさん!これから暫くお嬢様に『例のお芋』は与えないで下さい!」
「えっと、そうすると調査が…」
「いいですね!!!」
「…はい。」
こうして僕はヒヨリさんの迫力に負け、ラビリさんは3日間パソコン禁止になったのであった。




