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マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

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85話 ギルド報告とロイドの成果

草原から街へ戻る道のりは、奇妙なほど静かだった。戦闘の直後であり、本来ならば興奮や達成感が漂っていてもおかしくない。しかし実際には、全員どこか疲れたような空気をまとっている。


原因は明らかだった。


ロイドである。


彼は黒いホワイトウルフの毛や爪の破片、足跡の土、さらには血液のサンプルまで丁寧に採取し終え、満足そうな顔で歩いていた。その横でアルエがうんざりした顔をしている。


ホワイトウルフの群れはどこか疲れた様子で、岩山の奥へ消えていった。\


「ねえリーリヤ」


「うん」


「あたし、今までロイドのことちょっと尊敬してたんだけどさ」


「うん。言いたいことは私もいっしょだよ」


「今日で完全に無理になった」


リーリヤは、困ったように微笑んだ。


「それでも、今回の件で最も重要な証拠を集めたことは変わりないよ?」


「それはそうだけど!」


アルエは叫びそうになりながら、ロイドの背中を指差す。


「でもあのテンションはおかしいでしょ!」


ロイドは振り返らない。


ただ歩きながらノートを取り出し、何やら猛烈な勢いで書き続けている。


「毛色の変異と骨格構造の一致……極めて興味深い……」


マットはその様子を見ながら肩をすくめた。


「楽しそうで何よりだ」


アルエは頭を抱えた。


「このパーティおかしい人しかいないんだけど」


カーボがその横を静かに歩いている。灰色の毛並みは以前よりも少し暗く、体格も一回り大きくなっていた。だが首元に生えた白い毛ははっきりと残っている。


それを見てロイドがふと呟いた。


「やはり素晴らしい」


「まだ言う?」


アルエが睨む。


「この進化は非常に重要だ。ウルフ系モンスターの進化体系そのものを揺るがす可能性がある」


「はいはい」


そんな会話をしているうちに、街の門が見えてきた。


ギルドへ戻ると、受付の奥からグラハムが現れた。大柄な体に腕を組み、いつもの不機嫌そうな顔をしている。


「……帰ってきたか」


彼の視線はすぐにカーボへ向いた。


そして、その姿を見て眉がぴくりと動く。


「……強くなったな」


それは歓迎している声だった。


しかし次の瞬間、ロイドが机の上にいくつもの袋を並べ始める。


毛。


爪の欠片。


血液の入った瓶。


観察記録の束。


グラハムの顔が段々と渋くなっていく。


「黒いホワイトウルフについての調査結果です。人為的な進化の痕跡がありました」


「何か外部要因が介入している。強制的な進化……」

ロイドはそこで言葉を止めた。まるで続きを飲み込むように。

「……あるいは薬物的なものだ」


グラハムは腕を組み直した。


「……そうか」


嫌そうな顔だった。


だが同時に、どこか嬉しそうでもある。


優秀な冒険者が結果を持ち帰ったこと自体は、ギルドとして歓迎すべきことなのだ。


「カーボのステータスも確認する。水晶を持ってこい」


受付嬢が奥から水晶を持ってきた。


カーボが前に出る。


水晶が光り、文字が浮かび上がる。


――――――――――


カーボ


種族:フェンリスボルフ レベル:44


生命力:352 魔力量:94

筋力:382 耐久:336 敏捷:326

器用:162 精神:154


適性

・統率:A+

・感知:A

・火耐性:B


固有技能

・群狼統率+

・危険察知

・迎撃

・襲撃

・指揮

・単独行動


称号

・孤高の王

・守護狼


――――――――――


ギルド内がざわついた。


「フェンリス……?」


グラハムが低く呟く。


「聞いたことがない種族だ」


ロイドは嬉しそうに頷いた。


「当然。恐らく新しい進化系統だろうね」


だが、とロイドは続ける。


「……単独行動?」


リーリヤが首を傾げる。

「そこそんなに引っ掛かる?」

「当然だよ。これは本来群れから外れた一匹オオカミの個体が持つ特性だよ」

ロイドの目が輝く。

「これは研究価値が高すぎるよ!」


「……面倒なことになりそうだな」


グラハムは頭を掻いた。


しかしすぐに真顔に戻る。


「問題は黒いホワイトウルフの方だ。そんな強力な個体を野放しにしておくのは、ギルドとして推奨できない」


その時だった。ロイドは、なぜか得意げな顔をしていた。


「はいこれ」


ロイドが瓶を取り出した。


中には黄色い液体が入っている。


グラハムが眉をひそめる。


「……なんだこれ」


ロイドは当然のように答えた。


「カーボさんの尿です」


「は?」


グラハムですら聞き返した。


リーリヤとアルエは同時にロイドを見る。


文字通り汚物を見るような目だった。


瓶ではなく。


ロイドを。


グラハムが額を押さえる。


「何考えてんだ?」


ロイドは真顔で説明する。


「これを街の周囲や草原に撒けば、そこはカーボさんの縄張りになる」


ギルド内が静まり返る。


「黒い個体どころか、ホワイトウルフすら近寄らない。この地域のキングを倒した存在の匂いですから」


理屈は正しかった。


非常に正しかった。


しかし。


「こいつほんと頭おかしいよ!!」


アルエが絶叫した。


リーリヤが慌ててたしなめる。


「アルエ、こいつとか言っちゃだめ!」


「もういいの!!」


アルエは机を叩いた。


「今まではちょっと尊敬もしてたけど、いまのでかんっっっっぜん!に無理!ロイドなんてこいつで十分なの!」


ロイドは少し考えた。


「それは評価として下がっているのだろうか」


マットが瓶を見て言った。

「……カーボ、偉いぞ」

カーボは少しだけ誇らしげだった。


グラハムは深いため息をついた。


成果は確かに持ち帰った。


だが同時に。


とんでもない連中を抱えてしまったという実感も、強くなっていた。


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