15 「家を借りようと思います」
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次の日の朝。
鳥達はさえずり、おばちゃん達が会議を始める時間だが、俺の頭は寝不足が祟ってシャキッとしない。
キョウカのお願いで一ヶ月の恋人を始めたはいいが、そこから変に意識してしまい同じ部屋で寝るだけで二人してドキドキしてしまったのだ。
勿論、営みはしてないぞ。
お互いの事を知るための会話を勤しんでいただけだ。
「フォグさん。大丈夫ですか? 昨日は付き合わせちゃってごめんなさい。しかも、私が先に寝ちゃったし……」
「気にすんな。寝る子は育つって言うしな」
「どこ見て言ってるんですか!?」
「フッ、今日はギルドに行く前に不動産屋に行ってみるぞ。おっさんの話が本当なら格安で借りれるかもしれんしな」
「鼻で笑ったな!! うっー! 覚えてろ! ミルク一杯飲んでやるんだから!!」
「飲むなら俺のミル──」
「行きますよ!!」
「あ、ああ……言わせろや」
そんな馬鹿なやり取りをしつつ、俺達は朝の支度を済ませ不動産屋へと向かった。
「──いらっしゃいませ!」
おっさんから渡された地図を頼りにたどり着いた不動産屋の扉を開けると、人が良さそうな恰幅の良いオヤジがもみ手でこっちにすり寄ってきた。
不動産をやってるだけあって金は持ってそうだ。
その分、頭の毛をだいぶ散らしているが……苦労したんだね。
ギルドのおっさんとはきっと、ハゲ友なんだな。
「お客様、お家をお探しですか? それとも店舗ですか?」
「ええ。俺達は冒険者なんですが、最近中堅ランクまで上がったからそろそろ拠点が欲しいと思ってまして」
「そうですかそうですか。それではあちらにお掛けください。とう不動産オススメのお家をご紹介致します」
「あ、因みにギルドのおっさんに言われて来たんですが……なんでも格安で借りれる物件があるとか?」
俺が言葉を発した瞬間、不動産屋のオヤジは少しだけ顔をひきつらせたような気がした。ギルドのおっさんに反応したのか、格安物件に反応したのかは分からないが……。
「アイツの紹介ですか……なら、紹介する物件は一つですね。時間がありましたら、直ぐにご案内致しますが?」
「是非お願いします。おい、キョウカ! 行くぞ」
「ふぁ、ふぁい! ご、ごちそうさまでした」
いつの間にかお茶とお菓子を貰っていたキョウカを呼びつけ、案内してくれる物件に不動産屋のオヤジと向かった俺達。
不動産屋のオヤジの顔がやけに真剣なのが、何故か心に引っかかった。
商店街を抜け広場を通りすぎ、住宅街へ入る俺達。
不動産屋のオヤジは迷いもせずに目的地へ向かっていた。
やがて、一軒の住宅の前で立ち止まる不動産屋のオヤジ。
そこは高級住宅街で、領主が屋敷を構える区画でもあった。
「さあ、こちらです。少し中の様子を見て来ますんでお待ち頂けますか?」
「あ、はい……」
中の様子? さっきからなんか引っかかるな……。
案内する物件に入って行く不動産屋のオヤジを、俺が怪しんでいると、テンションが高い声が隣から聞こえてきた。
「凄いですよフォグさん! 庭付き二階建ての一軒家ですよ! ここが20万エーンで一年借りれるとか凄くないですか!?」
「ま、まあな……」
だから怪しんでるんだが……。
まあ、中を良く確認すれば分かるだろ。
「キョウカ。中に入ったら鑑定眼を発動させて怪しいものがないか確認してくれるか?」
「良いですけど……なんでですか?」
「念のためだ。何か欠陥が有るかもしれないだろ? こんな立派な家が格安なんて怪しくないか?」
「まあ、確かに……」
「お待たせしました。お客様どうぞこちらへ」
そんな事を話し合っていると、不動産屋のオヤジが玄関から俺達を呼ぶ。俺達は少し緊張した顔をして、一軒の高級住宅へ入っていった。
「どうですか? こちらの物件はまだ新しく、家具も付いています。薪で沸かす風呂もありますし、寝室も四部屋と十分な数です」
「確かに俺達には十分過ぎる家ですね。この家、本当に20万エーンで一年間借りられるんですか? 一ヶ月20万じゃなくて?」
「勿論、一年20万でけっこうです。実は私、こう見えて元冒険者でして。冒険者の酸いも甘いも知っているからこそ、後輩冒険者達のお手伝いが少しでも出来ればと思っていましてね。慈善事業みたいなものですよ、ははっ」
俺の質問に饒舌に語る不動産屋のオヤジ。元冒険者なのはビックリだが、本当にそれだけでこんな立派な家を格安で貸そうと思うのだろうか?
まあ、金持ちの道楽と考えれば少し納得だが……。
「そうですか……キョウカ、どうだ?」
キョロキョロと家の中を確認しているキョウカへ問う。ただ見ているだけに見えるが、鑑定眼で確認している筈だからな。
「何もありません……じゃなくてっ! とっても素敵な家だと思いますよ!」
「そうか……じゃあ、折角だし借りようかな」
「そうですか! では、店に戻って契約を済ませてしまいましょう。契約が終われば直ぐにでも住んで頂いて結構ですよ」
安心したような表情の不動産屋のオヤジ。それが怪しさを更に強調しているが、キョウカの鑑定眼の結果は白。
という事は、本当に慈善事業で格安で貸しているのか……まあ、なんでそんな物件に誰もくいついていないのか気になる所だが、ただ単にラッキーだったのかもな。
不可解な事は多々あるが、俺達は折角の機会だと思いこの家を借りる事にした。
家具も備え付けのため、用意する物も特にない。
住んでて必要になればその時買えば良いだろうし。
「良かったですねフォグさん! 凄く素敵な家ですよ。 なんと言ってもお風呂があるんです! お風呂入りたかったんだよな~。お風呂沸かすのお願いしますねフォグさん!」
「あ? 風呂なんてキョウカのスキルで沸かすか、なんだったらお湯ごと用意出来るんじゃないか?」
「あっ、確かに! 出来そうですね! 試してみよー、っと」
そんな会話をしつつ一旦家を出る俺達。さっさと契約を済ませて、立派な家に入居したい気持ちで浮かれていた。
だが、俺達はこの時気付いていなかった。
『カサカサッ──カサカサカサッ』
この家に、何かが潜んでいる事を……。
何がいるんでしょうね……。
次回はラッキースケベにご期待下さい!




