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120_狩猟部隊スキル開発講座(後編)

「さて、昨日に引き続きスキル発掘頑張っていきましょうか。」


「…コンヨウ殿。疲れている様に見えるが何かあったのか?」


3/10黄の日(火曜日)狩猟部隊スキル発掘2日目。

今回の付き添いは猿獣人の斥候ペテロさん。いつもの武士口調で気づかわしげに僕に語り掛ける。


「ちょっと、昨日がトンデモな人達ばかりだったので。」


「…そうか、何か分からないが大変だったのだな。」


「今日は少しソフトにお願いします。まずはペテロさんからですね。」


「…承知。拙者は『木登り』『望遠』『猿叫』『忍び足』『アンキ』『サイレントキリング』。分からないのは最後の二つだ。」


「……」


ちょっと待ってよ~~!あなた斥候じゃなかったの?どう見ても暗殺者じゃないの。

『暗器』に『サイレントキリング』って。しかも『忍び足』!これってあれだよね!音もなく近づいて必殺○事人する奴だよね!

僕はいきなり体力をガリガリ削られながら、スキルの説明をする。


「…隠し武器を使った暗殺…拙者も驚きだ…」


「ですよね。試しに僕の背後に立ってくれますか?」


「…ん?こうか?」


アッ、全然足音しなかった。しかもペテロさんがさりげなく僕の肩を叩くまで全く気配に気づけなかったよ。

これってあれだよね。『この肩にある手でお前の頸動脈を断ち切る事も出来たんだぞ。』ってやつだよね。

僕、その気になればペテロさんにコロコロされていたわけだね。いきなり怖いからやめて頂けますか!ホントに!

さて、次行こう。


「では、レイドさん。お願いします。」


「よっしゃ、俺の番じゃきぃ。」


返事をしたのは豪快で大柄な獅子獣人のレイドさん。本業は近接専門の大剣使い。


「俺のスキルは『大剣術』『剛力』『ジゲンリュウ』じゃきぃ。ところで『ジゲンリュウ』ってなんじゃきぃ?」


うわぁ~、『示現流』の大剣使いって。完全に二の太刀いらず、敵は一撃で殺すマンだよね。

バックルさん並みの圧倒的な脳筋にドン引きしながらスキルを説明する僕。


「ほう、敵を一撃で倒す剣術じゃきぃ。それは如何にも俺好みじゃきぃのぅ。」


「でも大剣が無いから試すのは…取り敢えず普通の剣でやってみますか。」


「そんじゃ行くじゃきぃ!!…せいッ!!!!!」


レイドさんの強烈な袈裟斬りが太さ1m近くある木を斜めに切り倒す。

いや、普通剣って木を切れるように出来てませんから!本当に次こそはソフトにお願いしますよ。


「では、ハチェットさん。お願いします。」


「はい~!おいらですね。よろしくお願いしますです~~!!」


若干ビビり気味で現れたのは、少しばかり小心者過ぎるキツツキ獣人のハチェットさん。手斧を使った近接要員。

ハチェットさんは僕の質問にビクビクしながら受け答える。


「おいらのスキルは『斧術』『投げ斧』『剛腕』『バーサーカー』です~!おいら『バーサーカー』って何の事か分からなくて使った事がないんです~、はい!」


…あのさぁ~、僕の話聞いてた!なんでこのタイミングで『バーサーカー(狂戦士)』なんてヤバそうなスキル持ってくるわけ。もう胃が痛いんですけど。

でも聞かれたからには答えないといけないしなぁ~。まぁ説明して試す、試さないは本人に任せるか。


「…これ使えばおいら強くなるんですよね~!」


「はい、でも強くなってる間は理性を失うと思いますけど。」


「……ちょっと試しても~!」


「はい…取り敢えず暴れまわっても平気な森の中でお願いします。」


……ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!ドガッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!バキッ!!


「ハァ~ハハハハァハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア~~~~!!!この腐れモンスター共がァアアアアア~~~~~~~!!!

全員おいらの斧の錆にしてくれるわァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!アァ~~~ハハハッハハハッハハハハハハハハハハァアアアアアアアアアアアアアアアアァアア~~~~~~~~~!!!!!!!」


もうヤダ、この人達。なんで僕がちょっと助言するだけでこんなヤバい奴らに変貌するわけ。

さぁ、あの人に関しては放置だ。恐ろしく強くなってるみたいだし死ぬことはないだろう。よし、次行こう。


「では、スパーダさん。お願いします。」


「うむ…」


こちらの口数が少ない虎獣人が剣士スパーダさん。卓越した身のこなしと技が売りの前衛担当。

僕の質問に小声でポツポツと語り始める。


「『見切り』『剛腕』『トウジュツ』『イアイ』の4つだ…後の二つが分からない…」


今度は武士か…ペテロさんは性格が武士だったけど、こっちは能力が武士だね。『刀術』に『居合』だもんな。

でも『刀術』が分からないって事はもしかしたらこっちじゃ刀は一般的じゃないのかな。こりゃ武器探しの方に苦労しそうだ。

僕はスキルの内容と武器の件について身振り手振りを交えながら説明する。スパーダさん、厳つい顔で黙っているけど目つきが子供みたいにキラキラしてるんだもん。刀は男のロマンだし、つい説明にも熱が入ってしまった。


「なるほど…暫くは剣で代用だな…せっかくなので『居合』を試してみよう…」


等と呟きながら、スパーダさんがおもむろにレイドさんが切り倒した大木に近づく、そして…


スパッ!!…バラッ…バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ!!!


嘘でしょ!!これもう漫画の世界だよね。剣を鞘から抜いて一振りしたと思ったら倒木が薪に早変わり。

一体あの一瞬で何回斬撃放ったの?おとなしめだと思ったのにこの人も相当ヤバかった。しかもまだ武器が万全じゃないからね、これ!

あぁ~、疲れて来た。これで最後だ!


「では、ラスト。ランツェさん、お願いします。」


(コクン)


暫しの沈黙…全く喋ってくれない鹿獣人の槍使いランツェさん。

もしかして今度は完全無口…いや、良かった。ちゃんと口を開いてくれた。


「『槍術』『足さばき』『剛腕』『ゲイ・ボルグ』…最後…分からない。」


…………………ザッケンなよ~~~~!!!!ゴラ~~~~~~~~ッ!!!!!

なんで最後に特大級の地雷ブッこんでくんだよ!!!いきなりファンタジー色全開にしてんじゃねぇよ!!!

『ゲイ・ボルグ』ってあれだろう!投げれば30の鏃になって降り注ぎ、突けば30の棘となって破裂するっていうあの魔槍だろ!!その他にも複数の敵に残らず突き刺さるとか、必ず命中するとか、奇妙な軌道で突き刺さるとか挙げていったらキリがない。これ、本当に『ゲイ・ボルグ』だったらバランスブレイカーもいい所だよ!どう収集つけてくれんだよ、これ!!

取り敢えずは…説明して試してもらうしかないか。


「…と言うわけです。」


(コクン)「試してみる…」


ビュン!!!……バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキッ!!!!!


予想はしていた。ランツェさんが槍を投げてスキルを使った瞬間、槍が30本に分裂して周囲の森の木々を薙ぎ倒す。あ~ぁ~、そこら中倒木だらけだ。

この木は…家の壁材にでもさせて貰うかな。でも普通の槍で伝説の魔槍を再現したわけだから、当然槍の方が耐えきれずに崩壊する。

要するにランツェさんの能力は単発式のミサイルみたいなものだね…十分脅威だわ、これ。


(コクン)「うまく行った…」


「そうですね、ランツェさん。倒した木はスミスのジジイの所にでも持ち帰りましょう。」


「…コンヨウ殿、心中察する。」


こうしてペテロさんの憐みを一身に受けながら、僕は狩猟部隊の皆さんと共に木材を運ぶことでこの日一日を費やしてしまった。

結果残ったのは、木材置き場に大量のストックと、筋肉痛になった僕と、悲鳴を上げるスミスのジジイの姿だった。

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