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14 「童貞と処女は青臭い」

 今回の狩りで初討伐となるモンスターを三種類倒し、ランダムスキラーの発動条件をクリアした。


『俊敏』に次いで新しく獲得したスキルはなにか?


 キョウカは鑑定を終えて結果を報告しようとしているが、中々スキル名を言わない。


 どうした……何故キョウカは口ごもっているんだ?

 

「どうしたんだよキョウカ? 新しいスキル付いてなかったか?」

「いや、そう言う訳じゃないんですが……」


「じゃあなんだよ? 良いから教えてくれ」

「わ、分かりましたよ! フォグさんが新しく獲得したスキルは……ズバリ! 『繁殖』です!」


「は、繁殖? あ? ん? なんだよそのスキル……」

「詳しく説明しましょう! 繁殖スキルは、多種族と交わっても相手を妊娠させる事が出来るスキルです! ただ、母体によってフォグさんと同じ人間が産まれるか、相手の種族が産まれるかは違うみたいです。人が育つ母体の大きさなら人間。体が小さい母体だと相手の種族って感じみたいですよ?」


 い、い、いらねえー!! 

 あんなに頑張って倒したのになんだよそりゃ!!


「じゃあなにか! 童貞のお前は相手がいないからモンスターとでも交わってろってか!! あんまりだろ!!」

「わ、私に言われても……ん? 童貞? 私とフォグさんて、したんですよね? なら童貞はおかしくないですか?」


 あっ、やべ……口が滑った。


「お、おかしくないだろ!! 相手が覚えてなかったら童貞も同じだ!」

「あ、そう言う事か……そ、それはごめんなさい。でも、どうしても思い出せなくて……」


「べ、別に無理に思い出さなくていい。なんならもう一回してみるか?」

「そそ、それは無理です! 体は非処女でも心は処女のままなんですから!! じ、時間を下さい! フォグさんを好きだって心から思えるまで!」


 体は非処女でも心は処女か……深そうな事言ってるが、お前は体も処女だ。


 それにしても、どうしたもんか……このまま勘違いさせといて本当に良いのか? いや、ダメだよな……。


「すまんキョウカ!」

「えっ!? なんで頭下げてるんですか!? もしかして私フラれた……?」


「違うんだ……実は俺とキョウカはしてないんだ」

「ど、どういう事ですか?」


「あの日、キョウカは酒場の臭いで酔っ払ってしまってな。宿に入って直ぐに寝ちまったんだよ。胸がはだけてたのは暑くて自分でやったんだろ。だけど、神に誓って手は出してない! そりゃあ、ムラムラはしたが酔っ払いを襲うほど俺は落ちぶれちゃいねえ」

「じゃあ、私ずっと勘違いしてたんですか?」


「まあ、そう言うことだな」

「酷いですよフォグさん……どうしてすぐ言ってくれなかったんですか!?」


「面白いと思ったから」

「はぁ? じゃあおっぱいを触ったのは!?」


「揉みたかったから」

「ふざけんなー!!  もうフォグさんなんか嫌い!」


「落ち着けキョウカ。大丈夫だ。キョウカのおっぱいは気持ち良かったから」

「そう言う事じゃねえんだよ! 私、色々悩んでたのに……」


「な、泣くなよ! ど、どうしたら許してくれる? 飯でも奢るか?」

「そんなんじゃ許せません! 許して欲しかったら……私と一ヶ月、恋人になって下さい」


「恋人!? な、なんでそうなった!? も、もしかして俺の事好きなのか?」

「それが分かんないから言ってるんです! 私、フォグさんとしちゃったと思ったら、なんかフォグさんから目が離せなくて……でもそれが好きだっていう気持ちなのか、よく分かんない。だから、一ヶ月恋人になってみて自分の気持ちをハッキリさせたいんです!」


「そ、そうなのか……その間は襲っていいの?」

「だ、ダメに決まってるじゃないですか!! 手を繋ぐ位までです! も、もしかしたら……キスまでならいけるかもしれないけど……」


「うーん……よく分からんが分かった。その恋人期間が終わったらどうするんだ?」

「お互いの気持ちを告白して、その先も恋人のままかただの仲間に戻るか決めるんです」


「そう言う事ね……じゃあ、一ヶ月宜しく」

「こ、こちらこそ宜しくお願いします」


「じゃあ、飯でもいくか?」

「は、はい! 手、繋いじゃったよ……なんでこういう所はスマートに出来るんですか? もうっ!」


 キョウカの理不尽な怒りを無視し、俺達は夕闇の中を歩いていく。今日は結構な稼ぎになったから、豚草亭でも行って腹一杯食わしてやるか。


 酒場はやめとこう……また酔っぱらわれたら大変だからな。

 

 その後、俺達は飯を食って宿に向かった。

 相変わらず一人部屋は一杯で、二人部屋にチェックインする。


 なんでいっつも、二人部屋なんだよ……宿屋のオヤジに図られてんのか? 毎回毎回、「昨日はお楽しみで」とか言いやがって。


 こっちは童貞だぞ!! 俺だって楽しみてえわ!


 そんな事を考えてベッドに横になると、視界にキョウカの姿が映る。


 今日から一ヶ月は恋人期間。そう思うと、恋人と同じ空間で寝る事に、無性にドキドキしてきた。


 向こうもそれは同じなのか、暗闇の中何回も俺が寝たか聞いてくるのだ。


「寝ました?」

「まだ」


「寝た?」

「まだだよ!」


 このやり取りが何十回と続きいい加減うんざりしたので、寝るのを諦めてキョウカと色々話す事にした。


 俺の26年間にあったこと。田舎の家族の事。

 キョウカの生きた16年間の事。向こうの世界の事。


 話題は尽きる事なく、二人で明け方まで夢中で話した。

 お陰で自分の事を分かってもらえたと思うし、キョウカの事を深く知れたと思う。


 恋人じゃなくても、パーティーの仲間の事を理解するのは良いことだしな。


 でも、キョウカの事を知ってしまったせいか、なんだか余計に守ってやりたいと思ってしまった。


 小さくて可愛らしい女の子は、話し疲れて寝てしまう。

 俺はその横顔を眺め、そんな事を考えていた。


 そういえば……新しく獲得したスキルは繁殖だったな。

 どんな生き物でも孕ませる。

 そんなスキル、マジで要らねえぞ。



 だが、この『繁殖スキル』が後に波乱を起こすとは、この時の俺は考えもしていなかった……。

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