39話 王国⑥
王宮に戻ってロレッタの部屋に入った。ロレッタの前に俺、アリア、ルナが集まった。
「改まって話って?」俺が問う。
「私ね。ミランダへ帰ることになったの。昨日パパと少し話たの」
昨日、カリストの地下牢へ行くときに領主と話があるといっていたな。
「でも、またなんで急に?」
「私ね、ミランダの領主になることに決めたの。そのためにミランダに戻ってパパの近くで仕事を覚えたり領主になるための勉強をしたりするの」
言葉に詰まりながらも続ける。
「今回リエトさんたちと旅をして、いろんな人に出会った。私の知らない世界がたくさんあるんだなって思ったの。いまだにおどろの谷みたいに魔王軍に脅かされている地域だってたくさんあるわ。 自分の手の届く範囲だけでも守りたい。わたしにもなにかできることがあるんじゃないかって思い始めたの。私は生まれ育ったミランダを守りたい。だから一緒に旅は続けられない」
下を向きながらロレッタは言った。朝からなにか浮かない表情をしてたのはこのことが原因だたのか。
「わかった。ロレッタの決めたことだ。おれがどうこういうことじゃない」ロレッタの頭を優しくなでた。
アリアはすでに目に涙をうかべていた。
「でも、旅の途中で本当に助けが欲しかったらいってね。私いつでも駆けつけられるように準備しているから」
「今までありがとう」ロレッタが俺のそばにきたかと思うとほっぺにキスをした。
そして、顔をみるといつものいたずらをするときの顔に戻っていた。
今のキスは……。
「まだ数日滞在するわ。永遠の別れじゃないのよ。アリア泣かないで。明日も楽しむよー」
それからロレッタと俺たちは国のいろんなことろを案内した。
かつて、ミランダをロレッタが紹介したように、俺もこの街が好きみたいだ。
「はあ疲れた。今日もいろんなところ歩いたし、握手も求められ初めて対応で大変だった」
明日は式典もっと大変なんだろうな。
夕暮れ時にひとり、王宮の屋上へ向かった。ここは町全体が見渡せて、副隊長のときも息抜きにたびたび訪れていた。
ちらっと人影がみえる。だれか先客がいたのか。
俺の足音にきずいたのか。黒髪のサイドテールの女の子は振り向いた。
「リルル。戻ていたのか」
俺の顔を向くなり、にこっとほほ笑んだ。
「リエちゃんのお気に入りの場所でしょ。なにかあるとすぐにここにくるでしょ」
「副隊長のときもたびたびここでリルルとこうやって話をしたっけ。悩みってわけじゃないんだけど、明日の式典での願い事を決めかねているんだ」
「あらあら、ぜいたくな悩みね、英雄さん」
ふふふとリルルが笑う。
「茶化すなよ」
「自分の思うままでいいんじゃないかな。いままで自分がみて、きいて、感じたこと。その中に答えがあるはずよ。
って私がえらそうなこといえないんだけどね」とリルルはてへっと舌を出して見せた。
「俺は……」
「ねえ、なんでリエちゃんは王宮の部隊に入隊したの?」
俺は今までだれにも理由をはなしてこなかった。ずっと一緒に暮らしてきたリルルにさえもだ。
でも話していい時が来たのかもしれない。
「俺の名前はリエト=フリーマン」
リルルははっとする。この国では一部の貴族をのぞきファーストネームしか持たないのが通常だ。
20年前この国を守って戦い魔王を七つの魔石に封じ込めた勇者リベルト=フリーマンの子だ。
リルルは言葉を失っていた。まさか勇者に子供がいて、しかも目の前にいるとは思わないだろう。
「最後にあったのは4歳か5歳のときだったから、父の記憶はあまりない。王宮の仕事が忙しくてあまり家にかえってこなかったからね。ただ父は困っている子がいたら助けなさいと幼い俺に口々にいっていたことだけは覚えている。俺が入隊したのは、父が成し遂げられなかった魔王軍討伐と魔石をとりもどす。このためだ。そしてこの国全土に安心を取り戻したい」
「今言ったことはみんなには内緒だよ」俺は自分の口の前に人差し指をもてきた。
「そうだ。リルル。願い事決まったよ。ありがとう」
「えーなになに。教えてよ」リルルの言葉を背に。
「明日のお楽しみ」というと俺は去った。
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