17 「聖女様」
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「で? この人は誰なんですか?」
「知りまふぇん」
「知らねえ筈ないでしょ!!」
「まあまあ、落ち着いて下さい」
「なんで貴女はそんなに落ち着いてるんですか!! この泥棒猫!」
現在キョウカ様は怒ってらっしゃる。
俺の腫れた頬がそれを証明しているだろう。
横のシスターは落ち着きはらった態度で凛と座っているが、こいつ……幽霊だよな?
「フォグさんは私の事を本当に知らないのです。だから責めないであげて下さい。キョウカさん」
「な、なんで俺の名を……」
「私の名前も……」
「勿論知っていますよ。私はあなた方が来る前からこの家にいましたから。そして、あなた方が恋人だという事も、キョウカさんが転生者? だという事も知っています」
「そんなの嘘よ! ど、どうせフォグさんが喋ったんでしょ!?」
「俺はそんな事誰にも話てねえよ!」
「では、これならどうでしょう。キョウカさんがお風呂に入りながら一人で呟いていた事を当てたら、私の話を聞いてくれますか?」
「ふんっ、当てられるもんならどうぞ!」
「キョウカさんは確か、フォグさんの好きな所と嫌いな所をお風呂で呟いていましたね? 嫌いな所は……スケベな所、変態な所、童貞を拗らせてる所でしたよね?」
「な、なんでそれを……」
酷い……そんな事思ってたのかキョウカは……。
全部否定出来ないのが悔しい!!
「では好きな所は……優しくて心が広い所、かっこよくて純粋な所。最後は、おっ──」
「あぁぁっー!! もう良いです!! もうやめてください!!」
「なんでだよ? 最後の好きな所教えてくれよ」
「いいんですよ!! 貴女も絶対言っちゃダメですよ!?」
「ふふ、分かりました。では、私のお話を聞いてくれますか?」
「聞きます聞きます! なんでも聞きます!」
キョウカの奴、なにをそんなに慌ててるんだ?
最後の『おっ』からの続きが無性に気になる……。
「では、お二人に聞いて頂きます……突然ですが、私は隣国リラール教国の"聖女エレナ"でございます」
「リラール教国の聖女?」
キョウカは、誰それ? という表情で俺を見ている。
リラール教国の聖女エレナか……え?
「嘘つけー!? 聖女つったら、リラール教国の象徴みてえな人だぞ!! 神から与えれた奇跡のスキルを使い、病人を数多く救ってきた人だ! そんな崇高な聖女がこんな所に居るわけねえ!!」
「……信じられないのは分かります。では、少しお待ち下さい」
聖女エレナを名乗る女性は徐に椅子から立ち上がると、キッチンに向かって歩き出していく。
俺とキョウカが不思議な表情でその行動を見ていると、戻ってきた女性の手には包丁が握られていた……。
「ちょ、ちょっと待て! 何をする気だ!?」
「え!? え!? あっ!!」
俺とキョウカの動揺をよそに、包丁を持った女性は腕の裾を捲ると、自らの腕を切りつけた。
「ぐっっ!」
「な、何してんだあんた!? おいキョウカ! この人を止めるぞ!!」
「は、はい!! 早まっちゃダメですよ!」
突然の自傷行為に驚きつつも、女性の行動を止めるため俺とキョウカは駆け寄ろうとする。
だが、腕から血を垂れ流す女性は包丁を持った手で俺達を制止し、ゆっくりと喋り出した。
「だ、大丈夫です……これを見て下さい」
女性の言葉の後に、ぱっくり開いた傷口が微かに光だす。
俺とキョウカは、その光景を唖然と見ていた。
「嘘だろ……」
「傷が治った……」
それは奇跡だった。
確かに、体力を回復させるスキルラーはごく稀に存分するらしいが、ぱっくり開いた傷口を治してしまうスキルを持ったスキラーは、一人しか存在していない。
それは……聖女だだ一人。
リラール教国の聖女というのは、今で五代目の筈だ。
歴代聖女達は奇跡の力で多くの苦しむ民を救ってきた。
聖女の力を持った女性は、歴代の聖女が亡くなる度に現れるらしい。何処からどうやって現れるのかは分からないが、そうやって奇跡の系譜は続いてきた。
そして、今俺の目の前で優しげに微笑む女性こそ……。
紛れもなく、五代目の聖女──エレナだった。
「これで信じて頂けましたか?」
「はい。これまでの失礼をお許し下さい……エレナ様」
「エレナ様などおやめください……エレナで良いですよ」
「呼び捨てなど恐れ多いです……」
「ちょっと待って下さい! この人、本当に聖女なんですか? 私、聖女が良く分からないんですが、偉い人?」
「馬鹿野郎! 偉いとかそんな次元じゃねえ! 聖女様はリラール教国どころか、世界中が慕う崇高な人だ。世界中が聖女様に助けを求め、それを数多く救ってきた人だぞ! お前も早く頭を下げろ!」
「本当におやめください! 今ここにいるのはただのエレナです!! 私は! そんな崇高な者ではないんです……」
俺の言葉に反応したのか、ポロポロと涙を流し出す聖女様。
これ……俺が悪いの?
「あーあ。フォグさんが泣かしたー! よしよし……大丈夫だよ」
キョウカが涙を流す聖女の頭をポンポンと撫で、慰めている。
なんと恐れ多い事をしているのかと、怒鳴りそうな自分をなんとか抑えた。
聖女様を泣かしてしまった俺。
その聖女様を不敬にも子供のように慰めるキョウカ。
こんな所リラール教国の国民に見られたら、袋叩きの上に市中引きずりの刑間違いなしだ……。
「せ、聖女様……どうか泣き止んで下さい! なんでも致しますから……」
「うぅぅ……では、私の事はエレナと呼んで下さい!! それに敬語も無し! 後、仲間にしてくれたら許します!!」
「……は? 仲間? それは一体どういう事でしょうか聖女様?」
「ほらっ! まだ聖女様って言ってる~、うぅぅっ」
「フォグさんっ!! いい加減にして!」
な、なんなんだよ二人して……。
「エ、エレナ……これでいいか?」
「……うん! それでよし!」
「良かったね! エレナちゃん!」
エレナちゃんって……いつからそんな仲に?
「エレナちゃんはいくつなの?」
「今16歳だよ、キョウカちゃん!」
「えっ、私と一緒じゃん! 奇遇だね~!」
「ね~! じゃあ、私達仲間だよね?」
「うん! よろしくねエレナちゃん!」
「いやいや! 勝手に話を進めるな! それに16歳ってなんだ!? 16でそのおっぱいは発育良すぎませんか!? それも神の奇跡ですか!?」
「そう言えば、エレナちゃんどうして此処に? それに、私達が来る前からこの家に居たって言ってたよね? どういう事?」
無視かよ……まあ、それは俺も気になるから黙って聞くけど。
「それはね……こういう事だよ!」
エレナはすっかり元気になった様子でそう言うと、忽然と姿を消してしまった。
「えっ!? エレナちゃんが消えた!!」
「まさかスキルか?!」
俺達がビックリした様子で辺りをキョロキョロしながらエレナを探していると、クスクスと笑いながらエレナは姿を現した。
「ふふっ、驚きましたか?」
「えー!? もうっ、ビックリだよ! もしかしてスキルの力?」
「ええ、私は『ステルス』というスキルを持っているんです! このスキルなら察知スキルを持った相手からでも気配を隠す事が出来るんですよ! 他にも傷や病気を治す事が出来る『完全治癒』と、精神と体力を回復させる『回復の極み』というスキルを持っています! こんな私を仲間に出来るなんて、凄くお得ですよ!!」
「凄いよエレナちゃん! エレナちゃんみたいな凄い人が仲間だったら心強い! ね、フォグさん!」
「あ、ああ……お前も大概だけどな」
確かに、凄いスキルの持ち主だ……。
ステルスなんて聞いた事ないが、気配を完全に遮断でき察知スキルでも発見不可能だと、間違いなくダブルSランクスキルだろう。
完全治癒と回復の極みは、聖女だけが持つダブルSSランクスキルに違いない。
怖い……俺の前に化け物スキラーが二人。凄く怖い……。
「そうだ! エレナちゃんも私達と一緒に冒険者になろうよ! それで、三人で世界中を自由に旅するの! どう? 良くない?」
「世界中を自由に旅……うん! 凄く良い! 私も冒険者になる!」
「やったー! じゃあ、明日早速ギルドに行って登録しよ!」
「うん! 宜しくね、キョウカちゃん!」
「いや、待てよキョウカ。まだエレナからなんで此処に居たのか事情を聞いてない。話はそれからだ」
「そしたら今日は私の部屋で寝なよ! 色々お話しよ!」
「私もキョウカちゃんとお話したい!」
「あれ? ねえ、聞いてる?」
「じゃあお部屋行こっか!」
「行く行く!」
仲良く二階へ上がって行くキョウカとエレナ。
バタンッと、閉まる扉の音が無性に寂しく感じた。
母さん、父さん……僕は要らない子なのでしょうか……。
早くエロ回が書きたい……。
R15ギリギリを狙って、内角低めのストライクを投げる! アウトになったらすまん。




