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マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

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第15話 筋肉とコカトリス


 カーボのギルド登録は無事に終わった。


 そして。


 俺とアルエは――見習いとはいえDランクになった。


 酒場ではまだ騒ぎが収まっていなかった。


「新人がDだってよ」


「ホブゴブリン討伐だぞ」


「しかも子供だ」


「狼付きだぞ、あの灰色のやつ」


 ジョッキを傾けながらこちらをちらちら見る冒険者。


 噂話は止まらない。


 Dランクといえば、普通は何年もかけて辿り着く場所だ。


 それを子供が、しかも二人。


 目立たないはずがない。


 だが。


 その空気の中で、エルザは腕を組んだまま真顔だった。


「浮かれるのは早いわ」


「え?」


「あなたたち、装備は?」


「……拳」


「魔法」


 エルザは深くため息をついた。


「準備不足もいいところよ」


 その言葉にアルエが首をかしげる。


「でも依頼はこなせたよ?」


「今回はね」


 エルザは静かに言う。


「冒険者は長く生きてこそ価値があるの」


 少し間。


「一度村に戻るわよ」


「え?」


「装備を整える。訓練もする」


 その時。


 カウンターの向こうからゲラングが言った。


「もう帰るのか」


「一度だけよ」


 エルザは肩をすくめる。


「準備不足のまま前に進むほど愚かじゃない」


 ゲラングは酒を一口飲んだ。


「……まあいい」


 そして俺を見る。


「戻ってこいよ」


「うん」


「面白くなりそうだからな」


 その横でマエストロは完全に出来上がっていた。


「おーう坊主ー」


 ジョッキを掲げる。


「世界は広いぞー」


「父さん」


「まずは飲めー」


「朝だよ」


「関係ない!」


 周囲の冒険者が笑う。


「おいマエストロ、朝から出来上がってんな」


「人生は常に宴会だ!」


 エルザがため息をつく。


「この人は置いていくわ」


 こうして。


 俺たちは村へ戻ることになった。



 俺たちは久しぶりに洞窟へ向かった。


 俺の秘密のジム。


 入口の岩をどけ、奥へ入る。


 次の瞬間。


 ギャアアアアアアア!!


 洞窟に絶叫が響いた。


 羽が岩壁を叩き割り。


 尾が地面を抉り。


 嘴が岩に突き刺さる。


 コカトリスだ。


 完全に暴走している。


「……」


「……」


 俺とアルエは顔を見合わせた。


「あちゃー」


 俺は頭をかいた。


「完全に忘れてたね」


 アルエもうなずく。


「おなかすいて暴れてるじゃん」


 洞窟の隅を見る。


 ジム用に置いていた食料袋。


 全部なくなっている。


 しかも袋は破れ、骨まできれいに砕かれていた。


「たしかに」


 俺は床を見た。


「ジムに置いてあった食糧もきれいさっぱりなくなってるな」


 コカトリスが岩を蹴り飛ばす。


 ガン!


 岩が転がる。


 前より力が強い。


「……前に村を襲撃してきた時より」


 アルエが言う。


「ちょっと強くなってる気もする」


「だよね」


 とりあえず。


 俺たちは洞窟の外へ走った。


 森に入り、木の実、獣肉、適当な食料を集める。


 そして洞窟に戻る。


 ドサッ。


 目の前に放る。


 次の瞬間。


 コカトリスが飛びついた。


 ガツガツガツガツ。


 一心不乱に食べ始める。


 肉を飲み込み。


 骨を噛み砕き。


 木の実まで丸呑みする。


 しばらくして。


 腹が満たされたのか。


 コカトリスがゆっくり顔を上げた。


 ギラリ。


 鋭い目がこちらを向く。


 その瞬間。


 カーボが前に出た。


 ゆっくり。


 一睨み。


「グルル……」


 空気が凍る。


 コカトリスの動きが止まった。


 完全に固まる。


 さっきまで暴れていたのが嘘みたいに静かだ。


 アルエが言った。


「急に大人しくなったね」


「カーボ怖いんだろうね」


 俺は丸太を持ち上げた。


「よし」


「久しぶりにやるか」


 丸太を肩に担ぐ。


 スクワット。


 ドン。


 ドン。


 ドン。


 岩床が沈む。


 汗が落ちる。


 体が温まっていく。


 その横で。


 アルエも魔力を練り始めた。


「じゃあ私は魔法の練習」


「ファイアボール!」


 火球が飛ぶ。


 岩に着弾。


 ボン。


 以前より明らかに大きい。


 洞窟が赤く照らされる。


「おお」


「また強くなってる」


「でしょ?」


 その後ろで。


 カーボとコカトリスが向かい合っていた。


 低く唸るカーボ。


 羽を広げるコカトリス。


 次の瞬間。


 ドン!!


 激突。


 爪と牙。


 羽と尾。


 岩が砕ける。


 洞窟の奥でモンスター二匹が激しくぶつかり合う。


 俺はスクワット。


 アルエは魔法。


 カーボとコカトリスはスパーリング。


 いつものジムの光景だ。


 その時。


「マットー!」


 洞窟の入口から声がした。


 振り向く。


 そこに立っていたのは。


「姉さん!?」


 リーリヤだった。


 俺は丸太を下ろした。


「なんでここに」


 リーリヤは腕を組み。


 そして胸を張った。


「私も混ぜなさい!」


 驚く俺。


 驚くアルエ。


 そして。


 戦いを止めたカーボとコカトリス。


 二人と二匹の視線の中心で。


 リーリヤは堂々と言った。


「お土産忘れた罰よ」


「今日から私もジム参加だから!」


 こうして。


 俺たちの筋トレジムは――


 さらにカオスな場所になったのだった。



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