表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/131

第64話 毒蜘蛛の群れと白蛇の進化


 蜘蛛たちが一斉に跳びかかった瞬間、森の空気が一変した。


 八本脚の影が地面を這い、木を伝い、糸を渡って迫ってくる。人の背丈ほどもある巨体が信じられないほどの速さで動き回り、紫色の模様が不気味に揺れた。


「来るよ!」


 リーリヤが声を上げる。


 その直後、前方の蜘蛛が跳ねた。


 だが、マットの前に白い影が滑り込む。


 ササミだった。


 大きく羽を広げ、迫ってきたベノムスパイダーの脚を器用に弾く。羽根で受け流された蜘蛛は体勢を崩し、そのまま地面へ転がった。


 さらにもう一匹が背後から迫る。


 ササミは振り返りざまに翼を打ち付け、その牙を逸らすように弾き飛ばした。


 まるで盾のようにリーリヤとアルエの前に立ち、蜘蛛の攻撃を防いでいる。


「ササミ、ナイス!」


 アルエが叫ぶ。


 その瞬間、彼女の手の中で炎が弾けた。


 フレイムウィップ。


 燃え上がる炎の鞭が弧を描き、群れへと叩き込まれる。火炎は蜘蛛の脚を巻き込み、乾いた音とともに数匹を吹き飛ばした。


 焦げた匂いが森に広がる。


 しかし、蜘蛛はまだ多い。


 左右から迫る影に対し、リーリヤが冷静に手を掲げた。


「アイスダガー!」


 魔力が空気を切り裂き、氷の刃が次々と生まれる。


 鋭い氷の短剣は蜘蛛の巣を切り裂き、張り巡らされた糸を断ち切った。粘つく糸が次々と落ち、視界が開ける。


 その隙を突くように、黒い影が森の中を駆けた。


 カーボだった。


 木の陰から一気に飛び出し、死角から迫っていたベノムスパイダーへと飛び掛かる。鋭い牙が蜘蛛の腹部へ食い込み、驚いた個体が大きくのけぞった。


 その一撃で隊列が崩れる。


 蜘蛛の注意が分散した瞬間、マットが踏み込んだ。


 拳を振るう。


 重い衝撃とともに一匹のベノムスパイダーが地面へ叩きつけられる。


 続けざまにもう一匹が飛び掛かってくるが、その脚に白い影が巻き付いた。


 アミノ。


 素早く脚へ絡みつき、動きを封じる。


「よし!」


 マットはそのまま拳を叩き込み、蜘蛛の頭部を粉砕した。


 戦いは混戦になった。


 炎が唸り、氷が閃き、羽が蜘蛛の攻撃を弾き、黒い影が死角から襲い掛かる。


 数の優位を頼みにした蜘蛛の群れだったが、マットたちの連携はそれを上回っていた。


 そして、やがて。


 最後の一匹が地面へ崩れ落ちる。


 森に静けさが戻った。


 アルエが大きく息を吐く。


「はあ……気持ち悪かった……」


 リーリヤも肩の力を抜いた。


「数が多かったね。でも何とか――」


 その時だった。


 マットの頭上。


 わずかな気配。


 完全に消されていた殺気が、突然牙を剥いた。


 黒い影が落ちてくる。


 ベノムスパイダー。


 天井の枝に潜み、機会を待っていた個体だった。


「――っ!」


 気付いた時には遅かった。


 蜘蛛の牙が、マットの腕へ深々と突き刺さる。


「マット!」


 アルエの叫び。


 次の瞬間、氷の刃が閃いた。


 アイスダガー。


 蜘蛛の体が真っ二つに切り裂かれ、そのまま地面へ落ちる。


 だが、牙はすでに毒を注ぎ込んでいた。


 マットの腕に紫色の血管が浮かび上がる。


「ぐ……っ」


 苦痛に顔を歪める。


 回復魔法を使えば致命傷にはならない。だが毒そのものが消えるわけではない。焼けるような痛みが腕から肩へと広がっていく。


 その時。


 白い影が動いた。


 アミノ。


 マットの腕の付け根――脇の辺りへと巻き付き、その体を強く締め上げる。


「おい、何を……」


 そして次の瞬間。


 アミノは、蜘蛛に噛まれた傷口へ自らの牙を突き立てた。


 吸い付く。


 毒を。


 吸い出している。


「毒を……吸っているのか?」


 ロイドが驚いた声を上げる。


 アミノの白い体に、じわりと紫色が混ざり始める。


 まるで毒が体内へ移っているかのようだった。


「これは……毒を吸収しているのか。元がコカトリスの尻尾なら毒耐性があってもおかしくはないけど……」


 ロイドの分析が止まらない。


「ウィッチバイパーへ進化して、さらにコカトリスの特徴を再獲得しようとしているのか?」


 彼は腕を組み、興奮気味に続けた。


「そんな進化、普通あり得るのか? いや、でも目の前で起きている現象は確実にそれを示しているし……」


 しばらくして。


 マットの腕の紫色がゆっくりと引いていく。


 毒の気配が消えた。


 アミノが体を離す。


「ありがと、アミノ。かなり楽になった」


 マットは腕を回してみる。


 先ほどまで浮き出ていた紫の血管は完全に消え、痛みも残っていない。


 その様子を見て、アミノは満足そうに肩口へ戻ろうとした。


 ――だが。


「ん?」


 マットが首をかしげる。


「……なんか」


 アルエも目を細めた。


「アミノ、大きくなってない?」


 リーリヤも頷く。


「大きくなったというより……長くなってるね」


 よく見ると模様も変わっていた。


 今まで体に沿って走っていた赤いラインに、紫色が混ざっている。それがギザギザとした模様になり、蛇の体を不規則に走っていた。


 ロイドの目が輝いた。


「間違いない。進化している!」


 興奮した声が森に響く。


「こんなに分かりづらい進化は初めて見たよ! 僕でも全然気付かなかった!」


 彼はアミノを指差しながら続けた。


「見てよ、模様が完全に変わってる! 赤いラインに紫が混ざってギザギザになってるし、長さも今までの倍くらいある!」


 さらに彼は尻尾の先を覗き込み、声を上げた。


「あ、これ……羽毛?」


 白い蛇の尾の先に、わずかな羽毛のようなものが生えていた。


 ロイドの声がさらに弾む。


「やっぱりコカトリスの特徴を再獲得しているのかもしれない! いや、こんな進化は見たことがない!」


 そして彼は勢いよく立ち上がった。


「すぐに調べよう! 街に戻るよ!」


 そのテンションに、誰もついていけなかった。


 結局そのまま、マットたちは街へ戻ることになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ