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マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

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74話 城塞都市カタリナ


街道の先に見えていた巨大な城壁は、距離が縮まるにつれてその異様な構造をはっきりと現し始めていた。


カタリナ。


冒険者ギルドの総本部が存在する都市。


遠くから見たときには巨大な城壁に囲まれた都市に見えたが、近づけば近づくほど、その印象は少しずつ変わっていく。


都市というより――要塞。


それも、ただの要塞ではない。


巨大な岩山そのものを削り出し、城壁と塔と通路を無数に組み合わせて築き上げた、まるで迷宮のような城塞都市だった。


街全体が、戦うために作られている。


自然の岩肌をそのまま利用した外壁は凹凸だらけで、攻城兵器を近づけることすら難しそうだった。塔は何層にも重なり、弓兵や魔術師が配置されるであろう狭間が無数に開いている。


その構造は、これまで訪れてきた都市とはまったく違っていた。


サリアンは魔術都市だった。


塔が林立し、街の中心には魔術学院がそびえ、魔法の研究者と学生たちが行き交う知識の街。


アーデンはモンスター牧場の街だった。


広大な柵と厩舎が並び、巨大な村をそのまま発展させたような、どこか牧歌的な雰囲気の街。


だがカタリナは違う。


ここは完全に――戦いの街だった。


「すごい構造ね……」


リーリヤが思わず声を漏らす。


魔術学院で学んできた彼女から見ても、この都市構造は興味深いものだったらしい。


「岩山そのものを都市化してるんだ」


ロイドが感心したように言う。


「攻城戦を想定した作りだね。普通の軍隊じゃまず落とせない」


「そんな街に冒険者ギルドの総本部があるのか?」


マットは腕を組みながら城壁を見上げる。


「冒険者は戦力だからね」


ロイドは肩をすくめた。


「いざという時は軍隊の代わりにもなる」


その言葉を聞きながら、アルエは城門の前を眺めていた。


城門の前には長い列ができている。


商人の馬車。


冒険者の一団。


旅人。


そして――検査。


城門の前では武装した守衛たちが厳重に出入りを確認していた。


一人一人止めて、荷物を調べ、身分証を確認している。


「……これは時間かかりそうね」


アルエがため息をついた。


「アーデンはすぐ通してくれたのに」


リーリヤも苦笑する。


アーデンでは事情を聞いた守衛がほぼ形式的な確認だけで街へ通してくれた。


だがここは違う。


守衛たちは一人一人をじっくり観察していた。


そして――。


マットたちの番になった瞬間、空気が変わった。


守衛の視線が一斉に集まる。


子供三人。


巨大な狼。


空を飛ぶ金属の鳥。


腕にまとわりつく謎の生物。


そして研究者風の男。


どう見ても普通の旅人ではない。


しかもモンスターの個体がどれも尋常ではない。


カーボはアルファダイアウルフ。


ササミはミスリルイグナイト。


アミノは正体不明の共生生物。


この地域に生息するモンスターより明らかに強力な個体ばかりだった。


守衛の一人が眉をひそめる。


「……止まれ」


低い声だった。


「従魔の登録証はあるか」


「あるわよ」


リーリヤがすぐに答える。


「久しぶりね、この感じ」


アルエが肩をすくめた。


サリアンでも似たような検査は受けている。


こういう場面はもう慣れていた。


リーリヤは首元の革袋から小さな首飾りを取り出す。


翡翠の首飾り。


サリアン魔術学院の外部生に与えられる証だった。


「サリアン魔術学院、外部生証明」


守衛の一人が小さく声を漏らす。


「学院関係者か?」


「まあ、そんなところ」


アルエも同じ首飾りを見せる。


「サリアンでちょっと暴れすぎた結果、これ渡されたのよ」


「暴れた?」


守衛が眉をひそめる。


「これやるから外で活動してろって言われたの」


アルエはあっけらかんと言った。


守衛たちの表情が微妙に固まる。


そこへマットが書類を差し出した。


「これもある」


従魔証明書。


サリアンで正式に発行されたものだった。


カーボ、ササミ、アミノ。


三体の従魔登録が記されている。


守衛がそれを読み、顔をしかめる。


「……本物か?」


「疑うなら学院に問い合わせてみろ」


マットは平然と言う。


だが守衛の表情はまだ納得していない。


そこでロイドが一歩前に出た。


「これもあるよ」


彼が取り出したのは一通の封書だった。


アーデンのギルドマスター。


イレーヌの署名入りの書状。


守衛がそれを確認する。


そして、ロイドが言った。


「ごめんね。これでもCランクなんだよ」


「預かりだけどね」


その言葉を聞いた瞬間。


守衛の表情が固まった。


数秒の沈黙。


やがて守衛は小さく息を吐く。


「……なるほどな」


「そういうことか」


彼はマットたちを見回した。


「噂には聞いてる」


「お前たちが、あの曲芸集団か」


「曲芸集団?」


アルエが驚く。


「私たちそんな風に言われてるの?」


守衛はニヤリと笑う。


「赤髪の少女」


彼はアルエを指差した。


「噂通りだな」


「君が火炎魔法の使い手なんだろ」


「ちょっと見せてくれよ」


アルエは少しだけ肩を回す。


「別にいいけど」


「火傷しないでね?」


そう言って、彼女は手を前に出した。


魔力が集まる。


空気が震える。


次の瞬間。


巨大なファイアボールが放たれた。


轟音。


爆発。


城門の外の地面が大きく抉れ、粉塵が舞い上がる。


砂煙がゆっくりと降り注ぐ。


守衛たちは完全に沈黙していた。


やがて一人が笑い出す。


「はっはっは!」


「こいつは噂以上だ!」


彼は手を振った。


「疑って悪かった!」


「通ってよし!」


だが彼の足は――微かに震えていた。


その様子を見てリーリヤが声を上げる。


「ササミ!」


蒼銀の鳥が即座に反応する。


ササミは近くに転がっていた拳大の石をつかみ、空へ放り投げた。


リーリヤが短く詠唱する。


「ウォーターカッター」


水刃が空を走る。


石は瞬く間に削られ、滑らかな形に変わっていく。


削られた石は地面に落ちる頃には――杯になっていた。


リーリヤはそこへ水魔法で水を満たす。


「はい」


「お水どうぞ」


守衛へ差し出された石の盃。


受け取るしかない。


守衛は困惑したまま水面を見つめる。


そこへロイドが言った。


「……入っていいんだよね?」


守衛は何も答えなかった。


ただ静かに――。


城門が開いた。


巨大な門がゆっくりと軋みながら動く。


その向こうには、カタリナの街が広がっていた。


岩を削って作られた通路。


何層にも重なる石の街。


吊り橋。


塔。


武装した冒険者たち。


魔術師。


商人。


様々な人々が複雑に交差している。


まるで巨大な迷宮の中に街が作られているようだった。


マットは目を輝かせる。


「すげえな」


リーリヤも周囲を見回す。


「これは……」


アルエは笑う。


「面白そうな街じゃない」


そしてロイドは、街の奥にそびえる巨大な塔を見つめていた。


冒険者ギルド総本部。


彼は小さく呟く。


「さて」


「ここからが本当の調査だ」



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