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マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

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第19話 ジムレベル2 完成


 洞窟の中に、乾いた音が響いた。


 ゴッ。


 岩が床に叩きつけられる。


 俺はその岩を肩に担ぎ直し、ゆっくりと立ち上がった。


 以前のジムなら、この動作だけで壁にぶつかっていたはずだ。


 だが今は違う。


 天井は高く、奥行きも広い。


 走るための空間もある。


 岩で作ったベンチ。


 丸太を組んだスクワット台。


 天井から吊るされた滑車式ウェイト。


 さらに、岩壁の隙間から引き込んだ水路が洞窟の奥で静かに流れている。


 ここはもう、ただの洞窟ではない。


 完全に――ジムだ。


「……本当に作っちゃったね」


 アルエが呆れた声で言った。


「完璧だ」


 俺は胸を張る。


 横ではカーボが尻尾を振っている。


 洞窟の奥ではコカトリスが地面を引っかきながら歩き回っていた。


 掘削作業の主役だったそいつの嘴は、以前より明らかに鋭くなっている。


 岩壁を削り続けた結果だ。


 まるで鋼の刃のようだ。


 カーボも同じだ。


 数日前よりも体が一回り大きくなっている。


 筋肉の付き方が違う。


 明らかに強くなっていた。


「試してみるか」


 俺は拳を鳴らした。


 コカトリスが首を傾げる。


「スパーリングだ」


 その言葉を理解したのか、コカトリスは羽を広げた。


 次の瞬間。


 地面を蹴る。


 白い羽毛が視界を覆う。


 速い。


 以前より明らかに速い。


 鋭い嘴が一直線に突き出される。


 俺は体をひねって避ける。


 そのまま拳を振り抜く。


 だが。


 ガン。


 拳が羽に弾かれた。


「硬っ!?」


 コカトリスの尾がしなる。


 鞭のような速度。


 俺は腕で受ける。


 衝撃。


 数歩下がる。


「前より強くないか?」


 思わず呟く。


 アルエが腕を組んで見ていた。


「この子こんなに強かったっけ?」


 嘴が岩床を叩く。


 石が砕ける。


 以前ならここまでの威力はなかった。


 俺は息を整える。


 そして再び踏み込む。


 拳。


 蹴り。


 羽。


 尾。


 激しい攻防が続いた。


 数分後。


 俺は大きく息を吐きながら距離を取った。


「はぁ……」


 コカトリスも羽を畳む。


 互いにそれなりにダメージを受けている。


 だが。


「回復」


 緑の光が二人を包む。


 傷が消える。


 体が軽くなる。


 アルエが呆れた顔をした。


「ほんとにめちゃくちゃな訓練だよね、それ」


 その様子を見ていたエルザが小さく息を吐いた。


「そりゃ強くもなるわよ」


 腕を組みながらジムの中を見渡す。


「連日あなた達とこうやって遊んでたんでしょう?」


 エルザの視線がジムをゆっくりと巡る。


 無数のウェイトマシン。


 滑車。


 岩のベンチ。


 水源から引いた水路。


 そして山のような食料の備蓄。


 さらに。


 ダイアウルフの範疇に収まるのかすら怪しいカーボ。


 アルエとリーリヤの魔法も、日に日に威力が増している。


 エルザは額を押さえた。


「この状況……何なのかしらね」


 ぽつりと呟く。


「冒険者の養成施設か何か?」


 少し考える。


「……いえ、違うわね」


 ギルドの訓練場で鍛えたとしても、ここまでの成長速度はあり得ない。


 理由は単純だ。


 普通は。


 怪我をしたら休む。


 だがここでは違う。


 致命傷になりかねないダメージを受ける。


 そして。


 即座に回復魔法で治す。


 最高の状態に戻る。


 そしてまた戦う。


 限界を更新し続ける訓練。


 普通の成長速度で済むはずがない。


 エルザは深く息を吐いた。


「……本当に何を作ってるのよ、この子達は」


 その時。


 俺はふと気づいた。


「そういえば」


「ん?」


 アルエが振り向く。


「こいつの名前決めてなかったな」


 コカトリスが首を傾げた。


「確かに、いつまでもコカトリスじゃかわいそうだよね」


 アルエが頷く。


 エルザがため息をついた。


「ああ……じゃあまたギルドに登録しに行くのね」


 最近ずっと頭を抱えている。


 いや、最近というより本当に抱えているのだが。


「母さん」


 俺は言う。


「そんな難しい顔してると皺増えるよ?」


「誰のせいだと思ってるのかしらね、この子は」


 エルザは疲れた顔で言った。


 俺はコカトリスを見上げる。


 巨大な鶏の姿。


 白い羽毛。


 紅いトサカ。


 緑の蛇の尾。


 見た目は完全に巨大な鶏だ。


 鶏。


 鶏肉。


 鶏肉と言えば。


 俺は頷いた。


「ササミだな」


 沈黙。


 アルエがゆっくり顔を上げる。


「え?」


 リーリヤも首を傾げる。


「え?」


 エルザは目を閉じた。


「……ちょっと待ちなさい」


 だが俺は真顔だ。


「いい名前だろ?」


「どこが!?」


 アルエが叫ぶ。


 俺は真剣な顔で説明を始めた。


「待て。ササミは高たんぱく質だ」


「は?」


「しかも低脂質」


「いや待って」


「筋力トレーニングにおいてこれ以上に優れた食べ物は存在しないと言っても過言ではない」


「なんの話!?」


 俺は止まらない。


「まずタンパク質は筋肉の材料だ」


「うん」


「つまり筋肉を育てるにはタンパク質が必要」


「うん」


「そしてササミはタンパク質の塊」


「うん」


「つまり」


 俺はコカトリスを指差す。


「ササミは筋肉の象徴」


「意味が分からない!」


 アルエが頭を抱えた。


 俺は続ける。


「しかもだ」


「まだ続くの!?」


「脂質が少ないから減量期にも最適」


「減量期!?」


「つまりササミは万能食材なんだ」


 コカトリスが「ギャー」と鳴いた。


 俺は満足そうに頷く。


「ほら、気に入ってる」


「絶対違う」


 アルエが断言した。


 エルザはしばらく黙っていた。


 そして小さく息を吐く。


「……もういいわ」


 諦めた顔だ。


「好きにしなさい」


 こうして。


 巨大なコカトリスの名前は。


「ササミ」


 に決定したのだった。


 コカトリス――ササミは満足そうに羽を広げた。


 その姿を見ながら、エルザはまた頭を抱えた。


「……本当に、どこへ向かってるのかしらね、この子達」



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