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マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

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第21話 ステータス鑑定


 ダンジョンから戻ったその日の夕方。


 洞窟ジムの中央に、ひときわ場違いな物が置かれていた。


 台座の上に据えられた、透明な水晶。


 淡く光を反射しながら、静かにそこに鎮座している。


 鑑定水晶。


 ギルドの受付に置かれているものと同じ型だ。


 普通は依頼の確認や能力測定に使われるもので、個人で持つようなものではない。


 だが今、それは完全にジムの設備の一つとして設置されていた。


 ウェイトラック。


 滑車式ウェイト。


 岩ベンチ。


 水路。


 そして。


 鑑定水晶。


 並んでいる物の種類が明らかにおかしい。


 それを見て、エルザは腕を組んだ。


「……やっぱり変な光景ね」


 アルエも頷く。


「ジムの真ん中にステータス水晶って普通ないよね」


 だが俺は満足そうに頷いた。


「完璧だ」


「何が」


「これでトレーニング成果が確認できる」


 アルエは頭を抱えた。


「筋トレ前提なんだ……」


 俺は水晶の前に立つ。


 表面は滑らかで、触れるとほんのり温かい。


 ギルドで見た時と同じだ。


「確か触ればいいんだよな」


 俺がそう言うと、エルザが小さく肩をすくめた。


「違うわ。こうやって使うのよ」


 そう言ってエルザは前に出る。


 水晶の前に立つと、慣れた様子で手のひらをそっと表面に置いた。


「魔力に反応して表示されるの。ギルドでは依頼の適性確認や、昇格の時に使うわね」


 水晶が淡く光り始める。


 内部に光の筋が走り、ゆっくりと渦を巻く。


 そして文字が浮かび上がった。


  水晶の光が強まり、内部で魔力の筋がゆっくりと渦を巻く。


 やがて、文字が一つずつ浮かび上がり始めた。


 それを見た瞬間、エルザの眉がわずかに動いた。


「……あら」


 アルエが首を傾げる。


「どうしたの?」


 エルザは水晶を見つめたまま、少し感心したように呟いた。


「この水晶、かなり特殊な物ね」


「え?」


「レベルドレインの前の項目まで表示されているわ」


 アルエとリーリヤが顔を見合わせる。


 リーリヤが恐る恐る聞いた。


「……それって普通は出ないの?」


「ええ」


 エルザは小さく頷く。


「普通の鑑定水晶は“現在の状態”しか表示しないの」


「だから、呪いを受けている人間なら、制限された能力しか出ないはず」


 少しだけ苦笑する。


「でもこれは……呪いを受ける前の能力まで表示している」


 アルエが目を丸くする。


「それって……」


「そう」


 エルザは静かに言った。


「これが原因で、私は冒険者を引退したのよ」


 洞窟ジムに、ほんの少しだけ静かな空気が落ちる。


 エルザはあっさりと続けた。


「レベルドレインの呪い」


「普段は力が大きく制限される。月に一度、ほんの数時間だけ本来の力に戻るけど……」


 肩をすくめる。


「冒険者としては致命的よ」


 そして改めて水晶を見る。


「まあ、今となっては昔の話だけどね」


 その時、水晶の表示が完全に整った。


――――――――――


エルザ


種族:人間

レベル:27(制限)


生命力:162

魔力量:143

筋力:96

耐久:102

敏捷:121

器用:108

精神:167


魔法剣適性:A+


状態異常

・呪い:レベルドレイン


本来レベル:54


生命力:324

魔力量:286

筋力:182

耐久:201

敏捷:236

器用:214

精神:331


固有技能

・魔法剣

・瞬速斬

・魔力刃


称号

・元Bランク冒険者

・紅の魔剣士


――――――――――


 アルエが息を呑んだ。


「……え?」


 リーリヤも目を丸くする。


「本来レベル……?」


 俺は腕を組んだ。


「なるほど」


 エルザは少し気まずそうに視線を逸らす。


「呪いよ。説明したでしょう」


「普段は力が落ちてるの」


 アルエが水晶とエルザを交互に見る。


「それでも強すぎない?」


 俺は満足そうに頷いた。


「いい基準だ」


「だから何の基準よ」


「筋トレの基準」


「絶対違う」


 俺は改めて水晶に手を置いた。


 水晶の中に光が走る。


 淡い光が渦を巻き、やがて文字が浮かび上がった。


――――――――――


マット


種族:人間

年齢:8

レベル:35


生命力:252 魔力量:61 筋力: 380 耐久:356 敏捷:57 器用:24 精神:41


回復適性:EX

身体負荷耐性:A

成長補正:A+


固有技能

・回復魔法

・身体強化

・筋力特化成長


称号

・異端児

・回復狂い


――――――――――


 アルエが目を丸くした。


「……ちょっと待って」


「どうした?」


「筋力おかしくない?」


 エルザも水晶を覗き込む。


 そして沈黙した。


 数秒後、小さく息を吐く。


「……本当に上がってるわね」


「だろ?」


 俺は満足そうに腕を組む。


「トレーニングの成果だ」


 アルエは水晶を見つめたまま呟いた。


「いや……成果っていうか……」


「これ普通じゃないよ?」


 エルザは額を押さえた。


「普通の冒険者はこんな成長しないわ」


「毎日死にかける訓練なんてしないもの」


 俺は胸を張る。


「やっぱり筋トレは正しい」


「結論そこ!?」


 リーリヤが前に出た。


「私もやってみる」


 水晶に手を触れる。


 光が走り、表示が変わる。


――――――――――


リーリヤ


種族:人間 年齢:11 レベル:16


生命力:54 魔力量:48 筋力:12 耐久:16 敏捷:20 器用:52 精神:29


水魔法適性:B+

魔法熟練:B


固有技能

・水流制御

・水刃生成


称号

・水遊び名人


――――――――――


 アルエが声を上げた。


「器用さ高っ」


 エルザが頷く。


「水魔法の制御の特訓のお陰でしょうね。それでも普通より全然高いけれど」


 リーリヤは少し誇らしげに笑った。


「次、私!」


 アルエが水晶に手を置く。


――――――――――


アルエ


種族:人間

年齢:11

レベル:22


生命力:74 魔力量:74 筋力:18 耐久:24 敏捷:22 器用:41 精神:46


火魔法適性:A

魔法熟練:A-


固有技能

・ファイアボール

・魔力圧縮


称号

・紅の魔法見習い


――――――――――


 エルザが目を細める。


「魔力量……伸びてるわね」


 アルエが嬉しそうに拳を握る。


「やった!」


 その横でカーボが水晶を見つめていた。


「カーボもやるか?」


「ワン」


 前足を水晶に乗せる。


――――――――――


カーボ


種族:ダイアウルフ レベル:31


生命力:243 魔力量:78 筋力:181 耐久:156 敏捷:181 器用:27 精神:36


危険感知:A


固有技能

・嗅覚索敵

・牙撃

・威圧咆哮


称号

・灰狼


――――――――――


 アルエが笑った。


「敏捷すごい!」


 カーボは誇らしげに尻尾を振る。


 最後にササミ。


 巨大なコカトリスが水晶に近づき、嘴で軽く突いた。


 水晶が光る。


――――――――――


ササミ


種族:コカトリス

レベル:27


生命力:71

魔力量:12

筋力:44

耐久:67

敏捷:38

器用:19

精神:14


嘴硬度:A 貫通力:A 食味:C


固有技能

・石嘴

・尾撃


称号

・白羽の怪鳥


――――――――――


 沈黙。


 アルエが首をかしげる。


「……あれ?」


 水晶を指差す。


「食味って何?」


 もう一度、表示を見直す。


 嘴硬度:A

 貫通力:A

 食味:C


 アルエがぽつりと言った。


「……おいしくないんだ」


 ササミが首をかしげる。


 アルエは少し可哀想なものを見る目になった。


「なんか、ごめんね……」


 俺は愕然としていた。


「待て」


「鶏なのに?」


 水晶を凝視する。


「鶏なのにC?」


 アルエが呆れた顔で言う。


「似てるけど、鶏じゃないよ。それに、まず食べる前提なの?」


 リーリヤが小さく呟く。


「ちょっと失礼だよね……」


 俺は腕を組んだ。


「いや、これは重要だ」


「何が」


「食味だ」


 全員が俺を見る。


 俺は真剣に水晶を指差した。


「よく考えてみろ」


「ササミは今、毎日俺たちとスパーリングしている」


「嘴で岩を砕き、カーボと殴り合い、掘削作業までしている」


 アルエが眉をひそめる。


「うん……してるね」


「つまり筋肉が発達している」


 俺は深く頷いた。


「筋肉が発達すれば肉は硬くなる」


 沈黙。


 アルエがぽつりと言った。


「……なるほど」


 リーリヤも小さく頷く。


「だから食味が落ちてるんだ……」


 俺は腕を組み直した。


「つまりこれは」


「トレーニングの成果だ」


 俺は頷いた。


 エルザは遠い目をしていた。


「……このジム、本当に何なのかしらね」


 俺は水晶を見上げる。


 数字が並んでいる。


 筋力。


 耐久。


 敏捷。


 成長。


 全部。


 数値で見える。


 俺は拳を握った。


「よし」


「もっと鍛えるか」


 アルエが呆れた顔をする。


「やっぱりそこに戻るんだ……」


 エルザは小さくため息をついた。


「……本当に、どこまで伸びるのかしらね」



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