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花風の香り  作者: Shinoka
6/7

忘れられない香り

牡丹の花が咲く頃には、気づいていたのかもしれない。

春の匂い、

夏の匂い、

秋の匂い、

冬の匂い。

全部、違う匂いなはずなのに。どうして、同じような香りがするのか。同じような香りなのに、思い出すたびに薄れていく。声も、表情も、存在も。なにもかもが曖昧なのに。どうしてか、忘れられない。忘れられれば、楽になれるとわかっているのに。思い出すことをやめられない。胸の奥に残るあの匂いを、忘れたくない。もう、誰のものかすらわからないっていうのに。

「忘れてしまえれば、いいのに。」

なにを忘れれば良いのか、もうわからないっていうのに。けれど、その言葉を口にするたびに、ほんの少しだけ安心している自分が居た。

その声は、風と、白い息に交えて消えていった。

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