表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッスル・ストロンガー・ザン・マジック ~回復魔法と筋トレの相乗効果で究極の筋肉を手に入れよう~  作者: tomato.nit
第一章 少年編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/133

第14話 Dランク昇格



 ゴブリンの巣を壊滅させた帰り道。


 森を抜け、村へ続く街道を歩きながら、エルザは何度目か分からないため息をついた。


「……本当に、何なのよあなたたち」


 その横でアルエが元気よく言う。


「楽しかったね!」


「楽しかったねじゃないのよ」


 エルザは額を押さえる。


「普通はね、ゴブリンの巣を見つけた時点で一度ギルドに戻るの」


「そうなの?」


「そうよ。新人二人と狼一匹で壊滅させるものじゃない」


 俺は首をかしげた。


「でも倒せたよ?」


「倒せたことが問題なのよ!」


 横でカーボが尻尾を振る。


「ワン」


「あなたは嬉しそうね……」


 エルザは深く息を吐いた。


「まあいいわ。とにかく報告よ」


 ギルドの扉を押し開ける。


 昼前の酒場は朝よりもさらに騒がしかった。鎧のぶつかる音、笑い声、ジョッキのぶつかる音が混ざり、冒険者たちが思い思いに騒いでいる。


 その中に入ると、何人かがこちらを見る。


 理由は分かりやすい。


 カーボだ。


 巨大な狼が酒場に入ってくれば、嫌でも目立つ。


「おい、あの狼……」


「山狼か?」


「いや、なんかでかくね?」


 ざわざわと小さな声が広がる。


 その視線を気にする様子もなく、俺はカウンターに向かった。


 そこにいたのはゲラングだ。


「戻ったか」


 ゲラングはちらりとこちらを見た。


「……早かったな」


「終わった」


「そうか」


 俺は袋を置く。


 ドサッ。


 中から出したのはゴブリンの耳。


 そして――


 ホブゴブリンの耳。


 カウンターの上に並べた瞬間。


 周囲の空気が止まった。


「……おい」


 誰かが呟く。


 ゲラングは腕を組んだまま、しばらく耳を見ていた。


 そしてゆっくり言う。


「……巣か?」


「ええ」


 エルザが答える。


「十匹以上。ホブが一匹」


 沈黙。


 ゲラングは頭を掻いた。


「なるほどな」


 そして振り向く。


 次の瞬間。


 酒場中に響く声で怒鳴った。


「おい!!」


 ギルド中の視線が集まる。


「この中にホブゴブリンを討伐できるパーティはいるか!」


 冒険者たちが顔を見合わせる。


 やがて何人かが手を上げた。


「ランク言っていけ」


 この世界の冒険者ランクは単純だ。


 Fは見習い。登録したばかりの新人。薬草採取や雑用が主な仕事。


 Eになると、ようやくゴブリン退治のような“まともな依頼”を任される。


 Dからは一人前扱いだ。ギルドでも信頼され、村の警備や魔物討伐の主力になる。


 Cはベテラン。大型モンスター討伐が視野に入る。


 Bはギルドの主戦力。国の強さはBランク以上の人数で測られるとも言われている。


 そしてA。ドラゴンや災害級モンスターと戦う、超人の領域。


 つまり――ホブゴブリンを安定して倒せるのは、普通はD以上のパーティだ。


「D」


「D」


「D」


「B」


「A」


 ざわざわとした空気。


 その中で、ひょいと手が上がる。


 マエストロだ。


「元B」


 ゲラングが即座に言う。


「お前には聞いてねぇ」


「ひどくない?」


 マエストロは笑っている。


 ゲラングはカウンターに肘をつき、俺を見る。


 アルエを見る。


 カーボを見る。


「……FとEは無理だな」


 酒場の空気が変わる。


 少し間。


「Dだ」


 一瞬、静まり返った。


 そして――


 ざわっ。


「D!?」


「新人だろ!?」


「嘘だろ!?」


 アルエが固まっている。


「え」


 そして小さく言った。


「え、私も?」


 ゲラングは肩をすくめる。


「巻き添えだ」


「えええ!?」


 エルザは深く息を吐いた。


「……やっぱりそうなるのね」


 ゲラングは言う。


「だが」


 カウンターを軽く叩く。


「新人は新人だ」


「Dランク見習いだ」


 俺は少し考えた。


「つまり?」


「仕事はD相当」


「扱いは新人」


「なるほど」


 横でアルエがまだ混乱している。


「え、え、私D?」


「まだ見習いだけどね」


「でもD?」


 カーボが嬉しそうに鳴く。


「ワン」


 その声に、周囲の冒険者たちが改めてカーボを見る。


「……あの狼」


「普通じゃないぞ」


「さっきホブって言ってたよな」


 ひそひそ声が広がる。


 ゲラングが酒を一口飲む。


「しかしな」


 そう言って俺を見る。


「お前、何してんだ普段」


「トレーニング」


「どんな」


「スパーリング」


「誰と」


 俺はカーボを見る。


 カーボは尻尾を振った。


 酒場が一瞬静かになる。


 ゲラングは額を押さえた。


「……狼と?」


「うん」


「回復魔法使いながら」


 沈黙。


 その後。


 酒場の奥で誰かが言った。


「……異端児だな」


 小さな笑いが起きる。


 別の声。


「確かに」


「普通じゃねぇ」


「でも強い」


 マエストロが笑う。


「異端児?違うな」


 ジョッキを掲げる。


「新しいタイプの冒険者だ」


 ゲラングが鼻を鳴らす。


「……まあいい」


 俺を見る。


「覚えとけ」


「この世界はな」


 少し間。


「異端が歴史を作る」


 アルエが小声で聞く。


「マット」


「なに」


「私たち」


「有名になっちゃう?」


 俺は少し考えた。


 そして言った。


「もっと強くなれば」


 カーボが元気よく鳴いた。


「ワン!」


 その声に、酒場の空気がまた少しざわめいた。


 こうして。


 俺たちは――


 Dランク見習いになったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ