16 「見えぬ者」
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「やったー! 自分のお家とお部屋だー!」
不動産屋での契約を終え、早速庭付き二階建ての住居へ入居した俺達。子供のように家中を走り回ってはしゃぐキョウカは、見ていて微笑ましかった。
「ほら、キョウカ! 昼飯食うぞ~」
「はーい!」
お昼と夕飯は、豚草亭からテイクアウトしてきた物だ。
今日は拠点を得た祝いだし、贅沢してもバチは当たらんだろ。
明日からは自炊して節約しなきゃな。
「所でキョウカ。これからどうするんだ? 女神様からは、スキルを使って悪巧みしてる連中をなんとかしろって言われてるんだろ?」
「うーん。とりあえずは、このまま冒険者を続けていきたいですね。なんとかしろって言われても、何の手掛かりも無いですし……それに、冒険者なら世界各地を旅出来るんですよね? それなら、旅をしながら情報収集が当面の目標ですかね」
「そうか……まあ、旅をするのはまだ先だぞ?」
「え、そうなんですか?」
「ああ。旅をするなら最低でも後一人仲間が欲しいし、ランクもCに上げないと別の国に入るのが厳しいからな」
「仲間は分かりますが、ランクを上げないと別の国に入れないんですか?」
「絶対に入れない訳じゃないが、あまり低いランクで世界各地を飛び回る冒険者はいないからな。最悪、スパイの疑いで牢屋行きもありえる」
「それは嫌です! じゃあ、ランク上げないとですね。次のランクに上がる条件ってなんですか?」
「フフッ、これはちょっと辛いかもな」
「な、なんですか!? 早く言って下さいよ!」
「冒険者ランクCへのランクアップ条件は……危険度Cのモンスターを十体討伐する事と、雑用依頼を100件こなす事だ!」
「モンスターは分かりますが、雑用依頼100件ですか!? 私まだ一件しかやってない……」
「だから皆、ルーキーの頃に雑用依頼をひたすらこなすんだ。因みに俺はとっくに100件超えてるからな。へへッ」
「ずるーい! あっ!? まさか手伝ってくれますよね?」
そんな上目遣いされてもな……こればっかりは……。
「多分、無理だ」
「えっー!? なんでですか!? 鬼! 人でなし!」
「そんな事言われても無理なものは無理。雑用依頼はたいてい一人分の依頼だ。たまに複数人でやる依頼も有るが、それはルーキー優先にされちまう。まあ、早くルーキーを卒業した弊害ってやつだ。腐らず頑張れ」
「そんな~。じゃあ、私が雑用依頼してる間フォグさんは何を?」
「俺? あー、そうだな……鍛練と、たまにモンスターを狩るのと、シェリーさんの所へ通いつめてシェリーさんの所へ通いつめる」
「なんでシェリーさんが二回出てくるんですか!! 私達は恋人なんですよ!? 浮気だ浮気!」
「人聞き悪い事言うなよ……別に、酒場に行くだけじゃねえか」
「どうせ、スケベな顔してシェリーさんを見て喜んでるんでしょ!!」
「違いない」
「す、素直……もうっ! 酷いです!」
あら、怒って出てちゃった。飯はしっかり空だが……。
多分ギルドに行って雑用依頼でも受けに行ったんだろ。
……しょうがねえ、風呂の準備でもして待っててやるか。
夕方──
すっかり日も落ち、町の住民は帰路につく頃。
泥だらけになったキョウカが疲れた顔をして帰ってきた。
「ど、どうした? なんで泥だらけ?」
「フンッ!」
「なんだよ……まだ怒ってんのか? そうだ、風呂の準備出来てるぞ」
「え? フォグさんがやってくれたんですか」
「雑用依頼は大変だから、疲れてると思って」
「ありがとうございます……酒場には行かないんですか?」
「行くならキョウカと一緒に行くさ。まあ、今日は慣れない仕事したんだ。ゆっくり休め」
「そういう所がズルいんですよ! 怒ってた私が馬鹿みたい……」
「ハハッ、なんなら肩も揉んでやるぞ? 勿論、おっぱ──」
「結構です!!」
「言わせろよ……」
その後、風呂から上がったキョウカは、夕飯を食いながら今日の依頼の愚痴を垂れ流していた。
迷子の猫が見つからなくて大変だったとか、子供のお守りを任されたら泥遊びで泥をかけられたとか。
だから泥だらけだったんだな……。
夕飯を食い終わって二人でどうでも良いことを語り合い。
あっという間に寝る時間が来てしまった。
二階に上がり、それぞれの部屋へおやすみを言って入る。
なんとも平和な日常だ。
だが、この日から平穏な日常は崩れさる。
その足音は、スヤスヤと眠る俺の元へやって来た。
「出ていけ~、出ていけ~」
暗い女の声が部屋で響き、俺の眠りを妨げた。
「……ん? なんだ……? キョウカか?」
最初は寝ぼけたキョウカがやって来たのかと考えた。
だけど、部屋を見渡しても誰の姿も見えない。
幻聴かと思い再び眠りにつこうとした。
しかし──
「この家から出ていけ~。さもないと呪うぞ~」
後から考えれば、なんとも演技臭い言い方だった。
でも、その時の俺は暗闇の中と、誰もいない筈の部屋から女の声が聞こえる恐怖で、そんな事気にする余裕も無かったんだ。
「誰だ!? 出てきやがれ!!」
勇気を出して叫ぶも、その後から女の声はピタッと聞こえなくなる。恐怖に震えながら、毛布を被って眠れない夜を過ごした。
次の日の朝、寝不足な俺の顔を見たキョウカが、心配そうに大丈夫か聞いてきたが、女の声の事は言えなかった。
いらん心配をかけたくなかったのも有るが、まだこの時は幻聴の線も捨てきれていなかったのだ。
だがその晩も、女の声は俺の部屋に響いてしまった。
「出ていけ~、出ていけ~」
「……またか!? 一体誰なんだ!?」
そして次の日も。
「出ていかないと呪うぞ~」
「……勘弁してくれ!!」
その後、そんな日々は一週ほど続いた。
流石に精神的に限界が来た俺は、不動産屋に乗り込んでどういう事か聞きに行ったが、答えは『わからない』、それだけだ。
この事から、俺はある結論にたどり着いた。
『騙された』、という事だろう。
きっと不動産屋のオヤジはこの家が幽霊屋敷だと知っている。
だから一年20万エーンの格安で貸せるんだ。
騙されたと分かり、腹わたが煮えくりかえる思いで一杯だった。だが俺は決心した──
幽霊なんぞに負けるものかと……。
それから一週間、俺と幽霊の戦いは熾烈を極めた。
出ていけと呟く幽霊に怒ってみたり、突然笑い出してみたり。
あの手この手を使い幽霊と向き合ったんだ。
しかし、幽霊の方も負けじと対抗してきた。
棚から物を落としたり、買い込んだ食事を消したりと、どうにか追い出そうとする執念が感じられた。
そんな幽霊に、俺は幽霊を撃退出来るというとある情報を手に入れ、実行する。
「松葉崩し! 絞め小股! 碁盤攻め!」
そう……エロい事を言って呆れてもらう作戦だ。
「……? 出ていけ~」
ダメだった。
幽霊に48手は難しかったようだ。
そんな攻防が2、3日続いた頃。
俺と女幽霊に転機が訪れる。
その日の俺は色々限界だった。
シェリーさんの酒場へキョウカと行き、胸の谷間を堪能したのは良かったが、帰ったらキョウカと二人きり。
いくら16の小娘とはいえ女は女だ。
ムラムラした気持ちが限界にきていたんだと思う。
そのよる見た夢は、キョウカとシェリーさんに、ギルドマスターのエマさんの三人が俺を囲んでパフパフしてくれるという夢。
A、C、Eカップと様々な形と大きさのおっぱいが俺を包んでくれるんだ。幸せの絶頂だった。
そんな時、いつものように聞こえた幽霊の声で起こされた俺は、何かが決壊し、覚醒した。
「出ていけ~、出ていけ~」
「そこか!!」
覚醒した俺は、見えない幽霊が何処にいるか分かってしまった。女の声だったのも覚醒した理由かもしれない。
ムラムラの限界だったんだよ……。
ベッドの横に立っているであろう幽霊の手を掴みベッドへ押し倒す。今考えると、幽霊に触れるのはおかしいな。
「きゃっ!」
いつものおどろおどろしい声ではなく、女らしい悲鳴。
それが俺のダイナマイトを点火させてしまった。
「ここだ!!」
「えっ!? あっ、だめ……」
幻の秘宝であるおっぱいを鷲掴みし、揉みしだく。
幽霊の甘い吐息が、更に興奮を高める。
「ここか!! ここが良いのか!? こうなったら……幽霊でもなんでも良い! 最後までいてまえ!」
上半身の服を脱ぎ去り、戦闘モードに入る。
俺の妄想力が産み出した産物なのか、見えない筈の幽霊はシスターの格好をした碧眼の女性の姿をしていた。
エロいシスターとか、堪らんですたい!
「や、やめましょ? 私、消えますから!」
「今さらなにを……逃げられると思うなよ?」
顔を赤らめたシスターの服に手をかけ、脱がそうとしていると、何故かシスターの表情が恐ろしいものを見たような、ひきつった顔に変わっていた。
「なんだ? 鬼でも見たか? そうやって油断させて、逃げようとしても無駄だぜ。へへッ」
「違うんです! 後ろ、後ろに……」
「たく、なんだよ……うあぁぁぁっ!!」
そこには鬼がいた。憤怒の表情でこちらを見つめ、天使の輪どころか、殺傷するために作り出された光の輪を、放とうとしている鬼が……。
「フォグさん? その女は誰ですか? まあ……殺すけど」
こうする予定は無かったが、ヒロインがどんどんヤンデレになっていく……。




